今、パンがブームです。全国各地のその土地・その店ならではパンが人気を集め、遠くから買い求める人も。

「地域に根づいた、昔ながらの懐かしい雰囲気のあるパンを“地元パン”と名づけ、食べ歩く日々を送っています」と語るのは、エッセイストの甲斐みのりさん。

今回は、兵庫県神戸市長田区の「麦酵舎 はらだ」を紹介していただきました。3種類のメロンパンのお味とは…?

3種類のメロンパン
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関西・神戸の「麦酵舎 はらだ」では、2つのメロンパンが大人気!

大学進学をきっかけに静岡から関西に引っ越したとき、文化の違いがあまりに多く、日々驚くことばかり。とくに食べものは、見たことのない料理や食材だらけで、呼び名や形まで違っていたりします。

その1つが、メロンパン。関西でメロンパンといえば、ラグビーボール型が当たり前。そのうえ中に、白あんや、店によってはクリームなどが入っているのです。

メロンパン

では、私がそれまでメロンパンと呼んできた、表面がビスケット生地で網目模様がついた、あの丸いパンは、関西ではなんと呼ばれているのか?

その答えは「サンライズ」。昔ながらの町のパン屋さんには、「メロンパン」と「サンライズ」、その2つが当たり前に並んで置かれているのです。

●ラグビーボール型メロンパンは、オムライスの型から生まれた!?

先日、名古屋の大手パン会社に勤める、パンの歴史に詳しい方から聞いたのが、関西独特のメロンパンの話。
ラグビーボール型メロンパンの発祥は神戸で、オムライスのケチャップライスの型でパンを焼いたところ、瓜やメロンに似ていたためメロンパンと呼ぶようになったそう。

その店のメロンパンは、中に白あんが入っていたため、神戸を中心とした関西では、メロンパンに甘いあんやクリームを入れるのが定着。

抹茶メロンパン

今回取り上げた「抹茶メロンパン」は、あんこの中に栗が入っています。

そのあと、丸くて網目がついたもう1つのメロンパンが入ってきたとき、同じ名前だと都合が悪いだろうと「サンライズ」と名前をつけて、区別して販売したという説があるそう。

サンライズという名前は、丸く線がついた姿が太陽のようだからとも言われていますが、由来ははっきりしていません。

地元パンにはこんな風に、どうしてこの形? どうしてこの名前? などと不思議なパンがたくさんあります。はっきりとした歴史がわからないからこそ、探求する楽しみがあるのです。

ラグビーボール型メロンパン発祥の地の神戸で人気なのが、「麦酵舎 はらだ」のメロンパン。昭和21年に創業し、地域の学校給食パンを手がけてきたため、神戸っ子には「ハラダのパン」「原田パン」と呼ばれ親しまれています。

あんこの中に栗が丸々1粒!メロンパンを食べ比べ

3種類のメロンパンなど、ハラダのパンを食べてみました。

●ラグビーボール型メロンパン発祥の地で大人気!「神戸のメロンパン」

神戸のメロンパン

ハラダのパンのラグビーボール型のメロンパンは、表面はこんがり、中身はふかふか。

ビスケット生地は使っておらず、手でぎゅっと真ん中を割ると、中にはたっぷりの白あんが入っています。

これぞ、神戸っ子のメロンパンの味。牛乳やコーヒーと合わせて、朝におやつに部活のあとに、空腹を満たしてくれる頼もしい存在です。

 

●中身は抹茶あんに栗の粒!「神戸の抹茶メロンパン」

神戸の抹茶メロンパン

ハラダには、生地にもあんにも抹茶を練り込んだ、抹茶味のメロンパンもあります。あんこの中には、ゴロンと大きな栗の粒が!

「神戸のメロンパン」よりさらにぜいたくで、奥行きがある抹茶味。和菓子のようにほっと一息つける大人の味わいで、日本茶にもよく合います。

●関西ではこの呼び名。サクサクの表面の「サンライズ」

サンライズ

今も昔も、子どもにも大人にも、不動の人気を誇るのが、表面をビスケット生地でおおって焼いた、甘い菓子パン。

他地域ではメロンパンと呼ばれているものが、関西では「サンライズ」として親しまれています。

●チャーミングな姿のアイドルパン!「シャーベットクリーム」

シャーベットクリーム

ふんわりとした生地の中に、懐かしい味わいのバター風味のクリームがたっぷり。そこにちょこんとのっているのが、チェリーのゼリー。

洋菓子のような味わいで、午後のお茶の時間も優雅に彩るアイドルパンです。

●パンを抱えた子どもたちのデザインがかわいい袋

パンを抱えた子どもたちのデザインがかわいい袋

ハラダのパンのキャラクターは、パンとお菓子を抱えた、男の子と女の子。昔の自分と重なるような懐かしいイメージです。

●今回の地元パン

・店名 麦酵舎(ばくこうしゃ)はらだ(ハラダのパン、原田パン)
・住所 兵庫県神戸市長田区六番町7丁目2
・電話 078・577・2255
・営業時間 7:30~20:00
・定休日 1月3日のみ
・web 

http://harada-pan.com

【甲斐みのり】

静岡生まれのエッセイスト。大阪、京都と移り住み、現在は東京にて活動。旅、散歩、お菓子、地元パン、手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨などを主な題材に、書籍や雑誌に執筆。まち歩きや手みやげ講座など、カルチャースクールの講師もつとめる。著書は

『地元パン手帖』

(グラフィック社刊)、

『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』

(エクスナレッジ)、

『全国かわいいおみやげ』

(サンマーク出版)など40冊以上。ホームページ

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