家づくりは長い工程。その流れの中でお金の支払いどきは数え切れないほどあります。まずはじめに、いつ、どんな支払いがあるのか、おおまかにでも把握しておくと安心です。家づくりのスケジュールに沿って、出費のタイミングをチェックしていきましょう。今回は、建築家や設計事務所に依頼して、注文住宅を建てることを前提に説明していきます。
家づくりのスタートから実施設計までの期間
すべての画像を見る(全4枚)まずは建てたい家のイメージをふくらませながら、依頼先を探したり、情報を集めることから始まります。出費のあるタイミングにも注目してみましょう。
情報収集・依頼先検討
雑誌やネットなどで情報収集。希望の設計者(建築家)が見つかったらアポを取り面談を。この時点では料金は発生しません。
↓
依頼先を選ぶ<出費が発生!>
依頼先を絞り込み、基本プランとおおまかな工事費を提示してもらいます。プラン作成に10万円など支払いが必要な場合も。
↓
借入先の検討
なるべく早い段階で借入先の検討を。金融機関に足を運び、住宅ローンの相談をしましょう。
↓
設計業務委託契約<出費が発生!>
正式に依頼を決め、設計者に1回目の設計料を支払います(25%程度。以降4~ 5回に分けて支払います)。
<Point>建築家に正式に設計を委託する契約。支払いのタイミングなど重要事項を確認。 ↓
敷地の確認・測量<出費が発生!>
敷地の測量図がない場合に必要。土地の形状や測量内容で費用は異なります。
↓
地盤調査<出費が発生!>
たとえばスウェーデン式サウンディング法の場合、費用は5万~ 10万円。
↓
地盤改良<出費が発生!>
軟弱地盤だった場合に行います。「表層地盤改良」「柱状改良」ともに70万~100万円ほどかかります。もちろん、土地の面積によって異なります。
↓
プラン打ち合わせ
↓
基本設計<出費が発生!>
建物の概要を決定。基本設計完了時に2回目の設計料(25%程度)を支払うのが一般的。
↓
検討・再打ち合わせ
↓
実施設計<出費が発生!>
正式な設計図が提示されます。完了時に3回目の設計料(25%程度)を支払うのが一般的。
ローンの申請から解体までの期間
プランが進んでくると、着工に向けていろいろな準備が必要に。大きな支払いに備えて住宅ローンの申し込みも行います。
ローンの申請<出費が発生!>
金融機関の窓口で正式にローンの申請を行います。申請料は1万~ 10万円。必要に応じ、分割支払いのタイミングも相談しましょう。
<Check!>ローン申請のときに「いつ」「いくら」必要か具体的に依頼しよう
家が建つまでは、着工時、上棟時をはじめ支払いの機会が多いもの。ところが、頼みとなる融資は、担保が必要なので、家が建って所有権が建主に移ってから実行となります。そこでローンの申請時には、分割支払いの相談・依頼を忘れずに行いましょう。かつては「つなぎ融資」が必須でしたが、最近では柔軟に対応する金融機関が増えています。
↓
建築確認申請<出費が発生!>
申請手数料が1万円前後。また代行業務に20万円前後かかります。設計者によって設計料に含む・別途と分かれるので確認を。
↓
確認済証の交付
↓
工事費見積もり
<Point>一般的には「相見積もり」でより妥当な金額の施工業者を選びます。 ↓
施工業者決定~工事請負契約<出費が発生!>
契約締結後、初回の工事費(25%程度)を支払うのが一般的。
<Check!>ハウスメーカーや工務店で建てた場合は?
ハウスメーカーで家を建てた場合、工事費は、請負契約時に10%、着工時に20%、上棟時に40%、引き渡し時に30%支払うという方法が主流。また工務店の場合は、契約時、中間時、引き渡し時に支払うのが一般的ですが、近年、工事の進捗状況に合わせて払う「出来高払い」も増加。建主にとってはより安全な支払い方法といえます。
↓
近隣に挨拶<出費が発生!>
タオルなどの日用品を持参し、両隣・向かい・後ろ・斜めに位置する家に挨拶します。
↓
仮住まいへの引っ越し(建て替えの場合)<出費が発生!>
引っ越し代をはじめ、敷金・礼金・家賃などが必要。家賃は念のため1 か月分多く用意を。
↓
解体(建て替えの場合)<出費が発生!>
建て替えの際、解体・処分費がかかります。木造住宅の場合、1坪あたり3万円が目安。
地鎮祭から完了検査までの期間
いよいよ工事が始まります。更地だった敷地に家の骨格ができあがっていくと、感慨もひとしおです。
地鎮祭<出費が発生!>
着工前に、工事や建物の安全祈願を行う儀式。初穂料(神主へのお礼)に3万円程度、供え物に2万円程度かかります。
↓
水道加入金(必要時)<出費が発生!>
地域によっては、新設の場合加入金が必要になることも。標準規模の住宅で4万~ 20万円。
↓
基礎工事
↓
上棟・上棟式<出費が発生!>
建物の骨組みの完成時に行うのが上棟式。式後、工事の無事完了と工事関係者へのねぎらいを込めて行う食事会が直会(なおらい)。最近では省略するケースもありますが、両方行うとご祝儀と飲食代で10万~ 20万円ほど必要に。
↓
中間金<出費が発生!>
上棟の時期に支払う2回目の工事費。ここまでで総工事費の50%前後が支払い済みに。また4回目の設計料を支払い、ここまでで設計料の約90%が支払い済みになります。
↓
中間検査(現場検査)
<Point>基準法に基づき役所が行う検査。フラット35 を利用する場合は必ず行われます。 ↓
外装工事<出費が発生!>
外装工事の完了時に3回目の工事費を支払います。ここまでで約75%支払い済みに。
↓
内部工事
↓
外構工事
↓
完了検査(役所検査)
<Point>役所に完了検査申請書を提出。交付される検査済証は、フラット35や登記などの手続きに必要になります。
竣工から、新居での暮らし開始までの期間
完成から入居までは、引っ越しをはじめ、各種手続きなどやるべきこともいろいろ。住宅ローンの返済もスタートします。
竣工<出費が発生!>
最終工事費(残金と追加分の合計)および最終設計料(残金と追加分の合計)を支払います。
↓
竣工検査
↓
引き渡し
<Point>万一不具合があった場合、業者の責任で手直しし、確認後引き渡しとなります。 ↓
登記~ローン正式契約<出費が発生!>
住宅の所有権を自分名義にする所有権保存登記、建物の概要を示す表示登記を依頼。またローンを組む際、抵当権設定登記も必要に(所有権と抵当権にかかる登録免許税は、2022年3月31日まで下記のように軽減)。なおローン契約時には、印紙税、事務手数料、保証料、各種保険料などが必要。
・所有権保存登記…登録免許税(評価額× 0.4%→ 0.15%※に軽減)+司法書士の報酬が5万円前後
・建物表示登記…土地家屋調査士の報酬が10万円前後
・抵当権設定登記…登録免許税(借入額× 0.4%→ 0.1%に軽減)+司法書士の報酬が5万円前後
※特定認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合は0.1%
↓
ローン融資受け取り
融資は、所有権保存登記後に実行されるのが原則です。
<Check!>住宅ローンは「家の完成時」の金利が適用される!
よく間違えやすいのですが、住宅ローンの適用金利は、ローンの申し込み時ではなく、家が完成して引き渡し時の金利となります。完成間近な建売住宅ならともかく、建築家に依頼した場合は、設計~工事~家が完成するまで1年、1年半かかるのはザラ。工事中に金利上昇が生じた場合は、申し込み時の金利では借りられないことを頭に入れておきましょう。
↓
引っ越し・入居<出費が発生!>
引っ越し費用は4人家族の場合、25万円前後を予定しておきましょう。
↓
近隣への挨拶<出費が発生!>
なるべく引っ越し当日に、粗品を持って近隣に挨拶。工事前の挨拶と同じ範囲の家を訪ねます。
↓
新居での暮らし開始<出費が発生!>
カーテン、エアコン、家具などは必須。こうした耐久消費財用に200万円前後の出費を用意しましょう。
<Point>家のために有り金をはたいてしまうのはNG。余裕を持って200万円程度手元に残しておくこと。さらに住宅取得の翌年には不動産取得税、以後毎年固定資産税・都市計画税がかかることも忘れずに。
<Check!>住宅ローンの返済が始まったら…
ローンの返済が始まったら、着実に返しつつ、少しずつでも、繰り上げ返済のための貯蓄に励みましょう。また、返済していくうちに経済状況が変化してもっと金利の低いローンが登場したら…。最低10年以上の固定金利タイプで、今借りているローンより金利が0.5%以上低ければ、借り換えを考えるのもアリ!です。
大きなお金がかかる家づくりですが、どの段階で支払いが必要なのか、事前に知っていれば余裕が持てるはず。いざというときに慌てずにすむように、スケジュールも資金面も、ゆとりをもって臨みましょう。
●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する
写真/PIXTA