海外への一人旅歴は25年以上、回数は400回を超える、モード雑誌『SPUR』元編集長のひとりっPこと福井由美子さん。旅本「ひとりっぷ」シリーズを出版しながら、「主婦でも、お母さんでも、どんどん一人で旅に行っていいんです!」と、一人旅の楽しさを提案し続けています。
時間のねん出の仕方などを教えてくれたインタビュー前編に引き続き、この後編では、日常にも使える便利な旅アイテムについて、そしてウィズコロナの時代に、旅とどう向き合っていきたいのかを中心に話をお伺いしました。
「お母さんだから一人旅に出ちゃダメ」なんて法律はないんです
●旅に役立つものは、日常でも便利なアイテム
――「ひとりっぷ」シリーズでは、毎回、旅にお役立ちのファッション&グッズ紹介ページも楽しみのひとつです。登場するアイテムは、旅だけでなく普段の生活にも使えそうなものが多いですよね。「旅に便利なものは、日常にも便利なんです。私の場合、旅グッズは、“薄い、軽い、多少は雑に扱っても大丈夫”というのがセオリーで。あとはアウトドアブランドのものも多いですね。機能性が高いので、日常使いをしながら、旅にも応用しています。たとえば機内持ち込みのポーチも、入れるものに応じてモンベルのもの、レスポートサックのもの、さらにはジップロックなどと使い分けています。バッグの中で行方不明になりがちなので、基本的に黒はNGです」
――大荷物なのに、機動力が優れているのがさすがです。「快適さは道具で決まるので、必要なものは過不足なく持参します。400回以上ひとりっぷし続けるなかで、現時点でもっとも使えると思っているものをラインナップ。『10gを笑うものは10gに泣く』がモットーなので、愛用の品で少しでも軽量タイプのものが出たら、迷わずに買い替えます。
スタイリスト・地曳いく子さんとの共著『たまには世界のどこかでふたりっぷ』には、私ひとりっPのこだわりの旅用品と、旅の匠・いく子さんの逸品がぎっしりと紹介してあります。『こんな綿棒をなにに使っているのか?!』というレベルの細かさまで載せているので、ぜひそちらも含めて、参考にしていただけたらうれしいですね」
●コロナ禍で知ったこと。「移動するだけが旅ではない」
――ただ現在、新型コロナウイルスの影響による渡航制限で、旅がままならない状況です。どんな気持ちでいますか?「周りからも『ストレスが溜まっているんじゃないか?』と心配されるのですが、意外に大丈夫ですね。確かに、世界各国の国境がどんどん閉鎖されていき、最後のドアが閉まったときには、『そんなことって!』とは思いました。でもモノは考えようですよね。制作中だった『ふたりっぷ』のための写真を選んだり原稿を書いたりすることは、もう一度旅を追体験するようなものでした。そして、『過去に訪れた街は今どうなっているんだろうか?』と、いろいろ情報検索したり。
あとは『世界一周旅行をしている途中の人…今、一体どこにいて、なにをしているの? 調べなきゃ!』とか(笑)。国際線もまったく飛んでいないわけではないので、アプリで『○○へは飛んでいるのか~』と確認したり。調べるだけでもほんと忙しくて、集中して調べていると、ある意味旅をしているような気持ちに。なにも移動するだけが旅ではないと知りました。
羽田空港にもちょくちょく様子見に出かけています。着陸してくる飛行機を見ると『よくここまで来た。みんなよくがんばった~!』としみじみしています。国際線の機材がモノレールの車中から見えるんですけれども、『あ、ルフトハンザ航空の飛行機がいる!』とか、もうそれだけで胸アツなんですよ。そんなことも含めつつ、今は今で、次に出かける日までの準備期間と思い、結構楽しく過ごしています」
――再び自由に観光ができるようになったら、どこへ行きたいでしょうか?「贅沢は言いません。受け入れてくれる場所ならばどこでも行く心構えです(笑)。今回の新型コロナウイルスの件で、しみじみとわかりましたよ。世界中のドアが開いているのが、どれだけありがたいということか。
もともと、日常とは別のなにかを発見し、すごい! と思うのが楽しくて旅に出るので、行ける国が登場したら、それがどこの国であろうと行きます! むしろこんなことがなければ、来なかったよねーみたいな場所だったりして、と逆にワクワクしています。憧れの旅人はマルコ・ポーロだった私ですが、今の気分は、旅が容易でなかった時代に海を超えた日本人。天正遣欧使節団とか、勝海舟とかでしょうか。次に出かけるときは、私も大志を抱いて出て行こうかなと(笑)。そう思うと、次なる旅がさらに楽しみなものに。
いま、いろんなことに閉塞感を感じている方も、絶対に大丈夫。永遠にこの状況が変わらずに、どこにも行けないことなんて、有り得ませんから」
――そしてひとりっPさんが、旅情報とともにかねがね発信しているのが、「旅は日常の延長」という考え方。「そう。ひとりっぷはだれにもできて、けっして特別なことではないんですよ。もっと言えば、お母さんだから一人旅に出ちゃダメだなんて法律もないんです(笑)。『語学ができないし』みたいに言う方もいるけれども、落ち着いて! 空港に着いたら、あとはホテルに行くだけです(笑)。言葉ができなくても、電車やバスの絵に従って進めば、ちゃんと辿り着けます。普段の生活スキルで充分対応できちゃうんですよ。
都市部ならば、着の身着のままで行ってしまっても、いくらでも服や生活用品を調達できますし。さらにLCCの台頭やスマホの進化で、今や旅はフリーダム状態。私がひとりっぷを始めた25年前よりも、ずっと手軽で自由なものになってます。
『ひとりっぷ』は、けっしてオールマイティな旅ガイド本ではありませんが、私が実際に旅先で出会ったかわいいもの、おいしいもの、おしゃれなものをギュっと凝縮させた、100%偏愛をつめ込んだ一冊。私自身が人におすすめしたいコトやモノだけを入れています。どこかに引っかかって『私もここ、気になる』となったら、ぜひ実際に足を運んでご自分で体験していただいて、それで『来てよかった!』と思ってもらえたら、ひとりっPとして本望です」
――ひとりっPさんは、「そもそも女性は旅への適性がある人が多いようにと思う」ともおっしゃっています。「女性のひとり旅=危険と思われがちですが、そんなことはありません。いざというときになんとか工夫してやりきる力や、新しい環境への適応能力、日々のできごとをエンジョイできる力を女性はすごくもっている。旅先でひとりっぷ中の女性に出会うたびに、女性は強いな~と思わされる局面も多くて。だからこそ、夫婦で旅好きだったら、ファミリーの旅を楽しむのはもちろん、妻もたまにはひとりっぷ、夫もたまにはひとりっぷと、相談しながら交互に一人旅の時間を持ってみると、きっと新鮮な発見があると思うんです。ESSEonline読者の皆さんも、どうぞHave a niceひとりっぷ!」
ひとりっPさんと地曳いく子さんの新刊『
たまには世界のどこかでふたりっぷ』(集英社刊)は、大人女子×2の“ふたりっぷ”がテーマ。二人でともに行ったバンコクと台湾のレポート、それぞれの愛用のグッズ紹介、二人ならではの旅テクなどがぎっしりつまった一冊です。海外旅行解禁までの予習として、ぜひチェックしてみてください。
【ひとりっP(福井由美子)さん】
雑誌『SPUR』元編集長。会社員。女性のひとり旅を「ひとりっぷ」と名付けて応援中。おもな渡航先は、香港180回、台湾60回、タイ&シンガポール各40回、サンフランシスコ30回など数知れず。座右の銘は「旅は人生の貯金」、合言葉は「Have a nice ひとりっぷ!」。最新情報はインスタグラム
@hi_trip。公式ブログは「
今日も世界のどこかでひとりっぷ®」