家族が家にいる時間が増えると、どうしても散らかってしまうリビングダイニング。片づかないと悩んでいる人は多いのではないでしょうか。それは、部屋と家具のバランス、収納の量に問題があるから!解決策はズバリ0.5畳の収納スペースです。『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』の著者で、建築家のしかまのりこさんが、間取り図面や3Dを使ってわかりやすく解説します。マンション選びや家づくりを考えている人はもちろん、「今暮らしている住まいでなんとかしたい」と考えている人にも参考になります。
すべての画像を見る(全6枚)目次:
収納を考えず部屋の広さで家具を選ぶと、狭くて動きにくい部屋になる!部屋に収納がない場合は、動線上のデッドスペースを有効活用!既製品の収納家具は、収納量やスペースの有効活用に難ありDIYでつくれれば棚の位置も自由自在。収納量を多く取れる!お金はかかるが家具をオーダーすれば、見栄えもよく有効活用が可能!収納を考えず部屋の広さで家具を選ぶと、狭くて動きにくい部屋になる!
間取りAと、間取りBは、どちらも広さ78㎡3LDKのものです。ピンクで表示しているものは、押入れやリネン庫など、あらかじめ部屋に用意されているつくりつけの収納です。
あなたならどちらの部屋を借りたい(または購入したい)と思いますか?
収納のないリビングダイニングだと、家具を配置する必要が!
間取りAは、リビングダイニングが10畳もあって広そうです。しかし、あらかじめ部屋に用意されている、つくりつけの収納がありません。そのため、片づきやすい部屋にするためには、チェストやシェルフなど、収納家具を購入して配置する必要が出てきます。
ですから、この部屋は収納家具のぶん狭くなりますので、実際には「LD10畳」は「LD9.5畳」になります。
そしてダイニングテーブルやソファを購入するときは、収納家具を置く場所を差し引いた「LD9.5畳」に配置することを考えなくてはいけません。
しかし、多くの人は、間取り図にある「LD10畳」としてダイニングテーブルやソファを選んでしまいます。そのため、ダイニングテーブルやソファが、収納家具を配置した実際の部屋に対して大きめのサイズになり、狭くて動きにくい部屋になってしまうのです。
あらかじめ収納が用意されていると、収納量も多く使い勝手もいい
一方、間取りBには、リビングダイニングにあらかじめ部屋に用意されているつくりつけの収納があります。床から天井までの壁面収納なので、市販の収納家具より収納量も多くなります。部屋が片づきやすくなる頼もしい収納といえるでしょう。
しかし、このつくりつけ収納があるため、リビングダイニングの広さは狭くなり、間取り図には「LD9.5畳」と狭く表記されてしまいます。そのため、間取り図を見た「LD10畳」と表記された間取りAよりも、狭い印象を受けてしまいます。
入居後、収納家具を配置した場合、実際には間取りAも間取りBも広さは同じです。
そして間取りAに既製品の収納家具を置くよりも、間取りBのようにあらかじめ部屋に用意された、つくりつけ収納があるほうが、収納量が多いため、片づきやすい部屋になります。
また、収納家具がない部屋の場合は、収納家具を配置したあとの広さに見合うダイニングテーブルやソファを購入することが重要。そうすることで家具が大きすぎて部屋が狭くなるという問題を防げます。
部屋に収納がない場合は、動線上のデッドスペースを有効活用!
すでに住んでいる部屋に、収納がない場合は、どこにどのようにして収納をつくればよいのでしょうか?
おすすめの場所は、以下の場所です。
- 柱やパイプシャフトなどのデッドスペース
- 人が動く動線上
柱やパイプシャフトなどのデッドスペースは、使われていないことが多く収納で有効活用したい場所です。そして、人が動く動線上に収納家具を配置することで、収納作業がラクになります。
また、収納のつくり方は以下の3つです。
- 既製品の収納家具を置く
- ラブリコやディアウォールなどDIYグッズで、ラクに収納をつくりつけ
- 家具屋さんにオ―ダー家具の作成を依頼する
では、それぞれの収納について、メリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
既製品の収納家具は、収納量やスペースの有効活用に難あり
部屋に収納がない場合の対処法として、いちばん手軽なものは、既製品の収納家具を置くことです。
上図は、柱とパイプシャフトの間のデッドスペースに、ニトリのカラーボックスに収納ケースを使用して、収納スペースをつくった例です。
メリットは、値段が安く簡単に設置できること、オープン収納なので出し入れがしやすいことなどです。
デメリットは、高さがないため収納量が少ないこと、扉がないためホコリなどがたまりやすいこと、既製品のため横幅に余白ができてしまい、スペースがフルに有効活用できないことなどがあります。
DIYでつくれれば棚の位置も自由自在。収納量を多く取れる!
賃貸など、壁などを傷つけられない場合で、収納量を確保したい場合は、ラブリコやディアウォールなどDIYで、収納を手軽につくりつけます。
上図は、柱とパイプシャフトの間のデッドスペースに、突っ張り棒の原理を応用したDIYアイテムのラブリコやディアウォールを使って棚を設置。収納ケースを置いて、収納スペースをつくった例です。
メリットとしては、横幅と高さいっぱい収納スペースとして使えるため収納量が多いこと、オープン収納なので出し入れがしやすいこと、棚の位置を自由に設定でき、収納物や収納量をコントロールすることができることなどです。
デメリットとしては、DIYの技術が必要なため手軽ではないこと、オープン収納なので収納が丸見えになること、扉がないためホコリなどがたまりやすいことなどがあります。
お金はかかるが家具をオーダーすれば、見栄えもよく有効活用が可能!
分譲など住まいをお持ちの場合で、収納量を確保したい場合は、床から天井までの空間を有効活用したつくりつけ収納がおすすめです。
上図は、柱とパイプシャフトの間のデッドスペースに、家具屋さんにオーダーして、造作の収納スペースをつくった例です。
横幅と高さめいっぱい収納スペースとして使えるため収納量が多いこと、扉つきのクローズ収納なのでホコリがたまりにくく掃除が簡単です。また、棚の位置を調整できるダボ(接合面の両方に穴をあけて差し込む小片のこと)つきにすれば、収納物や収納量をコントロールすることができます。
またつくりつけのため、地震時に転倒しにくく、中身が飛び出しにくいことも、大きなメリット。
デメリットとしては、扉付きのクローズ収納なので出し入れがワンアクションではいかないこと、オーダー家具のため値段が高めになること、などです。
ものが多く部屋が散らかりやすい人は、まず収納家具を配置することを考えてください。そして余った空間にダイニングテーブルやソファを配置すると、部屋が狭くならずに、また収納量が増え、片づけやすい部屋になります。
●教えてくれた人/しかまのりこさん
COLLINO一級建築士事務所主宰。一級建築士、300軒以上のリビング・寝室・子ども部屋の模様替えを行い、模様替えのスペシャリストとしてTVや雑誌でも活躍。近著『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社刊)では、リビングが片付かない「リビング崩壊」について詳しく解説している