つい先日、平昌オリンピックの会場でノロウイルスが蔓延したというニュースが話題になりました。日本でも、まだまだ油断は禁物。家庭でできる対策を振り返っておきたいところです。

「ノロウイルス感染対策は、間違いなくトイレの掃除方法にかかっています」と話すのは、『健康になりたければ家の掃除を変えなさい』の著者であり、亀田総合病院などで病院清掃に30年携わってきた松本忠男さん。家庭でできる「ノロウイルス対策」として、正しいトイレのお手入れの仕方を教えていただきました。

ノロウイルス対策
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ノロウイルスに効く消毒液の正しい使い方

周囲でノロウイルスが流行した場合、トイレの掃除でもっとも大切なのは、便器や手すり、ドアノブなどよく触るものの消毒です。

「インフルエンザや風疹などの多くのウイルスは、『エンベロープ』という脂質の膜で覆われており、アルコール消毒が有効です。しかし、ノロウイルスには、このエンベロープがないため、アルコールは効果がありません。ノロウイルスに対して有効なのは、『次亜塩素酸ナトリウム』(家庭用の塩素系漂白剤)による消毒です。家族が通う職場や学校でノロウイルスが流行したら、まずは『予防のための消毒ふき』を行ってください」

塩素系漂白剤は、家庭用では「ハイター」や「ブリーチ」、また赤ちゃんの哺乳瓶の消毒に使う「ミルトン」などの名前で売られています。これらの塩素系漂白剤を、ノロウイルスの予防に使うには、水で適切な濃度に薄めることが大事だと松本さんは言います。

「ノロウイルス予防の際、塩素系漂白剤は0.02%に希釈して使うのが基本です。商品によって、もともとの濃度は異なりますので、それによって加える水の量も変わります。『ハイター』や『ブリーチ』のもともとの濃度は5~6%、『ミルトン』は1%です。たとえば『ハイター』でトイレを消毒する場合は、2mlを500~600mlの水で薄めると、0.02%の消毒液ができあがります」

この消毒液を使って、トイレのドアノブや便器のフタ、水洗レバーなど、手が触れる場所を一日1回消毒ふきしておくと、感染のリスクが減らせるのだそうです。

ちなみに、この消毒液は、時間が経つと塩素濃度が低下するため、つくりおきはNG。希釈は消毒ふきをする直前に行いましょう。

もし家族が感染してしまったら?嘔吐物の正しい処理方法

嘔吐物の正しい処理方法

では、予防がままならず、実際に家族がノロウイルスに感染し、家の中で嘔吐してしまった場合には、どうすればいいのでしょうか。

このとき用意するのは、次の「3点セット」です。この3つを用いてできる、プロの処理の手順を教えていただきました。

・使い捨て手袋とマスク
・塩素系漂白剤
・ペーパータオル

(1)使い捨て手袋とマスクを着用し、0.1%に希釈した消毒液をつくる

ここでは予防が目的ではないので、先ほど紹介した0.02%よりも濃い0.1%の濃度で希釈液をつくります。消毒液はつくりおきができないので、その都度つくってください。

(2)汚物をペーパータオルで覆い、消毒液をペーパーの上から静かに染み込ませてふき取る

ただし、もしカーペットやラグに嘔吐してしまった場合は、漂白剤の消毒液を使うと色が抜けてしまうので、使用は避けましょう。
「嘔吐物をペーパータオルで取り除いてから、85℃以上のスチームアイロンを当てて消毒してください。使ったアイロンは、必ず0.1%の漂白剤で消毒ふきをしましょう」

(3)ふき取った場所に再びペーパータオルを敷き、消毒液を染み込ませ、10分放置してからもう一度ふき取る

ふき取るときは、決してワイパーのように往復ふきをしないことが大切です。
「ごしごしとこすってしまうと、ふき取ったウイルスをもとの場所に押し戻すことになってしまいます。往復ふきではなく、常に一定方向に向かってふくのが正解です」

(4)同じ場所を水で濡らしたペーパータオルでさらにふき取って終了

なお、汚物が付着した衣服やシーツは、白いものなら漂白剤でつくった消毒液に10分間以上浸してから、ほかの洗濯物と分けて洗濯します。漂白できない色柄ものであれば、85℃以上の熱湯に1分間以上浸けたあと、やはりほかの洗濯物と分けて洗濯しましょう。
「ノロウイルスの消毒では、消毒液をつける時間が非常に重要です。仮に十分な濃度の消毒液であっても、ウイルスにつける時間が短ければ、ウイルスは残ってしまいます」と松本さん。

今回ご紹介した「3点セット」を用意しておけば、周囲でノロウイルスが流行しても、あわてなくてすみそうです。上の4つの手順を確認して、いざというときに備えておきましょう。

*塩素系漂白剤は、クエン酸などの酸性のものと混ぜると有毒ガスが発生するので、絶対に同時に使用しないでください。塩素系の洗剤を使用する場合にはゴム手袋をして、必ず換気を行うようにしましょう