インテリアショップやホームセンターなどで売られている、いわゆる量産品の家具とオーダーメイドの家具は、いったいどんなところが違うのでしょうか。それぞれの家具の良いところや、家具との付き合い方について、家具工房「フリーハンドイマイ」の代表、今井大輔さんに聞きました。

ナラ柾目の3連の食器棚とダイニングテーブル
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椅子などの脚物家具はオーダーだとどうしても高額にオーダー家具は目に見えない部分も一緒につくれるのが魅力ちょうど良い家具にお店で巡り合えなければオーダーという選択肢も

椅子などの脚物家具はオーダーだとどうしても高額に

リビング側から見たナラ柾目の3連の食器棚とダイニングテーブル

こちらの写真は、ナラ柾目の3連の食器棚(税別69万円・製作費、塗装費込み)とダイニングテーブル(税別26万円・製作費、塗装費込み)を納品したお宅です。

お店で売られている家具と、私たちがつくるオーダー家具との違いのいちばん大きな違いはまず金額です。

たとえば、インテリアショップなどに行くと、使いやすくてデザインの良いダイニングチェアが数千円から数万円で販売されています。一方私たちがダイニングチェアを1脚だけつくるとなると、倍以上の金額がかかってしまうこともあります。

実は、ダイニングテーブルなどの大きな脚物家具(椅子、テーブル、ベッドなどの脚のある家具のこと。ちなみに食器棚や収納家具は箱物家具といいます)に比べて、小ぶりな椅子などのほうが制作工程がずっとずっと多いのです。

とくに椅子は、背もたれに曲線を取り入れたデザインの場合は型取りと成形が必要になり、座面に布や皮などを使う場合はより工程が複雑になり、時間と手間がかかります。

では、メーカー品の椅子はどうしてコストを抑えられるかというと、当然ですが同じ形やサイズのものを大量に生産することでコストを抑えているからです。

オーダー家具は目に見えない部分も一緒につくれるのが魅力

ガラスとブナのラウンドテーブルとブナのラウンジチェア

こちらはガラスとブナのラウンドテーブル(税別72万円・製作費、塗装費込み)、ブナのラウンジチェア(1脚につ税別き30万円・製作費、塗装費込み)などを納品したお宅です。決して安くはない金額です。

家具をオーダーするメリットは、曖昧な表現ですが、「その人に合わせた形をつくることができること」これに尽きると思っています。
「その人に合う」とは、使う人の体形に合うシルエットや、暮らしに自然に溶け込む佇まい、気持ちが華やいだり安らいだりするデザインなど、様々な思いに応える、ということです。

メーカー品は、量産されるまでに試作や試験を繰り返し、様々な意見をフィードバックしながらつくられていますので、私たちのような小さな工房では知りえない素材や知識が盛り込まれてつくられています。

また、メーカー品は便利な機能に特化したもの、デザインに特化したもの、価格に特化したものなど、ある程度カテゴリー分けされています。だから金額もわかりやすいし、その時々のライフスタイルに合ったものを選びやすいのです。

オーダーの場合はそういうカテゴリーがごちゃ混ぜになっていて、「機能」や「デザイン」という引き出しからその人の好むものを取り出して、話し合いを重ねながらつくり上げていきます。

ですので、オーダーで家具をつくるということは、家具そのものをつくるだけではなく、使う人の暮らしの一助になるための気配りのような、目に見えない部分も一緒につくっていると思っています。

ちょうど良い家具にお店で巡り合えなければオーダーという選択肢も

今井さんの自宅で使っているシナとウールのソファ

こちらは私の自宅で使っているシナとウールのソファ(税別48万円・製作費、塗装費込み)です。毎日、私よりも娘たちが長く使ってくれているからか、クッションも馴染んで当たりが柔らかくくたびれてきました。

オーダー家具であれ量産品であれ、家具はあくまでも暮らしの道具です。使い込むことでくたびれる、そういう使い方が美しい。その人がその時に、何を重視して使いたいかという気持ちと、その家具の形がうまく合っていれば、量産品でもオーダー家具でもどちらでも良いと私は思うのです。

例えばあるお客様のお宅に打ち合わせに伺ったとき、ふと今打ち合わせをしているテーブルの話になったことがありました。

「ああ、このテーブルは、私が一人暮らしを始めた時に使い始めて、結婚してもこうしてそのまま使い続けているのです。当時は余裕もなかったから量販店で買ったのですが、いつの間にかこんなに長く使っていたなって気付いたのです」と話してくれました。

よく見ると傷だらけだし、お子さんのいたずら書きを消した後がうっすら白くなっていたり、角に何かぶつけたらしい凹みがあったり、食器のシミがところどころについていたり。でも、手触りはツルっとしている。

こういう使い方をされている家具に出会うことがあります。美しいなって思うのです。こういう使いかたをされたら本望だろうなと。

自分が必要と感じた時にちょうど良い家具にお店で巡り合えたらそれが一番良いのでしょうけれど、もし巡り合わなければオーダーも検討してみる、という選択肢をもっと気軽に取り入れてもらえるとうれしいなあと思うのです。

※価格は制作当時のものです。現在の価格とは異なる場合があります

●教えてくれた人/今井大輔さん
暮らしに寄り添うオーダーキッチンやオーダー家具を手掛ける家具工房「フリーハンドイマイ」代表。神奈川県高座郡に工房とショールームがある