忙しい毎日、仕事も家事も育児もすべてを完璧にこなすのは無理。
「家事ができなくて罪悪感をもってしまう」という読者の悩みに、漫画家、エッセイストの瀧波ユカリさんが答えてくれました。
仕事が終わる時間が遅く、家事をちゃんとできないことに罪悪感。解決策は?
【読者の悩み】
毎日仕事が終わる時間が遅いので、夜ごはんを用意するのが精いっぱい。食事が終わると、なにもする気が起きません。本当は散らかったリビングを片づけて、なにもない状態にリセットしたいと思っていますが、どうしても体が動きません。もちろんトイレや洗面所、キッチンもきれいにしておきたいのに…。
それができないことで、「なんで、こんなこともできないんだろう」と自分を責め、罪悪感をもってしまいます。なにかいい解決策はありませんか?
(Tさん・神奈川県・30歳、夫47歳)
【瀧波さんからのアドバイス】すべてをひとりで抱え込まず、家族にも「家事をやりたいのに体が動かなくて罪悪感でつらいんだ。助けてほしい」と話をしてください。
なにもする気が起きない、体が動かない。よくわかります! そんなときの私は夫の働きに期待して寝るか、ごちゃごちゃしたものを見えないところに突っ込んでから寝ます。朝になると元気になっているので、夜にはおっくうに感じた家事もちゃちゃっとできてしまいます。
・「やらない」と言っても、家事をすべて放棄するわけではありません
じつは、以前はそういう「見て見ぬふり」ができませんでした。疲れていてもだしをとってみそ汁をつくり、皿を洗って台所をきれいにしないと落ち着かなかったのです。
そんな私がもっていたのは罪悪感ではなく「なんで私がこんな大変な思いをしなきゃならないんだ」という怒りでした。怒りに包まれている暮らしは殺伐としておもしろくなく、みじめです。「なんでこんなに怒りながら暮らさなきゃいけないんだ」と怒りが2段重ねになり、限界が来ました。
怒りながらやるくらいなら、やらない方がいい。私は努力の方向を「やる」から「やらない」へと変更しました。
「やらない」と言っても、家事をすべて放棄するわけではありません。まずは、できるだけやることを減らすための工夫をしました。料理が簡単になる調味料や冷凍食品を活用したり、大皿を使って洗い物を減らしたり。ロボット掃除機や、使いやすいトイレクリーナーなどは夫がそろえてくれて、掃除がだいぶ楽になりました。
家事は夫婦できっちり分担はしていませんが、気づいたときにお互いやる体制で回っています。それでも手が行き届かないところは、できるだけがんばって、見て見ないふりをしています。見て見ないふりに大事なのは、「慣れ」と「許し」です。これくらいどうってことないと思うこと。そしてこれでもオッケー! と自分を積極的に許していくこと。
・「やらない」の練習を始めてみませんか
今日から、「やらない」の練習を始めてみませんか。シンクに洗い物がためっぱなしなのを「我慢ならない!」と思いながら、布団をかぶって眠る。洗面所に飛び散った水しぶきは「このままにしておけば加湿になるから」と言いわけして放置。トイレは流れている限りは大丈夫。もし家族がなにか言うようなら「気づいたならやっておいて~」と言えばOKです。
・家族にも話をしてください
最後に、自覚してほしいことがひとつ。「なにもする気が起きない」「体が動かない」というのは、きっと疲れすぎのサインです。
すべてをひとりで抱え込まず、家族にも「家事をやりたいのに体が動かなくて罪悪感でつらいんだ。助けてほしい」と話をしてください。家事は一生続くことだから、無理しない自分でいられることが大事ですよ。応援しています!
【瀧波ユカリさん】
1980年、北海道生まれ。漫画家、エッセイスト。アニメ化もされた『臨死!! 江古田ちゃん』(講談社刊)でデビュー。著書に『
30と40のあいだ』(幻冬舎刊)『
ありがとうって言えたなら』(文藝春秋刊)など