仕事、家事、育児など、毎日たくさんのタスクに追われて、心も体も疲弊しているという女性は少なくないのではないでしょうか。

「女の人って、目の前のことをなんでも一生懸命にやってしまう人が多い。でも、家事、育児、仕事…とすべてにがんばっていては、身がもちません」
そう話すのは、メイクアップアーティストの先駆けとして、多くの女性たちをきれいにしてきた小林照子さん。83歳の今もなお、美容業界の第一線で活躍しています。

そんな小林さんが、毎日を朗らかに過ごすために大切にしているのは、自分にとっての優先順位を明確にすること。
がんばりすぎてあわただしい毎日を過ごす女性に、小林さんの言葉の数々をお届けします。

人生の先輩に聞く!小林照子さんのこれはしない、あれはする

眼鏡の女性(小林さん)
若々しくて凛とした美しさが魅力の小林さん。
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どれもこれも完璧にこなそうとすると、気持ちも体もパツパツに…。だからこそ、「『する』『しない』を取捨選択することが重要。お金も、使うべきところをしっかり見きわめます」と小林さん。

「心がすり減るようなことは、明日から『しない』。楽しく生きるためにプラスになることは『する』。そう決めれば、ラクになりますよ」

●家事は手を抜くくらいでよしとする

「なんでも完璧にできる人はいません。だから家事も、手を抜くくらいでちょうどいい」
洗濯物がたまったり、部屋が散らかっていても大丈夫。

「私は29歳で出産したのですが、子育てをしながら働いていたときは、家事はあと回しでした。それよりも、自分をきちんといたわり、子どもと向き合うことに、時間を割くことが大切です」

●「できていない」に縛られるのをやめる

子育て中のお母さんと話すと「やるべきことがたくさんあるのに、自分はできていない」と悩んでいる人が多い、と小林さん。

「でも、子どもから今日あった出来事をちゃんと聞いて、一緒に泣いたり怒ったりして、抱き締めてあげられれば、それで十分。『できていない』という罪悪感に縛られるのをやめると、ラクになります」

●スケジュール帳は手書きでびっしり埋める

手帳には予定だけでなく、夢や目標、その日の反省まで細かく書き込んでいる小林さん。
「『書くことがないから、手帳はもたない』という人もいるかもしれませんが、用事は自分でつくるもの。季節の花を見に行く、おいしいものを食べに行く…など、楽しいことを計画するのもいいですよ。新たな発見や刺激を得られます」

手書き手帳

今使っているのは「ほぼ日手帳」。マンスリーの欄だけでなく、デイリーの欄も、ぎっしり予定を書き込みます。

「寝る前には、その日の出来事や反省も記入しています」

●自分の顔の好きなところを探す

かつて、メイクは「欠点をカバーするもの」という考えが主流でした。でも今は、欠点よりも長所に目を向け、伸ばしていく時代。

「自分の顔の好きなところを探す習慣をつけましょう。『好きなところがない』と思うときは、いやなところを探して。残ったところが、自分なりに『合格』を出しているところ。そこに目を向けて自信をつければ、他人の長所を探すのも上手になりますよ」

●クセで化粧するのをやめる

年齢とともに、肌質は変わるもの。若い頃に覚えたメイクも、そうした変化に合わせて見直すことが大切です。

「ありがちな例が、メイクの仕上げにたっぷりお粉をつける…というもの。若い肌にはちょうどよくても、今は乾燥の原因になっている可能性も。昔のクセにとらわれず、今の自分に合ったメイクを見つけましょう」

●貯金は使い道を決めてから始める

「貯金は使う喜びとセットになってこそ、意味があります」
「家族で旅行したい」「子育てが一段落したら学校へ通いたい」など、具体的な使い道を決めることで、節約のモチベーションも生まれるはず。

「私の今の目標は、「次世代を育てること」。若い人たちを応援するための奨学金制度や教育に、お金を使いたいです」

●つくり手を応援したいか否かをものを買う基準にする

小林さんがものを買う基準は、「つくり手を応援したいかどうか」。

「ブランドものだから、高級だから…という観点では選びません。愛用しているお財布やストールも、若手クリエイターのもの。3年前から株を始めたのですが、女性を起用している、世のためになる商品をつくっているなど、応援できる会社の株だけ買っています」

道中財布

京都の作家さんがつくった道中財布は、薄くてしなやかな使い心地がお気に入り。組紐や竹細工など、日本の伝統工芸の技術があちこちに使われています。

●お金はひとり占めしない

「お金がほしい、と思うのはけっして悪いことではありません。でも、常に自分のためだけに使ったり、不必要に貯め込んだりするのは、人としてみっともないこと」と小林さん。

利益を得たら、「お金は天下の回り物」と考え、周りの人を喜ばせたり、人を育てるために気持ちよく手放すと、自分も幸せな気分で満たされるものです。

●ママでも奥さんでもなくフルネームで生きる

小林さんは人に会うとき、必ずフルネームを名乗るそう。それは「○○ちゃんのママ」「○○さんの奥さん」ではなく、自分の人生を生きるということ。

「なにがあっても『自分は自分』とぶれずに立っていれば、子どもが巣立ったり、夫との仲が冷めてしまっても大丈夫。『あんなにしてあげたのに』と思わずにすむと思うんです」

●人と比べない

ときに苦しいことが起きるのが人生。
「私も子どもの頃は暮らしが貧しく、他人をうらやましく思ったこともありました。でも、人と比べてなんて不幸なんだろう…という考えは、負のスパイラルを生みます。つらい時間は「学びの時間」。ねたみの気持ちが湧いたら、身の回りの小さな幸せに目を向けてみましょう」

思わず肩の力がふっと抜けていくような、小林さんの暮らしのセオリーは、どれもこれも深くて心にしみ入ります。
暮らしにも心にもゆとりを持つことが、いつまでも輝き続ける女性でいられる、なによりの秘訣なんですね。