東京・江戸川区にあるMさんの家の敷地は、もともとは隣接する妻の実家の庭の一部でした。娘夫婦が家づくりを考えていると知り、両親がうちの庭先に建てたらどうかと申し出てくれたといいます。両親の家の南側は魅力ある立地で、川と両岸を含めた豊かな緑地帯がすぐ目の前に広がっています。

ダイニング
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目次:

全体から細部に至るまで 数々の夢を盛り込んだ家キッチンはタイルから棚まで 好きなものに囲まれて玄関ホールまで及ぶ2階からの光実家の庭だった敷地に 借景を生かして建てる

全体から細部に至るまで 数々の夢を盛り込んだ家

ダイニング親子

横長の腰高窓から明るい光が差し込むダイニングで、ランチタイムが始まります。Mさん一家は共働きの夫妻、4歳の長男、 8か月の長女の4人家族です。現在、育休中の妻は学生時代には住居学を専攻し、百貨店でインテリア関係の仕事に就いているという、いわばインテリアのプロです。それだけに、知識も情報も豊富で、家づくりに際してかなえたい夢がたくさんあったといいます。

全体だけでなく、細部にも様々な要望が盛り込まれています。例えば、ホールとLDKを仕切る木枠のパーティションはお気に入りのカフェ、2階の十字窓はファブリックショップのイメー ジを生かしたものだそう。

キッチンはタイルから棚まで 好きなものに囲まれて

親子キッチン

キッチンにも妻のこだわりが満載です。Mさんの家のキッチンは対面式で、ダイニングとの間をカウンターで適度に仕切ったセミオープンスタイルです。「アイランドキッチンみたいに常に丸見えよりは少し閉じた部分も欲しいけど、カウンター越しに家族の様子が見え るようにしたかった」と妻。

手元はカウンターでほどよく隠し、生活感を感じさせない工夫をしています。木のカウンターは北欧風のインテリアとも馴染みがいいですね。

キッチンタイルベージュ

キッチンのベージュのタイルはアドヴァンのもの

キッチン棚

ショールームを何軒も回って吟味した壁面のタイルはコンロ側と背面カウンター側で色を替える一方、壁には家を新築中に見つけたというアアルト・デ ザインの棚を設置しました。

キッチンパントリー

連続するパントリーを経由して奥に抜けられ、キッチンを中心に回遊できるので、動線もスムーズ。冷蔵庫や家電も奥のパントリーに収まっているので、表からは雑多なものが見えず、妻の理想のインテリアを保っています。

カウンター収納

キッチンの背面に造り付けた作業台兼食器棚です。通路幅を確保するため奥行きは浅いですが、食器の出し入れがしやすそう。

食洗機

妻のたっての希望で、ミーレの60cm幅の大容量の食洗機をビルトイン。大量の食器や鍋類も一気に洗えて便利だそう。

玄関ホールまで及ぶ2階からの光

玄関ホール

ホールの壁に用いたのは、夫がどこかに使いたいと熱望した大谷石です。妻好みの北欧デザインとケンカしないか心配でしたが「夫婦の折り合いはすべて建築家の東端桐子さんがうまく調整してくれました」

階段子ども

玄関からホールの見通し。モルタルの土間や外灯のような照明と相まって、空間全体に外部空間のような大らかさが生まれました。

洗面所

人造大理石のカウンターに大きなシンクを組み合わせた洗面室。横使いのボーダータイルが美しいですね。

洗面所床

洗面室の床は繊細な模様入りのタイルは平田タイルの製品。当初はホールと同じモルタルの予定でしたが、少し表情を変えてやさしい雰囲気を出したいと妻が選んだといいます。

トイレ

トイレの壁面は緑がかったグレー。同じグレーでも場所によって微妙に色合いを替えているのも、妻のこだわりです。

実家の庭だった敷地に 借景を生かして建てる

裏の川

すぐ裏手を川が流れ、向こう岸には桜並木が続く緑道があるだけでなく手前にも細長い余地があり、区が管理する多様な樹木が植わっています。建築家の東端桐子さんは実家の日当たりをできるだけ損なわず、かつ恵まれたこの借景を生かすべく、川に面した南側ぎりぎりに高さを抑えた建物を配置しました。

ルーフバルコニー

寝室の西側にあるルーフバルコニー。ここからも緑が存分に眺めらます。手前は敷地内の既存の桜が植えられています。

寝室

正面窓がルーフバルコニーに面した2階の主寝室。右手の壁の塗装は夫妻によるDIYで、英国FARROW &BALL社の塗料を使用しています。

和室引き戸

ほの暗く、こもれる部屋が欲しいという夫の願いをかなえた和室です。子どもの遊び場やゲストルームとしても使えます。こちらの濃紺の壁も自塗装しました。

ルーバー引き戸

和室の入り口をリビング側から見たところ。 木製ルーバーの羽根は可動式で風を通し、空間をつなぐこともできます。

「いつかこんな家を建てたいと、ずっと心に残っていました」と妻は家づくりを振り返ります。妻が結婚前に旅したヘルシンキで見学したという、フィンランドの巨匠アルヴァ・アアルトの自邸が住まいの理想のイメージでした。

明るくモダンながら木の温かみも感じられる空間は、確かに北欧デザインに通じるものがあります。

プロデュース/OZONE 家 design
設計/東端桐子(ストレート デザイン ラボラトリー)
撮影/桑田瑞穂
※情報は「住まいの設計2018年5.6月号」掲載時のものです。

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