タマネギを切ると涙が出る、トマトを角切りしたいのにつぶれてしまう、かたいカボチャを切るのは一苦労…。毎日の料理は、「野菜を切る」という第一段階が、意外と大変だったりします。でも、「正しい切り方をマスターすれば、どんなものでも苦労なく切れるようになる」と教えてくれたのは、科学的調理理論を取り入れた調理指導法を確立し、著書もある調理科学研究家の水島弘史さん。
すべての画像を見る(全17枚)力いらずできれいに切れる包丁使い
水島さんによると、力を入れて包丁を上下に動かすと、切っているつもりで素材を押しつぶし、細胞を壊してしまうことに。これがタマネギが辛くなったり、トマトが水っぽくなったりする原因なんだそう。
「包丁は正しい姿勢で真っすぐに持ち、素材に対して30度の角度で斜めに切り進めるのがポイント。素材にかかる摩擦や圧力が最小限になり、力を入れることなく、どんなものでも美しく切ることができます。切り口をつぶさないので、臭みや水気が出ることなく、食感や風味、日もちも格段にアップしますよ」
調理科学のプロに聞く!力いらずできれいに切れる包丁使いのための基本姿勢
【基本の姿勢】
●手首、腕、ひじが真っすぐになるように包丁を持つ
添え手側の体を調理台にぴったりつけ、肩が左右同じ高さになるようにして力を抜き、包丁の峰から手首、腕、ひじまでが真っすぐ一本線になるように、包丁を持つ。
●足の位置は調理台に対し、45度
調理台にまな板を置き、調理台に対して、体を斜め45度に傾ける。足も調理台に対して45度に。包丁を持つ手と反対の添え手は、まな板の横のラインと平行になればOK。
◆基本の姿勢を守れば、断面が崩れず、すっときれいな切り口に
トマト:角切りも種やゼリー状の部分がつぶれず、水分がキープされ、まな板の汚れも最小限。
ケーキ:イチゴ、生クリーム、スポンジと、かたさの違う素材もつぶさず切れ、見事な切り口。
◆切り方で、切った後の食材にこれだけ差が出る!
タマネギ:上から下に切ると細胞が破壊され、水分が出てきてしまう。30度切りは、涙が出ず、時間がたってもしなっとしない。
万能ネギ:30度で切ると切り口は真ん丸。上から下に切ると、切り口がつぶれて楕円形になり、水分が出て、日もちしない。
基本の姿勢を身に着けたら、次は基本の切り方を学ぶ!
【基本の切り方】
(1)親指と人さし指で包丁の柄のつけ根を持ち、中指は下に添える(薬指と小指は使わない)。
素材に対して30度の角度に包丁を当て、力を入れずに刃先からスーッと切り込む。
(2)包丁の刃先から中央手前までが、もっともよく切れるストライクゾーン。手首を前に送りながら弧を描くように切り進む。
(3)包丁の中央手前まで素材を切ったら、切り進んだラインをなぞるようにして戻す。引くときには素材を切らないのがコツ。
※違いが一目瞭然!
それぞれの切り方でスポンジを切ると、上から下に切ったものは、ぐちゃっとつぶれる。
これに対して、30度で切ったものは、包丁がスーッと入り、つぶれない。
プロの裏ワザをこっそり教えてもらいました
●面取りいらずで一石二鳥なカボチャの切り方とは?
切るのにひと苦労のカボチャも、水島式の切り方なら力を入れずにスイスイ。切り口がなめらかだから煮くずれず、面取りいらずです。
(1)包丁の刃先をカボチャに対して30度に入れて切り込み、柄を持っていた手のひらを柄の尻に当てる。
(2)添え手を刃先の峰に当て、そこを支点に包丁の両端を上下にスイングさせながら前方に切り進む。
●まな板が汚れがちなパセリのみじん切りも解決
パセリも上から下に切ると、まな板が緑に。水島式の切り方なら細胞がつぶれないのでまな板が汚れず、水っぽくなりません。
(1)包丁の柄は親指と人さし指で軽く持ち、添え手の手首をまな板につけ、指を包丁の峰に軽く当てる。
(2)包丁の刃先を前にすべらせるようスイングさせながら切る。切ったラインをなぞるように包丁を戻す。