演じるというより、「ただ毎日、家族に会いに行っていた感覚です」と、6月8日公開の映画『万引き家族』の撮影を振り返る安藤サクラさん。
万引きなどの軽犯罪を重ねながら暮らす一家を描いた今作は、カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルムドールを受賞しました。

安藤さんの役どころは、リリー・フランキーさん演じる治の妻、信代。治がある日、凍えている女の子を連れ帰ったことから、物語は展開していきます。
監督は、『海街diary』などを手がけた是枝裕和さん。

「映画の現場って、カチンコがなった瞬間、異空間になるんです。でも是枝監督の現場は、それがない。普通に呼吸をしているのと同じリズムのまま、カメラの前にいられる。たとえるなら、川で捕ってきた魚が、水槽にいるのを忘れて泳いでいられるというか…。役者にとって、すごくありがたい環境です」

安藤サクラさん
すべての画像を見る(全1枚)

全力で生きる娘の姿を見ていると私も“必死こいて”生きよう、と思うんです

映画で見せる信代と子どもたちとのやり取りは、本当の親子のように自然なもの。演じた子どもたちとは、どんなふうに仲を深めていったのでしょうか。
「“けつのあなの歌”っていう歌をつくって、一緒に歌ってました。いまだに周りからは怒られるんですけど、彼らは喜んでくれたので(笑)」

安藤さんにとって今作は、昨年に第一子を出産してから、初めて挑む作品でもありました。
「以前は、出産したら働かないで子どもと一緒にいようと思っていたんです。でも今はすごく働いてる(笑)。その選択は家庭によって違うと思いますが、今の私たちにとっては、すごくいいバランスです」

先日から、朝ドラの撮影もスタートした安藤さん。さぞかし忙しい毎日を送っているのでは? と思ってしまいますが…。
「娘の姿を見ていると、『全力で生きるってこういうことか』と気づかされるんです。だから私自身も、娘を見習って“必死こいて”生きていけたらいいな、って思っています」

子育てを通じて、ご自身が親から受けた愛情についても、再確認させられたそう。
「娘をいとおしいと思うと同時に、母も同じように愛情を注いでくれていたんだろうな、って。娘を産んだ今の気持ちで、親孝行がしたいと思っています。母は昔から『いつかだれかにカンヌに連れてってもらうのが夢』と話していたんですよね。親孝行のひとつが、ようやくかなえられそうです」

パルムドールという最高の贈り物を渡せた安藤さん。晴れやかな表情で話す姿が、なんだか大きく、頼もしく見えました。

●『万引き家族』

万引きで生活の糧を得ながら暮らす治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は、ある日、団地で凍えていた幼い女の子を見かねて連れ帰る。妻(安藤サクラ)たちは彼女を家族として受け入れ、貧しいながらも楽しく暮らす。しかし、ある事件をきっかけに家族の秘密が明らかになり…。(6月8日公開)

【安藤サクラさん】

1986年生まれ、東京都出身。2007年、映画『風の外側』でデビュー。近年の主な出演作に映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』、ドラマ『ゆとりですがなにか』など。10月スタートのNHK連続テレビ小説『まんぷく』でヒロインを務める

シャツ¥20520(デルミクス ビームス/デルミクス ビームス 新宿)・アクセサリー(スタイリスト私物)