ドラマ『アンナチュラル』での中堂役が話題を呼び、あらためて注目されている俳優・井浦新さん。
10月13日公開の映画『止められるか、俺たちを』では、2012年に亡くなった映画監督・若松孝二監督を演じています。撮影中のお話から休日の過ごし方まで、お話を伺ってきました。

井浦新さん
井浦新さんに、撮影中のお話から休日の過ごし方までインタビュー!

好きなことをやり続けている限りは“一生青春”。キラキラ輝いた時間を過ごせると思うんです

60年代末の東京で、映画づくりに熱狂する若者たちを描いた青春映画『止められるか、俺たちを』。『キャタピラー』など、多くの名作映画を手がけ、2012年に亡くなった若松孝二監督のプロダクションを舞台にしています。

井浦新さんが演じるのは、まさに若松監督その人。何度も若松作品に出演し、大きな影響を受けたという井浦さんだけに、〝恩師〞を演じることに葛藤もあったと話します。

●ある意味で、みんなが共犯の映画

「自分に演じられるのか、恩師への裏切りなんじゃないのか…。いろんな不安がありました。でも作品に携わるスタッフは、みんな若松監督と一緒に映画づくりをしてきた人たち。ある意味、みんなが共犯なんだな、と開き直ることにしたんです」

井浦さんが演じた若松監督は、厳しいなかにも映画への深い愛情が感じられる、どこかチャーミングな人物。それは、井浦さんが見てきた監督そのものです。
「撮影当日まで、どんな声や表情で演じればいいのか、まったく考えられなくて。でも監督が旅立ってから、自分のなかにはずっと監督がいたんです。いざ撮影が始まったら、その監督像があふれてきて、芝居として表現できた。撮影中はずっと幸せな気持ちで過ごせました」

●若くなくても、夢中になれる時間は「青春」

なにかを目指しながらも、まだ何者にもなれない若者たち。悩んでもがく登場人物と、自身の青春を重ねる人も多そうです。
「でも〝青春時代〞って、若い頃だけじゃないんですよね。いくつになっても、好きなことをやり続けている限りは一生青春。それは若松監督が、身をもって教えてくれたことです。僕もいまだに、仲間たちと夢中で作品づくりをしているときは、『青春してるなあ』って感じます」

「ESSE読者の人も同じじゃないかな」と井浦さんは続けます。
「少しでも興味がもてることを見つけたら、とことんやってみる。そうすれば、年齢に関係なくキラキラ輝いた時間を過ごせると思います」

●休日は親子でアートに触れています

井浦さん自身も、アートや歴史など幅広い分野に興味をもち、休日はよく親子で美術館や博物館巡りをしているそう。

「子どもの頃から本物に触れることで、見る目を養ってほしくて。でもじつは、子どもから教えられることも多いんです。子どものまなざしって本当に素直だから、『こんな見方もあるんだな』と気づかされます。帰ってきたら、なにが気になったか、どんなところがおもしろかったか、見たものについて話し合う。そういう時間が日々の楽しみであり、力にもなります」

●『止められるか、俺たちを』

1969年、吉積めぐみ(門脇麦)は映画監督・若松孝二(井浦新)を中心に、新進気鋭の若者が集まる「若松プロダクション」の扉を叩く。監督に怒鳴られながら助監督として働くうち、映画に魅了されていくめぐみだが、「なにを表現したいのか」を見つけられず、不安と焦りに駆られる(10月13日より順次公開)

【井浦新さん】

1974年、東京都生まれ。モデルとして活躍し、是枝裕和監督の映画『ワンダフルライフ』(’99年公開)で俳優デビュー。以降、映画、ドラマ、ナレーションと幅広く活動している。今年、ドラマ『アンナチュラル』での中堂役が話題を呼び、その魅力が再認識された