ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている

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。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第37回は、いつのまにかシニア期に突入していた犬との、夏恒例の水遊びについて。

犬の毛並みからも夏がすでに始まっている

ある夜、老犬介護のテレビ番組がやっていて、つい目が留まった。とは言え犬にはまだ先の話かなんて思っていたら「犬種による個体差はあるが、一つの目安としては7歳からがシニア期」というナレーションが流れた。犬は7歳2か月である。いつのまにやらシニアチームに加入していた。

プールに犬
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しかし近頃の犬の様子は家族のあいだでも話題になっていた。食欲アリ、便通ヨシ、散歩も依然大好き。元気だし、どことは言えんが、なにか変わった。

先日プールをしたときも、勢いよく飛び込んだでいってボール遊びをしていたが、例年よりも早くに日陰で見ていた母の隣に腰を降ろした。私の勘違いでなければ、好奇心の強さは変わらないが、遊ぶ加減は変わった。

犬を拭く様子
クルマに犬

さて、ちかちかと朝陽が眩しい日曜日、早起きをして母の運転で川に向かった。車内で妹に“7歳からシニア”の話をしたところ「もしも犬が段差を上がるのキツくなったら、スローブにしよなぁ」と提案してくれたので、「もちろん。家の段差すべてスローブにしよう!」と即答した。家の持ち主は母と私は思っているのだが、母も「せやなぁ」と笑いながらも、真剣に頷いてくれた。

おやつを食べようとする犬
持ち物①犬のおやつ※もちろん水分も。
ビート板と犬
持ち物②ビート板

人がいなくて、平たいほとりに穏やかな流れの穴場を発見した。犬が1歳の夏からもう川遊び6年目にも関わらず、行き場所がいつも行き当たりばったりで、そろそろここという基地がほしいとも車中で話していたが、いい基地になりそうである。

妹と犬は先頭をぐんぐんきって、川の中に入っていった。一歩遅れて私も川に入ると、すべすべと水が皮膚に触れては抜けていく感覚がとてもうれしい。昨夏ぶり。

泳ぐ犬とそれを見る人
水に入っている犬の脚

母はほとりから眺めて、口元を綻ばせていた。母が一緒になって川に入っていたのは、1歳の犬が川デビューをした一夏だけであった。

ほとり
ほとりから、母撮影

川でもプールでも水遊びとなると、妹は犬に見せるように水面をたかくたかく上に向かって掬い上げる。するとそのすぐあとを犬は追いかけ、水飛沫がさらに舞う。

泳ぐ犬
水しぶきと犬

しだいに犬の興味は移ろいでいったようで、また気ままに歩きはじめた。妹からリードを受け取って、いったん上がりたい? と促すも犬はほとりには向かわない。それからはプールでウォーキングをしているように、私と犬は水中散歩をおもしろがった。流れが穏やかで、冷たくなくて暑くなくて、気持ちがいい。

泳ぐ犬とリード
前脚が水に入っている犬

「ね~え~!」

大きな声で呼ばれた先を見れば、気づかないうちに妹が対岸の岩場から手を振っていた。妹は土壁の樹々が生い茂った方向を両手で指して、「通りがあるから、ここに来て」と笑った。

そうして対岸から私たちのところまで、少しの深瀬を渡って戻ってくると、リードを手にとってふたたび犬と遊びはじめた。対岸に向かおうとすると、妹には膝上の水位置だったのに、私の太腿まで浸かって思いのほか深かった。

妹の言っていた位置について見上げてみた。すると樹々で生い茂っているように見えていたところは、通り道のような空間があった。見上げていると、自然と手を合わせたくなった。遊ばせてくれてありがとうございます。

樹々

「ウワー!!」ふたたび妹の叫び声と、バシャンッと一際大きな水音が同時に上がった。次はなんやと振り返れば妹が川の中で尻餅をついて、お腹あたりまでしっかり浸かっていた。一部始終を見ていたであろう母は、遠くからでも分かるほどに眉尻を下げて大きく笑っていた。犬は驚いたのだろう、まんまるにした目でじっと観察していた。

服を絞る様子
歩く人
また来よう。

帰宅すると妹は風呂に直行し、犬は庭で月一のシャンプータイムとなった。
冬用の毛並みはすっかり換毛期をすませていて、ドライヤーにかかる時間は3倍は短くなったのでは。犬の毛並みからも夏がすでに始まっていたのを感じた。

水を振り払う犬
座る犬
遊んだ身体を休ませるふたり

この連載が本

『inubot回覧板』

(扶桑社刊)になりました。第1回~12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。

【写真・文/北田瑞絵】

1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント

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