9月11日公開の映画『ミッドウェイ』で、ハリウッドの大作に出演する豊川悦司さん。作品に込めた思いを伺いました。
豊川悦司さんインタビュー「僕のキャリアのなかで、いちばんスケールの大きな作品です」
すべての画像を見る(全1枚)「これほどスケールの大きい作品で仕事ができたことが誇らしいです」
豊川悦司さんが感慨深そうに語ってくれたのは、もうじき公開されるハリウッド映画『ミッドウェイ』の出演について。太平洋戦争のターニングポイントとなったミッドウェイ海戦を日米双方の視点から描いた作品で、豊川さんは日本海軍の総指揮を執った山本五十六を演じます。
●出演の決め手は監督からの熱意のこもった手紙でした
これまでも多くの名優が演じてきた、歴史上の重要人物ですが、最初にオファーがあった段階では出演を迷っていたそう。心を動かしたのは、『インディペンデンス・デイ』などの大作で知られるローランド・エメリッヒ監督からの手紙でした。
「山本五十六という人は、自分とは距離のあるキャラクターだという気がして。どうしようかと思っていたとき、すごく熱意のあるお手紙をいただいたんです。自分が求めているキャラクターには君がふさわしい…といったことが書いてあったのかな。
それを読んで、僕から自撮りのメッセージ動画を送ったら、監督からもビデオレターが返って来て。そんなことは初めての経験だったし、すごく光栄ですよね」
実在の人物を演じるにあたって意識したのは、「単なる“まね”にならないこと」。
「有名な偉人を演じるとなると、つい事前にリサーチして、話し方や振る舞い方を再現しようとするけど、どんなに偉い人だってひとりの人間で、ごはんを食べれば眠りもするし、好きな人も嫌いな人もいたわけだから。そういう人間味が感じられるようなキャラクターづくりをすることが大事だと思っています。
山本五十六はかなり偉い立場にいて、悩みをだれにも打ち明けられず、自分だけで抱えていたと思うんですね。そういう人がひとりのときにはどういう顔をするのか…。そんなことを考えながら演じていました」
●この映画をきっかけに戦争について知ってほしい
ハリウッド作品ということで、撮影も海外ロケに。日本とは異なる現場の雰囲気をどのように受け止めたのでしょうか。
「文化の違いもあるかもしれないけれど、国を挙げて映画づくりに協力している空気が感じられて。ロケ先でも、住んでいる人たちが協力的で、撮影で通行が止められてもいやな顔ひとつしない。こっちの俳優やスタッフさんはいい環境で仕事ができるんだなぁと正直うらやましかったですね。
監督も本当に映画づくりを楽しんでいて。撮った映像を見て子どもみたいにはしゃぐんだけど、トラブルがあったときはスタッフやキャストにユーモアがある言葉を投げかけて、雰囲気を和らげてくれるんです」
英語による海外のスタッフやキャストとのコミュニケーションも、「言葉の壁はほとんど感じなかった」という豊川さん。
「それは俳優が、言葉に頼らずに自分の気持ちを伝えることにたけた人たちだからかもしれないですね。それに言葉の問題じゃなく、聞こうとする姿勢と伝えようとする姿勢があれば、気持ちは通じる。英語圏に限らず、また違う国の映画づくりに参加してみたいです」
今回の作品のような“戦争映画”の意義について尋ねてみると、難しいことだけど…と言葉を選びながら、こう答えてくれました。
「時代とともに、戦争という事実は遠い過去に追いやられていしまうけど、自分たちのおじいちゃん、ひいおじいちゃんが体験したことを風化させるにはまだ早いんじゃないかな。同じことを起こさないためにも、機会があるなら語って聞かせた方がいい。今回の映画もそのツールになればいいなと思います。
まだ休校している学校もあるようだし、社会科の授業の代わりに、映画を観て語り合ったり、レポートを書いたりするのもいいんじゃないかな」
【豊川悦司さん】
大阪府出身。1990年、北野武監督の『3‐4x10月』で注目を集める。以降、映画『Love Letter』『今度は愛妻家』『必死剣 鳥刺し』、ドラマ『愛していると言ってくれ』『青い鳥』などのヒット作に出演。映画『ミッドウェイ』が9月11日より公開