リーズナブルなうえにお隣さんとの温かい交流が魅力の団地リノベが人気です。今回は、団地リノベを計画する際に検討したい、コストダウンのポイントを紹介。教えてくれたのは、自身の住まいを団地リノベしたという建築家の小牧徹さんです。「話しだしたら止まらない(笑)」という団地暮らしの魅力も、あわせて教えてくれました。
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築51年の団地リノベはスケルトンで自由度アップポイント1:既存キッチンを利用するポイント2:壁量を最小限とするポイント3:手頃な団地を購入し、物件価格を抑える団地リノベのメリットを教えてください!築51年の団地リノベはスケルトンで自由度アップ
富士山の見える部屋が気に入り、築51年の団地の最上階をリノベした小牧さん。「団地は昭和レトロでかわいい」という感覚を大事にし、既存のキッチンを残す、壁量を最小限にするといった大胆な手法でコストカットしました。
間取り(リノベーション前後)
既存は典型的な「田の字型」の間取り。和室をフローリングにし、廊下の壁を一部撤去してLDKと寝室をひと続きに。間仕切りはできるだけ設けず、コスト削減。ファブリックやヴィンテージ家具を調和させました(2015年7月竣工 神奈川県横浜市)。
小牧さん宅の工事費の内訳
ポイント1:既存キッチンを利用する
前の所有者がリフォームしていたこともあり、天板とシンク、収納の状態がよかったので、そのまま利用することに。圧迫感のあるつり戸棚を撤去し、質感のあるブラウンのタイルを貼ることで一新。シンク下の収納扉の面材は色を茶色から白に変え、取っ手をつけ替えてモダンな印象に変えました。
さらに、魚焼きグリルは必要ないので撤去して、そのスペースを引き出し収納として利用。新しく、ガスコンロと水栓、プロペラ換気扇を導入しました。「レンジフードよりもプロペラ換気扇のほうが低コストで排気能力が高いと思います」と小牧さん。水栓には、昔ながらのガス瞬間湯沸かし器を接続しています。
レンジフードを排除したことですっきりとした空間になりました。コンパクトな湯沸かし器でレトロ感もアップ。
ポイント2:壁量を最小限とする
スケルトンにして必要最小限の壁量にすることで、コストを削減。窓の多い物件のため「広々として風通しがいい」と小牧さん。カウンターや棚、クローゼットの扉、寝室とLDKの間仕切りなどをなくし、可変性の高いお気に入りのヴィンテージ家具やファブリックで代用。季節ごとに気軽に模様替えを楽しんでいます。
より可変性を高めるには、ダイニングテーブルやソファなどの大型家具を小ぶりのものでそろえるのが効果的。「模様替えは新たな景色の発見ができるのでおすすめです」。
ポイント3:手頃な団地を購入し、物件価格を抑える
小牧さん宅の物件価格はなんと400万円。「リノベ込みで1000万円程度で家を持てるから、2軒購入して二世帯近居という選択肢もあるし、若い人のスターターホームとしてもおすすめ」。もともと手頃な価格なので煩わしい値下げ交渉も必要なく、とんとん拍子でリノベーションへとつなげることができました。
築51年、エレベーターのない5階建ての最上階ですが、「晴れた日には富士山が見えるところ」が気に入り即購入したそう。棟と棟の間が広く、緑も多いから、窓からの景色を1年中楽しんでいます。
団地リノベのメリットを教えてください!
「DANCHI活性プロジェクト」「団地魅力写真展」など、建築家として団地の魅力を広める活動に力を入れている小牧さん。新築マンションにはない団地リノベの魅力を教えてもらいました。
Q.団地リノベにおすすめの床材、壁材って?
A.肌触りのよい無垢のフローリングと、漆喰&珪藻土の壁で年中快適です
わが家の床材は、幅広の無垢フローリング。年輪の凹凸を際立たせる浮きつくり仕上げで、木肌が見えるホワイト塗装にしました。肌触りがよく、部屋全体がやさしい雰囲気になる無垢材はおすすめですね。
ただ、防音床下地材を入れているので、一般の合板防音床よりは高コスト。壁は漆喰&珪藻土なので、調湿効果でジメジメしません。冬場の結露も少なくなった気がします。
Q.団地がおすすめの理由を知りたい!
A.団地は可能性の宝庫!話し出すと止まりません(笑)
住宅ローンなしで購入できるなど、リーズナブルな点もいいですが、環境のよさが最大の魅力。緑が多く、敷地にゆとりがあり、随所に公園やコミュニティスペースがあります。
高齢化が進んでいますが、いつもだれかが子どもたちを見守っているような温かさが。多世代が交流できるイベントも多く、子育てしやすいと思います。時を経たことで醸し出される落ち着いた雰囲気もいいですよね。
Q.エレベーターのない団地の高層階って、上り下りが大変?
A.大変なときもあります(笑)。でも、近所の人とのコミュニケーションの場にも
わが家は5階建ての最上階。重い荷物を持っているときや、体調が悪いときは大変だなと思うこともありますが、いい運動になっていますよ(笑)。
同じ階の向かいに妻の友人一家が住んでいるのですが、小さな子どもが一生懸命階段を上っている姿はかわいい。近所のおじいさんやおばあさんが声をかけてくれることもあり、すてきな交流の場になっていると感じます。
Q.おすすめのファブリック、教えてください!
A.リネンもすてきですが、インド綿の風合いもいいですよ
リネンのナチュラルな風合い、使い込むほどに馴染んでいく感じ、間違いないですよね。でも、選ぶものによっては高価なものもあり、カーテンや間仕切りとしてたっぷり使うにはやや値が張ります。その点、インド綿は低価格で、色も豊富。さまざまな色や柄の布を用意して、ぜいたくに使うことも可能です。質感もやわらかくて、部屋の雰囲気をやさしくしてくれます。
●教えてくれた人/小牧徹さん(ピーズ・サプライ)
シンプルで素朴な空間づくり、既存のよさや古材を生かした設計を得意とし、注文住宅からリノベーションまで幅広く手掛けている。横浜市保土ケ谷区にショールーム兼オフィスがある。妻とふたり暮らし。
撮影/山田耕司 ※情報は「リライフプラスvol.37」取材時のものです