持続可能な社会をつくるための「SDGs」という言葉が注目されています。一見難しそうに感じますが、じつは私たちの暮らしのなかに取り入れられることがたくさんあります。
今回のテーマは「子どもの貧困」について。SDGsに詳しいフジテレビの木幡美子さんに、身近にできる工夫についてつづってもらいました。

公園で遊ぶ子ども
子どもたちを貧困から守るためにできること(※写真はイメージです)
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子どもたちを貧困から守ために、今すぐできること <今日からできる!暮らしのSDGs>

「だれ一人取り残さない」
これは、SDGsの基本理念ともいえる考え方です。

裏を返せば今、社会の中で取り残されている人がたくさんいるということです。ピンとこないという方もいらっしゃるかもしれませんが、「見えない」だけでじつは皆さんの周りにもたくさんいます。見た目にはわかりづらい障害を抱えた人、レズビアン・ゲイなどセクシュアル・マイノリティ、病を抱えた人など…そして、貧困もそのひとつです。

●日本の子どもの7人に1人が相対的貧困状態に

生きる上で必要最低限の生活ができない人(1日1.9米ドル=約200円未満で生活する人)が、世界に約7億3,600万人(2015年時点)います。これは「絶対的貧困」と言われ、いわゆる一般的にイメージされる貧困かもしれません。

子ども食堂の様子
2018年8月19日放送「フューチャーランナーズ」より、週1回こども食堂をオープンする「気まぐれ八百屋だんだん」の近藤博子さん

でも、それとは別に「相対的貧困」(※)というものがあり、これは衣食住が得られないわけではないけれど、その国や地域の生活水準と比較して大多数より貧しい状態のことです。日本においては、年間約127万円以下で暮らしている人、ということになり、全人口の15.4%います。また、子どもの貧困率(17歳以下)は13.5%と、じつに「7人に1人が貧困」と言われる状態です。(2019年厚労省国民生活基礎調査)これは、OECD加盟国中で最低水準です。

●コロナ禍で増える貧困の連鎖

とくに、ひとり親家庭のほぼ2人に1人(48.1%)が相対的貧困というデータがあり、「だれ一人取り残さない」どころか、ぜんぜん救えていません! それが日本の現状です。子どもの貧困は、教育や経験の格差につながり、将来にも大きく影響します。貧困の連鎖を止めないといけません。

子ども食堂の垂れ幕

以前SDGsのミニ番組「フューチャーランナーズ」で紹介した近藤博子さんは、「お母さんが病気のため、給食以外の食事はバナナ1本」というお子さんがいると聞き、状況を少しでも変えたいとワンコイン(どんなコインでもOK)でバランスのとれた食事がとれる「こども食堂」を始めました。

 

さらに、今、コロナ禍で仕事を失う親が増え、学校が休校になると給食でなんとか空腹をしのいでいた子たちが充分に食べられなくなるなど、もともと弱い立場にいた人たちが、ますます苦しい状況に追い込まれています。

 

とくに胸が痛むのは、このところの女性や若者の自殺の増加。また、家にいることが増えたせいか、DV(ドメスティックバイオレンス)相談が8万2,000件と過去最多になり、子どもの虐待の通告も10万6,900件を超えていること。どれも地域の見守り、声かけがなくなったことがひとつの原因かも…と考えると、私たちに無関係ではないのです。

【皆さんにもできること~子どもたちを守る編~】

・まわりに以下のような子どもがいたら気にしてあげて。

<いつも同じ服を着ている、歯の治療を受けていない、髪の毛を洗っていないように見える、無気力で自己肯定感がない、親がいつもいない、夜公園でひとりでいる、などをチェック>

・「大丈夫?」と声をかけてあげるだけでも助けになります。

・もし、虐待を疑うようなことがあったら189へ通告。

・貧困が原因でいじめにあうこともあります。
子供SOSダイヤル(24時間)0120−0−78310

・少しでも寄付をしてみる。 ※確定申告で寄付金控除の対象になればいくらか戻ってきます。

 

・あなたの家のそばにある「こども食堂」を検索してみて。
「お米が必要」など、どこでなにがたりないかをマークで紹介しているサイトもあります。

 

 

●今こそ「おせっかい」パワーの復活を!

 

こども食堂ネットワークサイト
全国のこども食堂と、必要とする支援が記載されている(こども食堂ネットワークサイトより)

そして、「見えない」現状をまずは、「見よう」と思ってみること。これがとても大事です。私は、SDGsの最大の敵は、無関心だと思っています。ここまで問題を悪化させたのも人間の無関心かもしれません。

こども食堂の店主と子ども
「人を思いやれる社会になってほしい」と語る近藤さん

私は最近、積極的に「おせっかい」を発動しています。わかったのは2つ、恥ずかしいより、助けたいが上回ればできます。やった後悔より、やらなかった後悔の方が大きいです。

おせっかいは、言い方を変えれば、だれかを思いやることですから、昔はよくいた近所のおばさんの“おせっかいパワー”を、今一度復活させることで、社会をよくすることができるかもしれません。

※相対的貧困=1人当たりの手取りの平均年収の中央値の、さらに半分以下で生活している人