在仏5年目を迎え、現地でパティシエとして働くラボレル友里恵さんに、現地の「食」をレポートしてもらいます。今回はフランス人が愛してやまない、ジャガイモとチーズを組み合わせた冬の定番レシピを教えてもらいました。

まるでジャガイモもち!?フランス中南部の郷土料理「アリゴ」

 ジャガイモとチーズの組み合わせはフランス人の大好物。寒い冬の定番料理です。地方によってバリエーションはさまざまですが、パパッと簡単にできるものがほとんど。今回は日本でも簡単に試せる、フランスの地方別ジャガイモ料理を紹介します。

冬の屋台でも大人気のアリゴ。もっちり伸びるさまは、まるでトルコアイスのよう
冬の屋台でも大人気のアリゴ。もっちり伸びるさまは、まるでトルコアイスのよう
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 まずはフランス中南部・オーブラック地方の郷土料理「Aligot(アリゴ)」。あつあつのマッシュポテトにトムフレッシュチーズ(熟成していない若いチーズ)、ニンニク、生クリームなどを入れたもの。たっぷり入ったチーズがおもちのようによく伸びます。冬に最適で、寒い季節には屋台のメニューにも登場します。

[材料](つくりやすい分量)

・ジャガイモ 500g
・トムフレッシュチーズ 300g
・ニンニク 1かけ
・クレームエペス(酸味のあるクリーム・牛乳で代用可)100ml
・塩コショウ 少々

(1)ひと口大に切ったジャガイモと、刻んだニンニクを沸騰した湯に入れ、ジャガイモが柔らかくなるまでゆでる。

(2)(1)がゆであがったらザルにあけ、ミキサーでピュレ状にする。

(3)厚手の鍋に(2)のピュレとクレームエペスを入れ、細かく切ったトムフレッシュチーズを少しずつ加えながらとろ火で8の字を書くように木べらで混ぜる。しっかりと粘り気が出たら、塩コショウで味を整えれば完成。

 トムフレッシュチーズが手に入りにくい場合は、溶けるチーズ、グリュイエールチーズやエメンタールチーズでも代用できますよ。

 濃厚なチーズの味わいと、もっちりした食感を楽しんでください。

パリ生まれのジャガイモとひき肉の料理「アッシ・パルマンティエ」

 18世紀に、ジャガイモ普及につとめたパルマンティエ氏の名前がついたパリ生まれの料理、「Hachis Parmentier(アッシ・パルマンティエ)」。ひき肉の上にナツメグ風味のマッシュポテトをのせ、オーブンで焼いたポテトグラタンです。今ではブラッスリーや家庭でも、年中お目にかかる定番料理に。

オーブンまたはトースターでしっかりきつね色になるまで焼く
オーブンまたはトースターでしっかりきつね色になるまで焼く

[材料](つくりやすい分量)

・ジャガイモ 500g
・牛乳 200cc
・ナツメグ 1つまみ
・バター 30g
・牛ひき肉 300g
・タマネギ(みじん切り) 1個
・パセリ(みじん切り) 1束
・塩コショウ 少々
・ピザ用チーズ 適量

(1)ジャガイモを柔らかくゆで、フォークなどでつぶしながら、熱いうちにバター・牛乳・ナツメグを加えてピュレをつくる。

(2)フライパンで、ひき肉、タマネギ、パセリを炒め、塩コショウで味を調える。

ひき肉の上にマッシュポテトをしっかり敷き詰める
ひき肉の上にマッシュポテトをしっかり敷き詰める

(3)耐熱皿に、(2)、(1)の順に重ね、チーズをかけて、200度のオーブンまたはトースターで、焼き色がつくまで焼く。

 テーブルにどんと出して、目の前で豪快に取り分ければ、大皿いっぱいでもペロリ!と食べられちゃいます。

ジャガイモに溶かしたチーズをかけるフランス東部の伝統料理「ラクレット」

専用のへらに入れてチーズを溶かし、熱々のじゃがいもにかけるだけ
専用のへらに入れてチーズを溶かし、熱々のじゃがいもにかけるだけ

「Raclette(ラクレット)」とは、スイスやフランス東部、サヴォア地方などの名物料理のひとつ。フランス語で「ひっかく」「削る」という意味で、その名のとおり、大きな塊のチーズの表面を直火で溶かし、ふかしたジャガイモや生ハム、乾燥ソーセージなどの肉製品にそぎ落としていただきます。

 レストランでは大きなチーズを溶かして使いますが、家庭用には、あらかじめ5ミリほどに薄く切られたラクレットチーズが売られています。フランスにはラクレットマシンという調理器具が大体の家庭にあるんです。ホットプレートのような見た目ですが、プレートの下に空間があり、そこにヘラのような形状の受け皿を差し込んでチーズを溶かすという仕組み。上のプレート部分では、ジャガイモを温めることができます。この調理器具がなくても、ホットプレートにチーズをそのせて溶かし、ジャガイモにかければ同様に楽しめます。ジャガイモをふかす手間だけなので、冬の寒い日、ゆっくりしたいときにはうってつけ。

 いかがでしたか?寒い冬に、ジャガイモとチーズの伝統料理で温まってみてはいかがでしょうか。

【ラボレル友里恵さん】

早稲田大学卒業後、かねてからの夢であったパティシエを志し、日本の製菓店で修行後、2012年に渡仏。リヨン・パリと修行を重ね、現在もパリのパティスリーで働く傍ら、2013年よりフランスの食文化を中心とした記事を執筆。週末はフランス人の夫とともに、おいしいものを求めフランスの地方を巡る日々