趣味で集めた雑貨などは、気に入っているからこそ、捨てるのが難しいですよね。「何年も持っていた不要なものを捨てたら、自由になれました」と話すのは、50歳から本格的にミニマムな暮らしをスタートさせたという、カナダ在住のミニマリストでブロガーの筆子さん。そんな筆子さんに、捨ててよかったものを3つ教えてもらいました。
捨ててよかったもの【とにかく古いもの編】
持たない暮らしを始めてから、ずいぶんたくさんのものを手放しました。今回は、捨ててよかったものから、とくに長々と持っていたものについてお話しします。
私は、子どもの頃から、同じものをいくつも集める傾向があり、雑貨を大量に持っていました。
●1:もったいなくて使えなかったシール
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いちばん最初に集めたと記憶しているのは、商事会社に勤めていた父親からもらうことが多かったシールです。父親の得意先の文房具店のおじさんからもよくいただきました。学年誌やまんが雑誌の付録についてくるシールも、ことごとく集めていました。大きくなってからは、自分でかわいいステッカーやシールを買うこともありました。
私は入手したシールを絶対使いませんでした。その理由は、「使うなんてもったいないから」。集めたシールを眺めることもしません。シールを入手したら、とりあえずシール入れにしていたビニールケースに入れるだけ。そうやって、大人になるまで、集めていたシールを持っていたのです。
36才の終わりに、カナダに来るとき、シールは自室に置いてきましたが、後日、母に袋ごとこちらに送ってもらいました。幼い娘に使わせようと思ったのです。当時娘は3才前後。シールを手渡したら、お絵かきノートや、そのへんの紙や壁に、うれしそうにペタペタと貼っていました。
娘がワンシート消費するのに使った時間は30秒~1分ほど。こうして、私が、長年使えなかったシールは、娘の手によって、数週間で消費されました。
シールがなくなって、ほっとしました。知らないうちに、いつまでも使えないシールを持っていることが、重荷になっていたのです。なんのために、私はこんなに長い年月、シールを溜め込んでいたのでしょうか? 入手したときに、手紙でもノートでも、好きなものに好きなように貼って眺めて楽しめばよかったのに。
この体験から、食べ物のように腐ることのない雑貨でも、使用するタイミングがあるとよく分かりました。
●2:集めすぎたカセットテープ
中学にあがる頃、父にカセットテープデッキを買ってもらい、当時一般的になりつつあった、FM放送をよく聞いていました。
私は音楽が好きなので、ラジオを聞くだけでは飽きたらず、カセットテープに好きな曲や番組を録音していました。この行動を、「エアチェック」と呼びますが、日本全国で、音質のよいFM放送で流れる音楽をエアチェックすることが流行っていました。
中学生の頃から始めたエアチェックを私は10年ぐらい続けて、少なくとも800本はカセットテープを持っていました。もっとたくさんあったかもしれません。あとで聞くためにエアチェックしていたはずなのに、録音しすぎて、テープを聞くのが追いつかなくなりました。子どもや学生は大人より暇なはずですが、学校へ行ったり、宿題をしたりとそれなりに忙しいし、音楽番組は毎日やっているので、耳が空いているときは、そうした番組を聞いていました。
「いつか、暇になったら聞こう」。そう思って、私は大量のカセットテープをずっと持っていましたが、なかなか、その「いつか」が来ず、そのうち音楽は、デジタルデータとして、いつでもどこでも再生できるようになりました。
あとになって、ほとんど聞き返さなかった、しかもご丁寧にひとつひとつラベルをつくっていたカセットテープをまとめて捨てました。
「いったい、私はなにをやっていたんだろう。エアチェックとカセットテープの管理に費やしていた時間を、ほかのことに使っていたら、絶対、人生は変わっていたのに」と思いながら。