「子どもは若いうちに産んだほうがいい」この言葉の背景には、高齢出産に伴う流産率の高さが関連していると言われています。一般的な流産率は10~15%程度とされますが、35歳前後で30%以上、40歳以上で40~50%にまで上昇するとも。

しかし、実際には若くても流産を繰り返す女性も少なくありません。今回は、20代で3回もの流産を経験し、

「不育症」ブロガー

として活動するASCAさん(30歳)に話を聞きました。

流産手術の同意書3枚
3回にわたる流産手術の同意書(ASCAさんご提供)
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何度も流産を繰り返す。妊娠した女性を襲う「不育症」とは

●「心拍確認後の流産率は低い」というネットの情報に踊らされて…

ASCAさんが初めて妊娠したのは、結婚から1年ほどたった28歳のときでした。

「転職したばかりの時期にたまたま妊娠したので、最初は戸惑いました。でも産婦人科のエコー検査で胎嚢や胎芽を見て、『あ、私ママになるんだ』ってようやく実感が湧いて。妊娠7週頃に赤ちゃんの小さな心臓が動いているのを見たときは、愛おしさをおぼえました」

一般的には、「胎児の心拍が確認できた後の流産率は下がる」といわれています。ネットの情報でそれを知ったASCAさんは、周囲に妊娠報告。里帰り出産を視野に入れ、実家近くの産婦人科に転院しました。しかし転院先の産婦人科で、「週数の割に胎児が小さい」と思わぬ指摘を受けることになります。

「一気に不安になりました。『え? 流産するってこと? ネットの情報と違うじゃん…』って。その日から検索魔になってしまい、一喜一憂する日々を過ごしました」

●「赤ちゃんの心臓、止まってます」医師に告げられた流産

夜道に女性
ASCAさん

「妊娠9~10週の頃のことでした。検査台に上がってエコーをしていたら…先生が急に黙ったんです。カーテン越しに緊張感が伝わって、不安で足が震えました。その後、『心拍止まってます。残念ですが流産ですね』と」

まさかの心拍確認後の流産。恐れていた事態が、現実のものになってしまいました。ASCAさんは、「天国から地獄へ突き落とされたようだった」と涙ながらに語ります。

「『今すぐ手術の日程を決めて』と医師から急かされたのですが、そんなの…すぐ答えられるわけないですよね。医師からすれば、流産する女性を見るのは慣れっこかもしれませんが、その女性にとってはかけがえのない子どもを失う体験なわけで。赤ちゃんが急に死んじゃったなんて残酷な現実、受け入れられないですよ」

結局その日、ASCAさんは泣きながら手術の日程を決めました。診察室を出た後も、病院のトイレで1時間以上泣いてから帰宅したそうです。
その数日後、流産手術を実施。「赤ちゃんが生き返るかも」と願い続けていたものの、手術当日も心拍は確認できず、大きな喪失感とともに亡くなった命と別れを告げることになりました。

●2回目の流産。同僚の度重なる妊娠に追い打ちをかけられる

机に伏せる女性
職場の同僚の妊娠もまた追い込んでいくように(※写真はイメージです)

ASCAさんは1回目の流産後、「妊娠したのに出産できなかった自分」に激しいコンプレックスを抱くようになりました。流産手術からほどなくして職場の同僚2人が妊娠し、順調に妊婦生活を送っていたからです。

「同僚は2人とも、順調におなかが大きくなっていく。なのになんで私だけ流産したんだろう、私だけ女性として体が劣ってるのかな、ってノイローゼ状態になって。妬ましいやら自分の体が情けないやらで、どんどん心が荒んでいきました」

その後ASCAさんは職場に行くのがつらくなり、「適応障害」を発症。2か月ほど休職をした後、「私も出産しなくては」と取り憑かれたように妊活に励み、2度目の自然妊娠をしました。

「当時は28歳で、いわゆる妊娠適齢期。1回目の流産はショックでしたが、『たまたま運が悪かっただけ。若いから次は出産できるよ』と医師から言われていたので、今回の子は大丈夫と思っていました」

しかしその期待も虚しく、妊娠6週目で再び流産。「まだ若いのになんで2回も流産したの? 私の体はおかしいの?」と不安に思ったASCAさんは、「不育症(流産を2回以上繰り返す現象)」の専門外来への転院を決意しました。

●不育症対策もあえなく3度目の流産。重度のうつ病へ

ASCAさんが専門外来で検査を受けたところ、「抗プロトロンビン抗体」という不育症抗体が判明。まだ研究段階の抗体ですが、「バイアスピリン」という血栓予防薬を飲めば次は流産を防げるだろうと医師からの勧めもあり、3度目の妊娠へ挑みました。

「2回も流産続きだったので、妊活を再開するのは怖かったんです。でも医師から『まだ29歳だし、若いから心配いらないよ』と言われて。しかも今回は不育症対策の薬も飲んでいたので、きっと大丈夫って思ったんです」

妊活を再開したところ、ASCAさんは再び自然妊娠。妊婦健診の経過も順調で、赤ちゃんの心拍が確認できたときは安堵の涙がこぼれたそうです。

「3度目の正直。今回の子は、絶対元気に産まれてきてくれる」
しかし、ASCAさんに再び悲劇が訪れます。妊娠9~10週のとき、またも胎児の心拍が停止。3度目の流産宣告を受けることになりました。