家づくりの土地探し。ひとまず、気になる物件を見つけたものの、「夫婦で意見が分かれる」「尻込みして次に進めない」…。そんな膠着状態に陥ったら、どうすればいいのでしょう。不動産仲介や建築不動産コンサルティングをしている藤谷幹さんのアドバイスを交えて、疑問に答えます。

土地探しの優先順位
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目次:

Q:夫婦で優先したいことが異なる。理想の土地の基準をまとめるには?Q:いざ理想の土地と出会っても尻込みしてしまう。一歩踏み出すには?

Q:夫婦で優先したいことが異なる。理想の土地の基準をまとめるには?

A:両極端な物件を見比べて条件を整理してみましょう

夫は「通勤がラクで、とにかく便利な場所に住みたい」と利便性重視だけど、妻は「ゆったりした環境で子育てしたい」と郊外の広い自宅を希望…。こんなふうに夫婦間でも理想の家に求める条件が異なり、土地探しの優先順位に迷うことがあります。

こうしたときおすすめなのは、予算内で購入できる両極端な条件の土地を見比べてみること。例えば、「駅近くの狭い土地」と「駅から徒歩20分かかるけれど広さは十分の住宅地」。あるいは市街地の物件と郊外の物件といったように、現地見学をするエリアそのものの条件を変えてみるのも手だと藤原さんはいいます。

「予算に見合うという点だけが共通している、まったく異なる物件を見たうえで、『どの家がいちばん、自分たちの気持ちにしっくりくるか』を考えると、優先順位が見えてきます」

例えば、「駅から近ければ狭くてもいいと考えていたけれど、さすがにここまで狭いと思ってなかった」、「広ければ遠くても我慢できると思っていたけれど、子どもを連れてこの距離を毎日歩くのはつらそう」など、より具体的に新生活をイメージできると、自分たちにとっての優先順位が浮かび上がってくることもあります。

「事前に、夫婦でお金について整理しておくことも大切。私たちは、土地探しを始める前にライフプランシートをつくります。教育費や老後資金など、これから人生にかかるお金を試算したうえで、土地や家にかけられるお金を算出し、次に土地探しという順番なのです」

お金のことを話すうちに、自分たちが重視したいことがはっきりするケースもあるそう。

Q:いざ理想の土地と出会っても尻込みしてしまう。一歩踏み出すには?

A:「申し込み」を経験することが最初の一歩です

理想の家を手に入れた家族

ようやく気に入った土地に出会えたけれど、いざとなると「本当にここでいいのか」と迷いが生じ、決断できない…。そんな悩みは「土地探しあるある」の1つだと言います。焦りは禁物ですが、あまりに決断に時間がかかると、あとからやってきたほかの人に目当ての土地を購入されてしまうというジレンマも。

「土地選びは焦らず、じっくり考え、こうと決めたら迅速に動くのが鉄則です。とはいえ、何千万円もする買い物ですから、ためらうのも当然のこと。なかなか決められないという人には『途中でキャンセルしても構わないので申し込み手続きをして、事前審査だけ通してみましょう』と提案しています」

ここでいう申し込み手続きとは、「買いたい」という意思表示。まずは申し込み、そこから住宅ローンの事前審査のステップに進みます。事前審査を受けると、借入可能額が具体的に分かります。実際にはその土地を購入しなかったとしても、次の土地を購入するときの金額の目安がつかみやすくなります。

「一度申し込み手続きをすることで、心理的なハードルはグッと下がります。また、事前審査を終えることで住宅ローンの借入可能額など具体的な数字が見えるので、次からは売り主さんとのやりとりもしやすくなりますよ」

こうした下準備を整えておくことで、本当に買いたい土地に巡り合ったときにパッと動けるようになるとか。同じ条件のものが再び現れることがないのが土地探し。慎重さと迅速さを両立するためにも、まずは申し込み手続きをするという手法を覚えておきたいものです。

●教えてくれた人/藤谷 幹さん
創造系不動産所属。建築家とタッグを組み、「建築と不動産のあいだ」に焦点を当て、不動産やファイナンスをサポートする

イラスト/カツヤマケイコ
写真/PIXTA