自分や夫の両親と30分以内の近距離に住むことを「近居」といいますが、こうした暮らしを選択する人が増えています。

ESSE読者300人にアンケートをとったところ、「近居をしてみたい」という人が60%。そのうち、自分の親と近居したい人は52%、夫の親とは13%、両方という人も35%いました。

近居していると、仕事や子育てのサポートという面では手が増えて心強い半面、とくに義理の実家との距離感のつかみ方は難しいもの。
ここでは、近居を実践している読者のリアルな声をもとに、夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さんに「近居を成功させるコツ」を伺いました。行政による「近居支援サービス」についてもご紹介します。

不満をため込まず、適切な距離感を保つのが近居のコツ

近居を成功させるコツ
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「親にとって、息子や娘はいつまでも子どもの頃のまま。近くに住んでいれば世話を焼いたり、口を出したくなるものです。だからこそ、たとえ自分の親であっても、適度な距離感をもつことが大切」と、これまで嫁姑問題の悩み相談を多く受けてきた高草木さんは語ります。

夫の親と近居の場合、直接言われていないのに、「お義母さんにこう思われるかも」と無用な深読みをして悩むこともありがちだとか。

「妄想でマイナス思考に陥るより、こちらから心を開く努力を。なにかのついでにちょっと声をかけたり、立ち寄るなど、日頃からコミュニケーションをしっかりとれば、必要のない誤解をせずにすみます」

「また、夫の親でも自分の親でも、必要以上に仲よくする必要はありません」と高草木さん。「近居だからこそ、心にも適度な距離を保って、波風立てずにつき合うぐらいの気持ちでいることが、成功させる秘訣です」

こう考えればうまくいく!近居を成功させるための8か条

近居でストレスを感じず、適切な距離感を保つ方法、不満をためない考え方を高草木さんに教わりました。

【1】家族で過ごす時間をしっかりつくる

妻の親と近居の場合、親と過ごす時間が長くなると、夫の立場がなくなるケースも。
「休日は実家抜きで過ごす決まりにするなど、家族の時間をつくって。また、親にばかり頼らず、夫にも休日は家事を一緒にやってもらうといいですよ」

【2】必要以上に仲よくしない

夫婦にとっていちばん大切なのは自分の家族です。
「義理の親とはしょせん他人同士なので、気が合わなければ無理に合わせず、ほどよい距離を保って。また、自分の親と仲よくしすぎるのも考えもの。夫より親優先になっていたら要注意!」

【3】もちつもたれつの関係を保つ

一方的に頼るばかりの関係は、ひずみが生じることに。
「子ども(親世代にとっては孫)の面倒を見るのが、親世代にとって負担になっているケースもあります。金銭的な援助を受ければ、その分干渉されても文句を言えないということも考慮に入れて」

【4】困ったことはため込まずに伝える

連絡なしに訪ねてくるなど、親の行動に困ったときはため込まないで。
「長く続く関係なので、ガマンのしすぎは禁物。言いたいことがあれば父や義父には直接的に、母や義母の場合、やんわり伝えるのが効果的。夫をとおして伝えるという手も」

【5】近所の人や親せきの前では親のことをほめる

親のことをほめる

家が近いと、行動や話したことがすぐ伝わってしまうといった息苦しい点もありますが、そこを逆手にとるのも良好な関係を築くコツ。
「近所の人や親せきなど、身近な人の前で親のことをほめれば、それが伝わって直接言うより喜ばれます」

【6】親には趣味をもたせる

過干渉な親はほかに楽しみがないため、子どものことに気持ちが集中しているということも。
「習い事や地域の活動など、興味のありそうな趣味を一緒に探してあげて。男性は勝負ごと、女性はおしゃべり仲間ができるような趣味がおすすめ」

【7】父や義父が来たらお手伝いを頼む

男親の無神経な行動に困るという声も多くありました。
「男性にはやんわりでは伝わりにくいので、やめてほしいことははっきり伝えて。連絡もなしによく来る場合はかまってほしいことが多いので、お手伝いを頼むと喜ばれますよ」

【8】「断る」ということも必要

断るということも必要

親に言われたことや、金銭の援助はなんでも受け入れるのではなく、断ることも大切。
「親が毎回お金を出して、ついついそれに甘えたまま、という関係だと、言いたいことがあったとき言えないことになります。常に対等な関係を心がけて」

これから近居を考えている人注目!知っておきたい近居支援サービス

近居を支援して若い世帯を呼び込もうと、各自治体ではさまざまなサービスを実施しています。引っ越し費用の助成から、賃貸料を割引するサービス、新居取得のための費用の負担、ポイントや毎月助成金がもらえる制度なども。制度の有無や内容、条件は自治体ごとに違うので、近居を考えている人は要チェックです。

<支援サービス例>
●住み替え費用助成引っ越し費用・不動産登記費用・仲介手数料・礼金などの一部を助成(兵庫県神戸市、広島県広島市)ほか
●不動産登記費用の一部を助成(千葉県習志野市)ほか
●その他協賛企業で使えるポイントを交付(東京都品川区)、親元近居助成金を支給(所得制限あり・東京都千代田区)ほか(※2017年度の支援例)