神奈川・横浜市の住宅地に建つI邸は、築約40年の軽量鉄骨造2階建て。子どもたちが独立してふたり暮らしとなったのを機に、仕切られた空間の多さが気になっていた住まいのリノベーションをすることに。設計はジャムズ一級建築士事務所の仲條雪さん、横関和也さんに依頼。空間をつなげることができる引き戸の採用や回遊性のある動線などによって、快適なシニアライフを手に入れました。
すべての画像を見る(全13枚)何通りもの動きを可能にしたリノベ
家の中央にある既存の階段を中心にぐるりと一周できるつくりにリノベーション。1階は玄関(上の写真の右奥)→ダイニング→リビング→キッチン→玄関へと回遊が可能です。
階段を囲んでいた仕切り壁は取り払い、クリエーションバウマンの薄いカーテンで仕切ることで光と気配が感じられるようになりました。
キッチンは玄関脇に移動し、パントリーを兼ねる多機能空間としました。「買い物から帰ってすぐ荷物を置けるので、すごくラク」と妻。キッチンからはリビングへ通り抜けることもできます。
I邸は高台にあるため眺めがよく、1階のLDに直結するデッキを付けたことで、庭がより身近な場所になったなったそう。
2階にもバルコニーを設け、さらに眺めを楽しめるようになりました。特に夕日を眺めるのが好きという夫は「2階からの眺めがこんなに素晴らしいなんて、全然気づきませんでした」と話します。
収納はオープン棚に。シニア世代が使いやすく
「扉があると開けるのが面倒だし、何をしまったか分からなくなるのがイヤだったんです」(妻)。そこでキッチンをはじめ、オープン棚を壁面いっぱいに設けました。
棚は妻の使い勝手に合わせて、普段使いの食器や調味料、調理器具などを配置。タブレットを置くのにもピッタリです。
おいしいコーヒーを淹れるのが趣味という夫のコーナー。リビングへの出入り口近くにあるため、料理に集中したい妻と動線がぶつかりません。
ユーティリティには、洗濯グッズや掃除用品、犬用のグッズなどをすっきりと収納。掃き出し窓からは洗濯物を干すためのデッキに出られるため、洗濯動線もスムーズです。
ユーティリティに隣接するサニタリーは、浴室とガラスで仕切ることで広がりを演出。湿度が高くなる場所のため、オープン棚ではなく引き出し式の収納を採用しています。
寝室は夫婦で別々に。でも、緩やかにつながっています
既存では個室が3つあった2階に、夫妻それぞれの寝室がつくられました。上の写真右側が夫の寝室、左側が妻の寝室の入口です。
寝室は別々ですが、その間に位置する「広間」で空間が合流する形になっているため、2階も階段を中心に回遊ができます。上の写真では中央が広間にあたり、第2のリビングと位置付けられています。
将来はエレベーターの設置もできるつくりにしているため、2階トイレも車椅子で出入りしやすいよう引き戸に。引き戸なら開け放しにできるので、掃除もラクだそう。
「この家はモダンだけどシニア向き。動きやすくて片付けもラクだし、逃げ場があるのでストレスも軽減されるようです(笑)」と妻。長年連れ添ってきた夫妻がこれからも楽しく暮らすには、互いに適度な距離感を持てる住まいに変えることも有効策の1つなのかもしれません。
設計/ジャムズ
撮影/桑田瑞穂
取材/松浦美紀
※情報は「住まいの設計2019.12月号」掲載時のものです。