ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている
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ESSE ONLINEでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第2回は、犬とすごす夏について。
ずっと苦手だった夏。犬が来てから変わっていく自分がいます
夏を好きになるきっかけは二度訪れた。
一度目は写真を始めたこと、二度目は犬と夏をすごすようになったこと。
犬の川デビューは1歳4か月のころだった。
2015年8月の終わりに川辺で朝の散歩をしていると、犬がどんどん川の方へ近づいていくので、「そういえばこの子は泳げるのかな」とふと思ってリードを伸ばしたら、ちゅうちょなく川の中へ進んでいった。
シャンプーが苦手だから水も嫌いだと思っていたので心配しながら見守っていると、犬はすうーーーーっと泳ぎ始めた。
小さな衝撃だった。初めて川の中に入ったのに、だれかに泳ぎ方を教わることもなく、元から知っていたと言わんばかりに、軽やかに泳いでみせた。
後日あらためて、母の運転で地元よりも山が深い場所の川へとクルマを走らせた。初めての場所でも怖がるそぶりを見せない犬の態度は変わらず、また普通に川に入っていった。この普通さに驚いた。
母はリードをしっかり握りながら、一緒に川に入って笑っていた。水の流れに逆らってみたりのってみたりしながら犬は遊泳する。
そして先日、3年ぶりにその川に今回は妹も一緒に行った。
人間同様、犬にもそれぞれの性格や気質があるが、わが家の愛犬にはすべてを楽しめるという天性の気質があるように見える。
楽しむのがうまいということではなく、生まれもった性格ですべてを楽しんでいる、という気がする。
私は夏が苦手だった。
元から肌が弱く、とくに夏はひどくなり、半袖も嫌いだった。
旅行や夏祭り、楽しい行事だって山ほどあったのに、憂うつな記憶や、他者からたいしたことないと言われようが長年抱えたコンプレックスは、楽しかった記憶を鈍くさせ覆い隠してしまうほどに強いもの。高校までの18年間は夏と上手につき合えたことがなかった。
けれど、犬がやってきてから、全力で夏を楽しむ様子をいちばん近くで見ていると、心から楽しくなってくる。使い古された言い方だが、犬の笑顔を見ていると私まで笑顔になる、これは本当です。
私自身が年を重ねるにつれてコンプレックスの考え方がラクな方向へ変わってきたのもあるが、犬の態度は「楽しむことは怖くないよ、楽しんでみたら?」と、私に夏のおもしろがり方をこえて、生きやすさを教えてくれた。
去年の夏は、私たちきょうだいが子どもの頃に使っていたプールで遊んでいた。だが犬がかんで穴があいてしまい、三段にふくらむデザインだったのが一段しか空気が入らなくなった。
今年はホームセンターで犬のプールを購入した。いよいよ夏を楽しもうとしている自分に笑う。
犬の体は繊細で、考えたくもないですが人間次第で命を落とすことだってあります。
犬がお留守番をするときもクーラーを使ったりして部屋を適温に保っています。また、夏場の日中のアスファルトは熱すぎて、人間と違って犬は裸足なので火傷してしまいます。
アスファルトに自分の手のひらをじっと当てて「熱い」と感じたら、まだ散歩に行くのはよした方がいいそうで、うちも夏は散歩の時間を変えています。
まず犬の体調を考えて、平成最後の夏をいつもどおりゆるやかに楽しくすごしています。
【写真・文/北田瑞絵】 1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント@inubotを運営