コロナの影響で在宅時間が増加。家族みんなでキッチンを使う機会が増えています。テレワークや自宅学習の合間に食事の準備やあと片づけ…。そうした作業をやりやすくするなら、クローズタイプより、リビングやダイニングと連続するオープンなキッチンが向いています。でも、オープンともなると、片づけに気を使いそうという心配も。「不安を解消するためにも、パントリーを設置することをおすすめしますよ」そう語るのは、建築家の新井崇文さん。自身が設計した事例から、機能的なパントリーをタイプ別に紹介してくれました。引き出し式のパントリーも登場しますよ!
すべての画像を見る(全18枚)「キッチン隣接タイプ」は大容量が確保できるパントリー
パントリーとは食料品や調理器具・什器等をストックする収納スペースのこと。このパントリーの形と収納量が住まい手の生活にあっていると、台所仕事の効率はぐっとアップします。そのとき使うものだけをキッチンへ持ち出して調理作業を。終わったらまたパントリーへしまえ込めばいいので、コンパクトなキッチンでも、スッキリと片づきます。
パントリーのあり方はおもに2つあります。
ひとつは「キッチンに隣接して小部屋を設ける」タイプ。収納量を多く確保しやすいため、家族の所持品や食材ストック量が多い場合にも適しています。このお家ではキッチンの奥に2畳サイズのパントリーがあります。
パントリーの左側は壁一面の収納棚。ここは一般的な1間(壁芯で約180cm)幅のスペースです。市販のIKEA製の収納棚がピッタリはまり、ローコストで大容量の収納棚が実現できました。
パントリー右側は小幅の収納棚。こちらはテレワークなどに活用するワークスペースに通り抜ける通路を兼ねていることから、収納棚の幅は約60cmとなりました。市販でちょうどサイズの棚が見つからなかったので、大工工事で造りつけの可動棚を設置。
パントリーの奥には勝手口扉があり、ゴミ出しなどにも重宝します。
パントリーの奥から見返すと、右にキッチン、左にワークスペースが見えます。
一般的には、パントリーが行き止まりとなる間取りが多いでしょう。でも、この例のように、回遊動線の一部になったパントリーは、アクセスしやすいうえに、使いやすくもなります。
「キッチンの一部分に設置するタイプ」は、間取りに柔軟に対応可
もうひとつのパントリーのあり方は「キッチンの一部分に設置する」タイプです。この例では、キッチン奥側の見えない位置(冷蔵庫の向い側)にパントリー棚が設けられています。
パントリー棚は1間(壁芯で約180cm)幅。奥行は浅めの30cmとし、オープン棚にして収納物がひと目でわかるように。使いやすさを優先しました。パントリー棚はダイニングから直接見えないので、たとえ雑然としていても気になりません。
こちらの例では、キッチンの一部にパントリーを設けていますが、ダイニングからは見えない位置に設けています。
キッチンの手前側にはシンク・コンロ台があり、奥側には冷蔵庫と造り付けのカップボード収納があります。カップボードのカウンターがそのまま左側に伸びていって、ワークスペースのデスクに連続しています。
このワークスペースのデスクの背面にパントリー棚(ロールスクリーンで仕切られている部分)があります。
使用時はロールスクリーンを上げっぱなしにしていても、ダイニングからは直接見えないのでスッキリ。
「ワゴンタイプ」のパントリーはスペースが限られている場合の奥の手
改修などで間取りの制約があり、パントリーを確保するのが難しい場合もあります。
このお家は、個室型キッチンからLDK一体型キッチンに間取り改修したケースです。
ダイニングと一体の開放感あるキッチンが実現できましたが、既存のお家の形状の制約から、パントリーの確保が難しい状況でした。
そこで目をつけたのが、コンロの裏側に生じたわずか1尺半(約45cm)幅のスペース。ここにジャスト寸法で設計したパントリーワゴンを大工さんにつくってもらいました。
コンロの奥、勝手口扉の右側にワゴンの引手(縦型のバー)が見えます。上部はオープン棚を2段設けています。ワゴンのサイズが大きくなりすぎると重量が増え、ワゴンの出し入れがしづらくなるからです。
ワゴンを引き出すと、5段の収納が現れます。幅が狭く、奥行きの深い収納スペースですが、このようにワゴンにして引き出すと横から出し入れすることができ、収納物も一目瞭然。使いやすいパントリーができます。
パントリーワゴンには各段にバーを設け、収納物が振り落とされないよう配慮しています。
こまごまとしたものは直接パントリーワゴンに載せるのではなく、半透明のボックスにまとめてから載せるようにしています。
このパントリーワゴンは、「使いやすいです!」と住人にも大好評。収納にひと工夫あると、暮らしも家事もちょっと楽しくなるものですね。