2016年は、大学を卒業した人の就職率が過去最高だったというニュースが話題になりました。でも、いくら景気がよくなって企業の採用人数が増えたからといって、だれもが望みどおりの職に就けるわけではありません。新卒のときの就職活動がうまくいかず現在も求職中の人、一度は就職したものの職場になじめず退社して次が見つからない人、やりたい仕事に就くために転職活動を続けている人など、世間には職を求める若者が多数います。

 今回は、職に就けない息子となにかと親を頼る娘の面倒を定年後も見なければならなくなった夫婦のケースを紹介します。

30歳過ぎの息子は無職、娘は親に頼ってばかり…

30歳過ぎの息子は無職、娘は親に頼ってばかり…
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 30歳になる息子の生活費をすべて負担しているというのは、杉本さん夫妻。息子は実家を拠点に就職活動中ですが、なかなか職が見つからず、経済的に自立できずにいます。

 ご主人は定年後も再雇用制度を利用して、現役時代に貯めた貯金を切り崩さずに生活できる収入があります。そのため、断るきっかけをつかめず息子を援助し続けているのです。

 ご夫妻には娘もいるのですが、彼女もまた悩みの種に。近所に住んでいるので孫を連れて遊びに来てくれるのはありがたいのですが、「夫の帰りが遅いから」と夕食を食べていくこともしばしば。また、孫のご機嫌な顔を見たくて、つい洋服やオモチャを買ってあげたり、遊園地に連れていったりと余計な出費を重ねてしまいがちに。

 こうして子どもたちにかけるお金がかさみ、杉本さんは次第に貯蓄を取り崩すようになってしまいました。一度にかかる出費は多くないものの、日々の積み重なりが家計を圧迫し、老後資金は減る一方、と不安を訴えています。

いくつになっても経済的援助を続けるのは、親の甘さが原因

いくつになっても経済的援助を続けるのは、親の甘さが原因
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 これまで1万人以上の赤字家計を再生してきたファイナンシャルプランナーの横山光昭さんによると、子どもへの援助問題で悩むシニア世代は多いとのこと。

「ひとり立ちする年齢になってもだらだらと援助し続けるのは、親の甘さが原因です。お金を出していることが、本当に子どものためになっているのか、よく考えてください」。援助することで、子どものやる気をそぎ、可能性を奪っていることもあると指摘します。

 幸い、杉本さんのケースでは貯蓄が目減りする程度でしたが、なかにはブライダルローンや奨学金の肩代わりをする親も。その返済で生活が困窮し、老後破産に陥るケースもあると言います。

「早めに家計の状況をオープンにして、どの程度のやりくりが可能なのかを子どもに理解してもらいましょう。家計の状況を伝えることは、今後の介護医療費を考える参考にもなるので、子どもにとっても役立ちます」

 先日、公的年金の支給額を現役世代の賃金に連動させる法案が可決されました。これにより将来物価が上昇しても、会社員の平均給料額が上昇しない場合には年金支給額が減ってしまう、なんてことも起こり得るように。

 このような制度変更は今後も起こることが予想されます。将来のことはだれにもわかりませんが、いずれにせよ、先行きが不透明な老後の準備は早めにスタートするにこしたことはありません。