子どもが巣立つなど、第二の人生がスタートすることの多い50代。次のステージに上がると、老後に向け暮らしを見直したいと考える人も少なくないでしょう。一方で、全部必要で手放すものがない、自分で把握できていればものが多くてもいいのでは、と思うかもしれません。
そこで、50代から本格的にミニマムな生活を始めたという、現在60代・カナダ在住のミニマリストでブロガーの筆子さんに「不用品を手放し、本当に必要なものだけをもつ生活」が50代以降にもたらすメリットについて教えてもらいました。
50代からものを減らした方がいい5つの理由
片づけやもたない暮らしがブームになってから久しいですが、不用品を捨てて、ちゃんと使うものや、好きなものだけをもつ生活は、50歳を過ぎた人に大きなメリットがあります。
代表的な恩恵を5つ紹介しますね。
●その1:必要なものをさっと取り出せる
片づけの最大のメリットは、必要としているものを、必要なタイミングですぐに取り出せることです。つまり、探しものをしなくてすむのです。
不用品がたくさんあると、所持品を把握しきれないので、今、手に取りたいものが自宅にあるのかどうかすら、わからないときがあります。もっていると自覚していても、どこにあるのか、すぐに思い出せないことも多いでしょう。
ものが多すぎると、「確かにあるはずだけど、どこにしまったっけ」と、あれこれ引っぱり出して、探しまわるはめに。
私の夫は、ものを捨てないタイプで、こまごまとした雑貨をたくさんもっています。しかし、必要なときに、さっと取り出すことができません。毎回、あちこちひっかき回しています。
探しものをするのは非常にストレスだし、なにより時間がもったいない。不用品を捨てておけば、残り少ない人生の時間を探しものに費やさずにすみます。
●その2:思い出を楽しむことができる
生きている時間が長ければ長い人ほど、写真や手紙、日記帳に動画など、思い出の品をたくさんもっているでしょう。
こうした思い出の品を取り出してゆっくり眺め、ノスタルジーにひたるのは、とても楽しいことです。
しかし、集めに集めた思い出の品が、家のあちこちに散乱し、段ボール箱の中でぐしゃぐしゃになっていたら、思い出を楽しむどころではありません。
思い出を楽しむはずの時間が、しんどい片づけタイムに変わってしまいます。好きな写真や大事な手紙だけを手元におき、すぐに取り出せるようにしておけば、昔を懐かしむ時間が、楽しいものになります。
●その3:地震対策になる
いらないものを捨てて、スッキリした環境にすることは、安全な生活に直結しています。とくに、日本は地震が多いから、家具が転倒しないよう心がけるのは大事なことです。転倒防止で、もっとも効果的なのは、最初から家具を置かないこと。
ものがたくさんあると、たんすや棚、本箱など、ものを収納する家具が増えてしまいます。
いらないものをとことん撤去すれば、家具や収納小ものをそんなに置かなくてもすむので、転倒リスクも下がります。
万が一、大きな地震にあって、家具が倒れたり、食器が割れたりしても、ものが少ない方が、片づけるのが簡単です。
●その4:動きやすい空間になる
部屋の中に家具やものがいっぱいあると、動きにくく、場合によっては、家具にぶつかったり、コードに引っかかったりして転ぶことがあります。
65歳以上の人の怪我の原因でいちばん多いのが転倒です。老化により筋力が衰え、平衡感覚が鈍くなり、転びやすくなるのです。足元がよく見えないという理由もあるでしょう。
しかし、転んでしまう根本的な理由は、そういう環境で暮らしていることにもあります。いくら老化したからといって、人はなんでもないところでいきなり転んだりはしません。
室内に家具が多すぎて動きにくいとか、床に落ちているものにつまずくといった理由で転ぶのです。
よけいなもののない、スッキリ空間は、動きやすく、快適な生活の土台です。
●その5:ダウンサイジングに備えて
一生、自宅で過ごしたいと思っていても、寿命が伸びている今、高齢になって老人ホームや介護施設に転居する可能性があります。
子どもたちが巣立ったあと、大きな家を管理していくのは、あまり意味がないし、不経済なので、もっと小さな住まいに引っ越すこともあるでしょう。古くなった家をリフォームすることもあるかもしれません。
そんなとき、所持品がたくさんあると、選別して処分する作業が、本当に大変です。50代に入った頃から、ある程度、老後を見据えて、所持品の整理を始めておけば、いざというときにあわてずにすみます。
ものを減らしておいた方が、自分が死んだあと、整理することになる家族の負担も減ります。
若い頃、好きでよく使っていたものも、年をとった今のライフスタイルには合わない、使いにくい、ということもあります。ライフスタイルの変化にうまく対応していくためにも、所持品の見直しは早めに取りかかりましょう。