間取りを決める過程で、とくに悩ましいのがキッチンのレイアウト。憧れと現実的な使いやすさと、何を基準に選んだらいいのか…悩む声も多いようです。自分にぴったりのキッチンを選ぶには、まずはその特徴を知るのがいちばん。特に人気の高い3タイプのメリット、デメリット、そしてデメリットの解決策を、住宅設計を専門にしている一級建築士の入部亜佐子さんに教えてもらいました。

目次:

根強い人気!オープンタイプの対面キッチンダイニングテーブルと横並びのキッチンインテリアに溶け込むアイランドキッチン

根強い人気!オープンタイプの対面キッチン

オープンタイプの対面キッチン
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キッチンにいても孤立感を感じないオープンタイプの対面キッチンは、憧れる人もとても多いです。

コンロ前にガラスフレームをはめ込んで、ダイニングで宿題をする子どもへの目配りができるように

特に子どもが小さいときは料理しながらも目が届く、というのがいちばんのメリット。コンロ前にガラスフレームをはめ込んで、ダイニングで宿題をする子どもへの目配りができるようにするのも人気です。インテリア的にも抜け感とおしゃれ感がアップするのでおススメです。

ダイニング側はディスプレイを楽しむスペースに

ダイニング側はディスプレイを楽しむスペースにするのも素敵です。

一方で、対面キッチンは、座る位置や家具のレイアウトによっては、デメリットになる部分があることも押さえておきましょう。

デメリット:動線が長い

動線が長い

たとえばキッチンで炒め物をしているときに、子どもがテーブルでジュースをこぼしたら…。子どものところまでの動線、長いです。

<解消策>子どもの座る場所を変える

子どもの座る場所を変える

キッチンからいちばん近いところを子どもの座る場所に決めれば、お世話するのがラクになります。

<解消策>近道をつくる

近道をつくる

キッチンの横並びにパントリーをつくり、2つめの動線を確保したプランもオススメです。

<解決策>ダイニングテーブルの位置を動かす

子どもが小さいうちは、キッチンカウンターとダイニングテーブルを少し離して置き、通路を確保しておきます。

デメリット:配膳が面倒

配膳が面倒

対面キッチンの場合、できたご飯をダイニングに運ぶのもひと手間かかります。手元を隠すために立ち上げたカウンター部分にご飯を置いても、ダイニング側で受け取ってくれる人がいなければ、料理した人がダイニング側に回って移動させなくてはなりません。

カウンターの奥行きが狭いと、のせられるお皿の数も限りがあって、何度も往復することに。距離は近いのに実際の動線は長くなる、という現象が起こります。

<解決策>カウンターを低め&広めに設定

カウンターを低め&広めに設定

いっぺんに全部のせられるスペースがあれば、配膳がスムーズになります。

<解決策>だれかに手伝ってもらう

配膳を2人体制でできるなら問題ありません。

<解決策>1人分ずつトレイにのせる

これならテーブルセッティングもラクにできます。

<解決策>フルオープン(パーティタイプ)のキッチンにする

フルオープン(パーティタイプ)のキッチン

写真のタイプのキッチンなら、配膳は断然ラク!

ただし、フルオープンにすると、シンクまわりもいつもピカピカに、キッチンを常に片づけておかないと部屋全体がごちゃついて見えます。一つ解決すると一つ問題点が出てくることも覚えておきましょう。

ダイニングテーブルと横並びのキッチン

ダイニングテーブルと横並びのキッチン

ダイニングテーブルと横並びのキッチンは最近、とても人気のあるレイアウトです。その理由はとにかく配膳がラク!ということ。場合によってはダイニングを作業台として使うこともできて、みんなで餃子を包んだり、クッキーの型抜きをする等もラクラクこなせます。

キッチンに立つ人の孤立感もなく、対面キッチンよりもオープンなスタイルを実現できます。

デメリット:スペースが必要

スペースが必要

最大のデメリットはスペースが必要になること。キッチンをオープンスタイルにすると、キッチンの前に廊下的な空きスペースが生まれてしまいます。

<解決策>LDKの配置を工夫する

キッチンの対面にリビングがくるレイアウト

この場合は、LDKの配置を工夫しましょう。写真のようにキッチンの対面にリビングがくるレイアウトなら、スペースに無駄もなく部屋全体に目も行き届くので、対面キッチンと横並びキッチンのいいとこ取りが実現します。

デメリット:動線が長い

動線が長い

対面キッチンのデメリットと重複しますが、動線の長さがネックになることも…。

<解決策>テーブルの配置を変える

テーブルの配置を変える

ダイニングテーブルをキッチンに寄せたり、壁側に寄せたりできるようにしておくと便利。その場合は、テーブルの移動に合わせて照明も動かせるように、ライティングレールを使うなど工夫しておきましょう。

インテリアに溶け込むアイランドキッチン

アイランドキッチン

アイランドキッチンは、なんといっても部屋と一体になる開放感が魅力です。両サイドから行き来ができるので、料理中に家族が飲み物を取りにきてもお互い邪魔にならず、対面、横並びのデメリットの「動線が長い」というのも解消できます。

デメリット:子どもが走り回って危険

ただ、回遊できるキッチンになるので、子どもが面白がってぐるぐると走り回って危ないなど、メリットがデメリットになってしまうこともあります。

<解決策>折り畳み式のカウンターを造作

アイランドの片側に折り畳み式のカウンターテーブルを造作

写真のお宅では、その解決策としてアイランドの片側に折り畳み式のカウンターテーブルを造作して、料理するときだけテーブルを出し、行き止まりをつくりました。

デメリット:スペースが必要になる

アイランド部分にシンクとコンロの両方を設置するレイアウトだと、両サイドの通路分も含めて、多くのスペースが必要になるのもデメリットです。

<解決策>シンクとコンロを分ける

シンクとコンロを分ける

アイランド側にシンク、壁側にコンロを配置するⅡ型キッチンにすると、アイランド部分がコンパクトにおさまります。

<解決策>アイランドは収納兼作業台に

アイランド部分を収納と作業台を兼ねたカウンターのみに

アイランド部分は収納と作業台を兼ねたカウンターのみにするのもひとつ。換気扇が壁側に収まるので、空間も広々と見えるというメリットもあります。

家は住み続けていくもの。時間の経過とともに子どもたちが成長してくると、必要なくなる心配事もあります。3年後、5年後、10年後の子どもたちの年齢を書き出してみると、今の悩みは一過性のもので、そこに固執するとそれ以上に長い将来が使いにくくなる、なんてことも見えてきたりします。

キッチンに限らず、メリット、デメリットの両方を念頭に「自分たちにとってのベスト」を見つけていってください。