主演ドラマが話題を呼んだばかりの松たか子さんが次にチャレンジするのは、季節がクリスマスの舞台。 「なにも考えずに楽しんでほしい」という舞台の見どころや、暮らしのなかの小さな楽しみについて伺いました。
松たか子さんインタビュー
すべての画像を見る(全2枚)クリスマスが近づき、街もにぎわいを見せるこれからの季節。クリスマスの思い出を松たか子さんに尋ねると、こんなほほ笑ましいエピソードが返ってきました。
「子どもの頃、兄姉とサンタさんになにかしよう! という話になって。『サンタさんは外国の人だからコーヒー飲むんじゃない?』とイブの夜にコーヒーを置いておいたんです。翌朝『飲んであった!』とみんなで盛り上がりました(笑)」
11月から始まる舞台『パ・ラパパンパン』は、イギリスの小説『クリスマス・キャロル』がベースの、まさに今の季節にぴったりのミステリーコメディ。松さんが演じるのは、執筆中にいつの間にか自分が書いた物語へ入り込んでしまう、鳴かず飛ばずの小説家です。
「もし自分が異世界へワープしたら…? と妄想したことがある人なら、とっても楽しめる舞台だと思います。難しいことを考えず、ただ座っていただければ、私たちが勝手に大騒ぎしますので(笑)」
●エンタメを届ける難しさを痛感しています
日常を忘れて思いきり楽しめる時間を届ける。そのための稽古に励みながら、エンターテインメントをつくる難しさも痛感しているそう。
「つい先日、ニューヨークで行われたトニー賞の中継を観たんです。久しぶりに再開した劇場の熱気に包まれながら、みんな質の高いパフォーマンスをしていて。やっぱりエンタメってパワーが必要だし、それを出しきらなきゃいけないと実感しました。私自身はその域までは到達できていないので、とにかく演出家の方に言われたことをやってみるしかない。その姿勢で、なんとか今までやってきた感じです」
公演中のコンディションを整えるために意識しているのは、「普段と違うことはしない」。
「寝て、起きて、お芝居をして…。その繰り返し(笑)。私にとって劇場は家のように落ち着く場所なので、楽屋に入るのは早い方。余り布でつくった敷物を持ち込んだり、過ごしやすいよう整えています」
●気分転換はお裁縫。無心になってちくちくと縫っている時間が幸せ
仕事の合間や休日には、気分転換に子どものバッグやエプロンを手づくりすることも。
「セリフを覚えなきゃいけないのに、次はなにをつくろうかな…と妄想したりして。最近はワンポイントの刺しゅうをするのも好きです。無心になってちくちく縫っている時間は本当に幸せ。今は娘のものばかりだけど、そのうち自分のものもつくってみたいですね」
裁縫と同じく、料理も松さんにとっては、黙々と集中できる貴重な時間だそう。
「ただし忙しいときは手をかけられないので、いかに時間をかけずに“できたて感”を出せるか工夫しています。途中まで調理してオーブンで焼くだけの状態にしておけば、レンジでチンするより喜んでくれるかな? と考えて。ときどきはそうやって作戦を変えないと、娘に『また〜』って怒られちゃうので(笑)」
●過去の評価に甘えず、今の作品と向き合いたい
今年は、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』も話題になったばかり。松さんの下にも、演じた主人公の「とわ子の服がすてきだった」「おもしろかった」と、うれしい感想がたくさん届いていたそう。
「私も去年から、お洋服を買っても着ていく場所がないし…とさぼっていたんですけど、ドラマをきっかけに、『やっぱりおしゃれって楽しいな』と思えて。私自身も作品から元気をもらえたうえに、観た人にも楽しんでもらえるなんて、本当にありがたいですよね」
とはいえ「好評だったからこそ、そこに甘えたくない」と松さん。
「私はわりと単純なので、大豆田をやっているときはそれがすべてだし、終わると周囲ががっかりするくらい、『もう終わり!』と気持ちが切り替わってしまうんです。だから今はとにかく、『パ・ラパパンパン』をやりきりたい。そのことで頭がいっぱいです」
過去にとらわれず、今、目の前の作品に全力で向き合う。そんな松さんだからこそ、多くの人を魅了できるのでしょう。