52歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した6歳の長男・うーちゃん、里子の3歳の長女・ぽんこちゃんという家族5人で暮らしています。
今回は、家族で海水浴をしたときのお話です。
海水浴を楽しむぽんこちゃんと、怖がるうーちゃん。夏休みの始まりです
夏休みの少し前、小1の養子のうーちゃんと、3歳の里子のぽん子ちゃんを誘って海に行くことにしました。
「ぼく行かない」
うーちゃんには断られてしまいました。せっかく暑くなったのだから海で水遊びをすると涼しくて気持ちがいいよと説得しても頑として行くと言いません。
無理強いしても仕方がないし、そもそも楽しい気持ちになるための提案です。おばあちゃんとぽん子ちゃんと3人で行くことにしました。
おばあちゃんは海に入らず波打ち際に座り、僕は海に腰まで入って手を砂について歩いたりしていると、ぽん子ちゃんは僕のところに歩いて来て、僕のお腹に乗っかります。
ちょっと進むとすぐに離れて、おばあちゃんのところに走って戻ります。それを何度も何度も繰り返し、自分でも手で歩いたりしていました。
1時間くらい遊んですぐに帰ることにしました。熱中症も怖いので、海で水遊びと言ってもほんのちょっとしたものです。
そろそろ帰ろうと言うと、「かえらない」とぽん子ちゃんが言います。公園でもアピタ(スーパー)でも、ぽん子ちゃんはその場所が気に入るといつまでも帰りたがりません。
「ジュース買いに行こう」
「ジュース? うんいく」
このように誤魔化してようやく海から離れることができました。
帰宅して、こんなふうにして遊んだよとうーちゃんにスマホの動画を見せると食いつくように見ています。どうやら気にしていたようでした。
●海藻を怖がるうーちゃん。海が嫌いになってしまったのでしょうか?
夏休みが始まりました。夏は長いようで、海で水遊びができるのは8月の前半まで。お盆を過ぎるとクラゲが出てしまうのです。今年は何回海で遊べるのか、ぽん子ちゃんは平日は保育園で、日曜日だけなのでほんの数回です。
さっそく日曜日にうーちゃんとぽん子ちゃんをまた海に誘いました。ところがやっぱりうーちゃんは行かないと言います。去年は楽しそうに遊んでいたのに一体なぜ嫌がるようになったのでしょうか。
先日小学校でプール授業があって「どうだった?」と聞いてもなにも教えてくれません。しつこく何度も聞くとようやく「水が冷たかった」とだけ教えてくれました。なにか嫌なことでもあって、そのせいで水泳や大量の水が怖くなっているのかもしれません。
この日はママがうーちゃんを説得して、途中何度も「行く」「やっぱり行かない」を繰り返し、ようやく連れ出すことに成功しました。僕ならとっくに諦めていたところです。
海に到着したうーちゃんは波打ち際で足が止まって水に入りません。
「ゴミがいっぱい浮いてる。怖い」
たしかに赤い海藻が漂っています。しかしぽん子ちゃんは平気でザブザブ腰まで水につかっています。この日も穏やかな波で、太陽は光り輝き抜群の海水浴日和です。ぽん子ちゃんは赤い海藻を手でつかんで投げました。
「こっちにおいで。大丈夫だよ」
水際まで歩いて足首まで水に入ると、やっぱり怖いと言って戻って、波打ち際から遥か遠くの砂の上まで逃げてしまいます。
そんな様子を見ていたぽん子ちゃんまでが、怖いと言い出し水から出て、うーちゃんがいる遠くの砂まで逃げるようになりました。
しかし、怖いと言いながら顔は全然怖がっておらず、怖いと言って自ら逃げる遊びだとでも思っているようでした。
水に寄って来たうーちゃんに、「ほーら」と言って水しぶきを掛けるとちょっと怒って、砂を僕の方に蹴りました。
しかし全然届かなくて、更に力いっぱい砂を蹴りあげると黙って下を向いてしまいました。どうやら蹴った砂が自分の顔に掛かったようです…。
●大好きなすき家でも悲劇が。今日のうーちゃんは厄日です
うーちゃんにとって海はまだ、楽しくない場所のようです。なにが怖いのか分かりませんが、楽しくなさそうなことだけは分かりました。楽しんでほしくて誘っているので、つらい思いをさせたいわけではありません。
この日は陽射しが弱まる夕方に出かけたので、帰り道、うーちゃんが大好きなすき家に寄って牛丼を食べました。うーちゃんは紅しょうがをたっぷりのせて食べるのが大好きです。うーちゃんが紅しょうがの器を持ち上げたら、中の汁を、レンゲやお箸のコーナーに大量にこぼしてしまいました。この日は厄日だったのかもしれません。
ぽんこちゃんは「ねて、ほいくえんいったら、うみにいこうね」と毎日言ってくれます。明日海に行こうとか明後日行こう、という言葉をまだ知らないので、このような表現をします。
うーちゃんが自分から海に行きたいと言い出すまではぽん子ちゃんと行こうと思います。ただ、誘わないとそれはそれで怒るかもしれないので、一応誘ってみて、しつこくは誘わないことにします。
【古泉智浩さん】
漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『
うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門』、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『
うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(
@koizumi69)をチェック!