ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている
@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第39回は、犬を介して行われる他人とのコミュニケーションについて。
犬がいるからこそ得た、たくさん経験とコミュニケーション
犬がいるからできる経験は多々あるが、そのなかに“犬を介して行われる他人とのコミュニケーション”というのもある。
ときどきツイッターにも投稿しているが、犬と日々散歩していると私でなく犬に向かって挨拶したり反応してくれる人と遭遇したりもする。ひざを折って犬の目線に合わせてくれる人もいる。
すべての画像を見る(全12枚)今月の回覧板では散歩時に起きた他人とのコミュニケーションを、内容には関係ない9月の写真を添えてご紹介します。
というのも相手が好意を持って近寄ってきてくれても、犬は自分の間合いを守ろうとするし私も気をつけねばならないので、その場では写真を撮っていられないのです。
遠くから遊んでくれる分には平気そうだけど、そばに近寄ろうとしたら身構える。数年前にも、おそらく県外から来ていた中学生のグループが「撫でてもいいですか?」って聞いてくれたときもうれしかったが「この子は人が苦手で…」とお断りをした。しかし優しい子達で、そのあとも「かわいすぎるよ~!」と遠くからほめてくれた。
またあるときは山道を歩いていて車が通ったので端に寄っていたら、その車がゆっくりと停まって窓が開いた。中からおじいさんとおばあさんの顔が見えれば「ええ犬や!」と声を掛けてくれたのだ。ええ毛艶やええ顔立ちやとほめてくれて「ほな!」と去っていって面白かった。
通りすがりの人からも犬がほめられると、私はいつも「分かるわ~!」と共感している。
この前は公園に車でお出かけしたときに、車から犬が降りたと同時に、通りがかったこれまた中学生のグループから「犬ちゃ!! きゃわー!!」と明るい声が上がったのだ。車から降りて顔見せたと同時にこんな声が上がるかね?
まるでトップアイドルみたいで笑ってしまいながら「とっさに叫んでしまうのも分かるよ…きゃわなのよね…」と心の中で頷きまくった。
一つ、鮮明に記憶に残っている出来事がある。犬が2歳の誕生日だった。
夕方頃、散歩をしていたら進行方向に子どもふたりが遊んでいた。ふたりは犬に気づくとパァッと眩しい笑顔を向けてくれた。当時の犬はまだ今のような警戒心もなく、子どもたちが少し怖々と、しかしうれしそうに撫でてくれる手を受け止めていたし、なんならその場にぺたんと座り込んでいた。
「うちには猫がおるよ」とふたりが指を差した方を見ると、二階建てのおうちの高い窓から猫がジッと覗いていた。その視線がふたりを守っているみたいで、見張られている気持ちになった。
子どもから「この犬さんはいくつ?」と歳を問われたので「ちょうど今日が誕生日で、2歳になったんよ」と話せば、ふたりともエエッ!! と目を丸くして驚いていた。バイバイするときには「すてきな一日にしてね~! あっもう夕方やけど~!」と両手を振ってお祝いしてくれた。なんて温かい言葉をくれるのだろうと、リードを握っていない手で振り返した。
また夕方の散歩時に起きた近所での出来事だが、おばあちゃんから「エースくんのおうちの子やんなぁ」と声を掛けてもらった。エースは
inubot回覧板第20回にも登場した、10年以上前に亡くなったけれど小さな頃からずっと一緒に暮らしていた愛犬である。
そのおばあちゃんはうちの祖父母の生前よく家にも来てくれたらしく「エースくんにもよく遊んでもらってね、行ったらずぅっと撫でさせてもらったんよ」と語ってくれた。
思いがけない場所で聞けたエースの名前、そして10年以上も前のエースとの思い出をおばあちゃんが覚えてくれていてうれしさが込み上げてきた。そう私も犬もエースくんのおうちの子で間違いない。
今朝もご近所のおばちゃんが犬に向かって「散歩ええねえ」からはじまり「行っておいで~」と送り出してくれた。犬の代わりにはならんけど私が「行ってきます~!」といつも通り返事をした。
この連載が本
『inubot回覧板』(扶桑社刊)になりました。第1回~12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。
【写真・文/北田瑞絵】
1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント
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