52歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した6歳の長男・うーちゃん、里子の3歳の長女・ぽんこちゃんという家族5人で暮らしています。
今回は、小学1年生になったうーちゃんの集団登校についてです。

小学生になったうーちゃん。重いランドセルを背負って集団登校します

6歳の養子の男の子、うーちゃんは小学1年生になりました。この4月から集団登校をしています。地域の小学生が7時35分に集合場所に集まって、全員そろうと小学校に向かって歩き出します。

初日は、担当の6年生がうちに迎えに来てくれることになっていました。しかし、わが家は元々お菓子屋を営んでいたため商店街に面した表はシャッターが下りていて、横の通用口から出入りするので、非常に入り口がわかりにくいのです。

通学路
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裏は元々工場で、先日古い工場の解体工事をして、更地が広がっています。更地の奥に新しい工場の入り口があるけど、それがわが家の裏口であることは表札も目印もなくわかりません。

裏口の方が通学路に近いので、そっちでうーちゃんと待機することにしました。7時20分です。別ルートから担当の6年生が迎えに来るといけないので、表にはママが待機して、お互いにスマホで連絡を取り合うことにしました。

裏通りは月に6回、市が立ち、農家の皆さんが作物を売りに来ます。よくないことに、初日がたまたま市の日に当たってしまったため、通りの見通しが非常に悪い。昔はとても賑わっていたけど、今は閑散としています。とはいえ、通りのずっと向こうを見渡すことはできません。

あれかな

7時30分になったころ、市の人たちの陰にチラチラと黄色い帽子が見えました。新一年生は1年間黄色い帽子で登下校をする決まりです。

「あの子たちかな?」

次第に近づいてきて、うーちゃんの担当の6年生の女の子が、うーちゃんの名前を言いました。

「そうです、よろしくお願いします」

全員で8人でした。うーちゃんはとくに「おはようございます」もなにも言わず無言でついて行きました。挨拶はしっかりしてほしいです。たとえ挨拶を返してもらえなくてもするべきです。

幸い、天気もよくて寒くもなく、重いランドセルをしっかり背負う後ろ姿が小さくなって行きました。

うーちゃんが立ち去ってから、ママにスマホで連絡しました。すっかり忘れていて、ママに見送りさせてあげることができませんでした。家に戻ると、3歳の里子のぽんこちゃんがほったらかしにされて「だれもいない」と言って怒っていました。おばあちゃんも僕と一緒にうーちゃんの見送りをして、そのまま近所の人と立ち話していました。

ぞろぞろ

登校初日は11時に学校が終わって集団下校します。12時くらいに帰ってきました。

●遅れても急がないうーちゃん。古泉さんが一緒にいたせいかな?

翌日は7時25分に家を出て、僕がうーちゃんを集合場所に連れて行こうとすると、なにやらグズグズゆっくりゆっくり歩いて、途中にある児童公園の中に入ろうとします。もうすぐそこにみんなが立って待っているのが見えるのに急ごうとせず、逆にもたもたします。

「どうしたの、ほらみんな待ってるでしょ! おはよう、みんなごめんね、待った?」

うーちゃんが一番最後でみんなを待たせているのに「ごめんなさい」の一言もなく挨拶もしません。困ったものです。

しかし、玄関を出る前に、うーちゃんは僕について来ないでほしいと言っていたので、もしかしたら一緒について行ったことが嫌でそのような反抗的行動をとっていたのかなと思いました。なんだよそれ、と思うのですが、うーちゃんにはそういう面があります。

7時25分に出たのに、一番最後になってみんなを待たせるなどよくないことです。

●うーちゃんの登校を陰から見守る古泉さん。一番乗りは恥ずかしいのかな?

3日目、うーちゃんに言いました。
「じゃあパパは今日はついて行かないよ。一人で行きな」
うーちゃんは声を出さずに頷きました。

7時25分に家を出たのを見届けると、別ルートで集合場所の近くに行き、角からうーちゃんの様子を伺うことにしました。すると、先に出たはずなのにうーちゃんがいません。変な道から遠回りしているのでしょうか。

こそこそ

うーちゃんに見つかるわけには行かないので、来た道を戻って、別のルートを見て回りました。しかし、どこにもいません。集合場所に行かなければみんなを大幅に待たせることになります。どこで一体なにをしているんだ、うーちゃんは。

別ルートから再び集合場所が見えるところに出ると、うーちゃんが集団登校のみんなに混ざって立っていました。最後の子どもが合流して、歩き始めて見えなくなって家に戻りました。

おばあちゃんもうーちゃんの登校を見ていたそうで、話を聞くと、集合場所に向かおうとするとまだだれもいなかったので、集合場所の手前で人が来るのを待っていたそうでした。最初に行くのが恥ずかしいのでしょうか。挨拶はしたのかな。僕がついて行かなかったせいか、もたもたしなかったそうです。

●今まで持ったことのないような重い荷物を持って歩くうーちゃん。がんばれ!

うーちゃんは緑が好きなので、ランドセルはパッと見は黒に見える深い緑色です。ただ、蛍光イエローのカバーがかかっているので本体の色は横しか見えません。

ランドセル自体が1kgもあって、教科書や連絡帳、給食が始まるまでは学童保育でのお弁当と水筒も入っています。徒歩だし、雨が降ったりすれば傘だし、ランドセルには雨合羽もずっと入っています。学童保育用の文字の書き取りノートや本もあります。うーちゃんがかつて持ったことがないほどの荷物です。

宿題は毎日あり、なにより勉強なんて面倒くさいに決まっています。ずっと黒板に向かって椅子にじっと座って先生の言うことを聞くなんて、みんなやってることとは言えしんどいだろうなあ、がんばれ~。


【古泉智浩さん】

漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『

うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門

』、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『

うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました

』など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(

@koizumi69

)をチェック!