家族、友人、仕事関係…。私たちの悩みは周囲の人間関係によるものが多く、とくに女性は、人づき合いでストレスをためやすい傾向にあります。
脳科学者の柿木隆介先生によれば、怒りや悲しみ、嫉妬といった感情も、すべて脳の働きによるもの。今回は、仕事をもつ人ならだれでも一度は考えたことのある、あの問題について、お話をうかがいました。
「職場での扱いが不当に低い」という悩み
――給与が安かったり、上司の態度がぞんざいだったり、「職場で不当に低く評価されている」と感じる人は少なくありません。とくに、女性の場合、性別が問題で、公正に見られていないと悩む人もいますが…。
すべての画像を見る(全2枚)柿木隆介(以下、柿木)
:「不当に低い」と感じるということは、本当はもっと評価されるべきだと、期待しているということですよね。この、なにかに対して期待するというのも脳のしわざなんです。脳の中には報酬系と呼ばれる部位があり、快感を覚えるときにはそこが活動しています。
行動を起こすとき、脳は、その結果として得られる報酬を予測しているんです。これを「報酬予測」といいます。予測される報酬が大きければ、その分だけやる気が上がるというように、人間は日常的に「報酬予測」によってモチベーションをコントロールしているのです。
「好物を料理して食べる」「観たかった映画に行く」など、自分でアクションを起こし、報酬を得られることでしたらいいのですが、他者の評価や行動など、自分でコントロールできないことに報酬を求めてしまう場合はやっかいです。
報酬が少ないと落胆を感じる
――与えられる報酬が自分でコントロールできないからでしょうか?
柿木
:そう。予測していたよりも、少ない報酬しか得られないと、期待を裏切られたと感じて、がっかりしてしまうんです。がんばったのに思ったような評価を得られなかったら、当然、落胆しますよね。ときには「がんばっているのに認められない」と、上司や会社に憤りを覚えるかもしれません。
でも、結果はあくまでも結果。期待をもつこと自体は仕方がないので、必要以上に落ち込まず、淡々と受け止めることが大切です。「今回は実力よりも、期待値が高すぎたんだ」落胆している自分に気づいたら、そう思うことで、理想と現実のギャップをうまくうめることができますよ。
『
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【柿木隆介さん】
自然科学研究機構生理学研究所・教授。福岡市出身。九州大学医学部卒業後、神経内科医、ロンドン大学医学部神経研究所などを経て、39歳より現職。文部科学省、厚生労働省、環境省の大型研究プロジェクトのリーダーを務め、国際学会での招待講演も行う。テレビ、雑誌などの各種メディアで脳科学の啓蒙に力を注ぐ。