ドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)などで注目を浴びている「妊活」という言葉。同作のなかでは、主人公が不妊治療に行き詰まり、「若く見えても30代半ば」という現実に直面して思い悩む姿も描かれています。

アンチエンジングの知識も広まり、若く美しい女性が増えた現代の30代。しかし妊娠・出産適齢期は昔とさほど変わりません。ドラマのように、いざ不妊治療に取り組んでみて初めて、気持ち上の年齢と卵巣・子宮の年齢のギャップに悩み、行き詰まる女性も少なくないのが現状です。

そこでここでは、「不妊治療を始める前の心の準備」について、『井上メディカルクリニック』井上憲先生にお話を伺いました。

妊活
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不妊治療は夫婦の共同作業。足並みそろえるのが大切です

「不妊治療を始める」というのは大きな決断です。不安の種があれば、あらかじめ夫婦で話し合ってつぶしておきたいものです。

-不妊治療を始める前に、夫婦で決めるべきことはありますか?

まず、いちばん大切なのはご夫婦でよく話し合い足並みをそろえることです。不妊治療というのは、競技に例えると二人三脚のような側面があります。妻だけが早く走ろうとしても、夫がついていけなければ転んでしまいます。
女性側だけがんばれば成り立つものではありません。円滑に治療を進めるうえでも、夫婦間のコミニケーションがとても大切になってきます。

-なるほど。不妊症の約半数は男性が原因といわれていますが、夫が不妊治療に協力的でないと片方のケアしかできないことになりますね。

そういった面ももちろんあります。また、不妊治療は、経済的、肉体的、精神的に少なからず負担があるので、ときには女性が精神的にストレスを抱えてしまうことも。そんなとき、男性が協力的でないと、女性への精神面でのケアが行き届かないという問題もあります。

-確かに不妊治療を始めてから、ご主人が協力的ではないことに腹が立って夫婦げんかが増えたという話はよく聞きます。

もしそんなときに「あなたが協力的ではないからできないのよ」とご主人を責めてしまって、さらに夫婦仲が悪くなってしまったら困りますよね。幸せな家族をつくるための不妊治療で、家族仲が悪くなってしまうのは本末転倒です。
また、不妊症や不妊治療自体が男性にとってはプレッシャーになっていることもありえるので、男性のデリケートな面にも気を配りつつ、ご夫婦でじっくり話し合ってから治療を始めることをおすすめします。

不妊治療にストイックになりすぎないで!

不妊治療中、とくに女性は結果に一喜一憂し、思いつめがち。そういうときに心がけるべきことは?

-病院を選ぶときはどういったことに気をつければよいでしょうか?

不妊治療で通院することに抵抗を感じる男性も少なくないので、ご主人にとっても通いやすい環境と、話しやすい医師のいる病院を選ぶことが大切なポイントです。
たとえば、仮に「婦人科の待合室で落ち着かない」というご主人であれば、「婦人科だけでなく内科などほかの科も併設している病院」という選び方もあるかもしれません。医師やスタッフの雰囲気も、女性目線だけでなくご主人との相性を考慮して選んでみてはいかがでしょうか。

-では、不妊治療中に「やらない方がいいこと」はありますか?

なにか不安なことがあったとき、過剰にネット検索をするのは避けた方が無難です。インターネットで検索してしまったがために、ネガティブな情報ばかり頭に残り、余計不安になるというのはありがちなことです。

-顔の知らない素人の意見より、専門家である主治医に相談した方が正しい情報が得られそうですね。では、病院ではなく家庭で話すべきことはなにがありますか?

逆に不妊治療中の日常生活でのストレスに関しては医療の介入が難しい場合もあるので、ご夫婦でよく話し合い、互いにサポートし合うことが大切です。ご夫婦ともに、不妊治療に対してあまりストイックになりすぎず、チームを組んで「不妊治療を楽しむ」感覚で共同作業ができれば理想的です。

不妊治療
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確かに不妊治療を楽しむという意識で取り組むことができれば、かえって夫婦の結束は強くなりそうです。もし不妊治療を諦める結果になったとしても、「幸せな家族をつくる」という目的からは離れないはずです。