ふだんの食卓には、ごはんと具だくさんのみそ汁、漬物の「一汁一菜」があれば十分。料理研究家・土井善晴さんによる提案は、日々の献立づくりに悩む女性たちを、「おかずは何品もつくらなきゃ」「家族の喜ぶメニューを考えなきゃ」というプレッシャーから解放してくれました。
土井善晴さんの「一汁一菜でよい」に至るまで
すべての画像を見る(全7枚)5月に発売された新書『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮社刊)は、土井さんがそうしたスタイルに行き着くまでの道のりを記した一冊です。そこで今回は、あらためて「一汁一菜」に込めた思いを話していただきました。
●毎日食べるもののことで苦しむ必要はない
「今の人は『料理をすることが負担』と言うけど、イヤだと思うことはなにひとつする必要はないんです。するのは楽しいことだけでいい。お米を炊いて、みそ汁をつくって、それだけでノルマは達成。いろんなものをつくらなきゃ、という思い込みをなくすのが『一汁一菜』なんです」
そもそも「家庭料理にまで、レストラン級のおいしさを求める必要はないんですよ」と土井さん。
「バブル以降、安くて便利な加工食品や中食、外食が出回るようになって、プロの味をお母さんの料理にまで要求するようになってしまった。でも、和食というのはもともと素材の味を生かした料理。凝ったことをしなくても、ゆでただけ、焼いただけでおいしく食べられるんです。味が薄ければ、それぞれがしょうゆや塩をかけて好きなように食べればいい」
●放っておくことで気づいてもらえることも
今のお母さんは優しすぎるように感じる、と土井さん。
「料理を出しても家族が食べなかったら、ほっといたらよろしいんです。それに、あえてなにも言わず、放っておくことで気づいてもらえることもありますから。味つけにまで責任をもつと、料理をするのはますます大変になってしまう。いわゆる手抜き料理や総菜に頼る人も、『本当はちゃんとせなあかん』と、どこかで思っているから、後ろめたい。でも、毎日食べるもののことで苦しむ必要はないんですよ」