年々暑さが増しているように感じられる日本の夏。どうしてもエアコンに頼りたくなりますが、その一方で昔ながらの暮らしをして、夏を過ごしている人もいます。
省エネ生活研究家・アズマカナコさんの家には、エアコン、冷蔵庫、洗濯機といった家電がありません。でも、何年も暑さ厳しい夏を家族全員元気に過ごしてきたといいます。さまざまな工夫で涼を楽しむ暮らし方を、教えてもらいました。
昔からの知恵で暮らしに涼を呼ぶ
「幼い頃、実家の隣に住む祖父母の質素な暮らしから得た影響が大きいですね。大学で環境問題を学ぶうち、地球に負荷をかけない生活って、まさに祖父母の日常だって気づいて。それでひとり暮らしを始めた頃から、できる範囲で電化製品に頼らず、ムダのない昔ながらの暮らしの知恵を取り入れるようになりました」
たらいの水に足を浸す、すだれを下げる、濡れた手ぬぐいを首に巻くなど、涼しくなるちょっとした工夫をアズマさんはこれまで取り入れてきました。
「いろいろ続けていくうち、暑さ対策のスキルが上がっていくようで楽しく感じられるように。ここ数年は、日常的に冷たいものを口にしないため胃腸が冷えないせいか、夏バテしなくなったのもうれしいですね」
●たらいに入れた水に足を浸して
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暑さが厳しい日には、たらいに水をはり、そこに足を浸します。ときには親子で涼むことも。「足だけ行水、これ、けっこう涼しくなるんです。机の下にたらいを置き、足をつけながら仕事することもあります」。
●グリーンカーテンで日をさえぎる
庭にはひょうたんやゴーヤなどのツル性植物を植え、グリーンカーテンをつくります。
「種をまくなら4月、苗から育てるなら5月頃から準備します」。7月には葉が生い茂り、夏いっぱい強い日差しをさえぎってくれるそうです。
春に準備中の苗。「日当たりのよい2階の軒下に並べて育てています」。
●旬の野菜をそのまま食べる
トマトやナス、キュウリといった夏が旬の野菜は、水分を多く含み、体を冷やす働きもあるので、たっぷりとるよう心がけます。「そのまま常温で食べれば胃腸を冷やしすぎることがないし、素材の味もよりわかります」。
●たらいで洗濯して手で水を絞る
洗濯は手洗い。たらいで洗って手で絞ります。夏は冷たい水が心地よく、子どもたちも水遊び感覚で手伝ってくれるそう。
「絞りが弱くても夏ならすぐ乾くし、濡れた洗濯物を通して部屋に入る風が涼しいんです」。
●庭の植木に水やりをすると、ひんやり
夏の間は、朝夕と庭の植木に水やり。「植物が元気になるだけでなく、気化熱で周囲の温度をグッと下げてくれます」。水やりには雨水を利用。ひしゃく代わりに使っているのは、育てたひょうたんを半分に割ったものです。
家の裏に設置した雨水タンク。トイレの水洗にも使っています。
●一升ビンで日なた水をつくり、体の汗を流す
「お日さまの力はあなどれません」。水を入れた一升ビンを日の当たる場所に置いておくと、夏場は5時間ほどで60℃のお湯になるそう。「このお湯をたらいに入れて水をたせば、夕方子どもたちの体の汗を流すには十分です」。
家事を効率的にこなすために、現代人に電化製品は必需品です。また、熱中症や疲労の蓄積を考慮すれば、クーラーの使用はむしろ好ましいといえるでしょう。アズマさんの暮らし方は、「普通」の人とはある意味、対極にあるかもしれません。それでも、自然の力を巧みに利用して涼を得るという昔からの知恵には、やはり参考になるところがあります。
金魚を愛でたり、風鈴の音に耳を傾けたりと、さまざまな工夫で涼を楽しんできた先人に思いをはせながら、元気に夏を過ごしたいものです。