実家の親の土地に一戸建ての住宅を建てたり、二世帯住宅を建てたりするのは、費用の面をはじめ何かとメリットが多いでしょう。しかし、きちんとした知識がないと将来相続でトラブルになる可能性も考えられます。ではどうすればトラブルを防止することができるのでしょうか。

目次:

1. 親には生前にやっておくべきことがある2.相続トラブルを防ぐための手続きは?3.相続トラブル回避にも親は今からできることをやっておくこと

1. 親には生前にやっておくべきことがある

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親の土地に子どもが家を建てると、親が亡くなったあとに問題が生じる場合があります。

不動産は遺産分割がしにくい財産のため、均等に分けることが難しく、相続人に不公平が生じることが多いです。

1-1 不動産を売却して換金しなくてはならないケースがある

遺産分割は相続人同士で協議を行い合意できれば、どんな割合で分割しても問題ありません。

しかし、合意に至らない場合は、家庭裁判所において調停による分割が行われ、調停でも解決しないときは、家庭裁判所の審判によって法定相続分に基づいた分割が行われます。

親が亡くなり、相続人が子ども2人(AとB)だった場合で、住宅の評価額が1,500万円、現金が500万円、計2,000万円の相続財産がある家庭の場合、法定相続では2分の1ずつ財産を相続することになります。

親の土地に住宅を建てた子どもAが、土地をもらいたい場合は、法定相続に従うと、500万円の現金をもう1人の子どもBに渡さなくては土地を取得できません。

もし、Aが500万円を用意できない場合は不動産を売却して換金せざるを得なくなり、土地を取得することが困難になります。

1-2.親を中心に相続について話し合う

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相続トラブルにならないために、親は自分が元気なうちに子どもたちを交えて相続について話し合っておくことが大切になります。

最も理想的なのは、日頃から兄弟同士で仲良くし、親子間でも会話をしてそれぞれの家族の事情などを共有することです。

親が中心になって、相続に関する考え方やその理由などについて話をし、子どもに理解を求めておくことが必要です。
何よりもお互いの信頼関係を築いておくことが大切です。

2.相続トラブルを防ぐための手続きは?

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遺産分割協議書は、誰が何を相続するのかを証明する書類ですが、親が亡くなったあとのものしか有効ではありません。

つまり親が亡くなる前に遺族同士で遺産分割協議をして取り決めをし、書面を作っておくことはできないのです。

では、生前にどんなことをしておけばいいのでしょうか。

2-1 生前に親が財産を再構成しておく

親が元気なうちに自分の資産を法定相続分通りに遺族が相続できるよう再構成する方法があります。

先の例の場合なら、親は自分の不動産「1,500万円」を子どもに相続させるために、Bにも1,500万円の相続をさせることができるよう、現在保有している500万円の金融資産を生前に増やして1500万円にするという方法です。

Bが相続する予定の資産は、現金だけでなく、生命保険など、ほかの資産でも構いません。

こうすることによって兄弟間の不公平を解消することができます。

2-2 代償分割によって遺産を分割する

親の自宅を子どもの誰かが必要とするケースでは、「代償分割」という方法で遺産を分割することが可能です。

代償分割とは、不動産のように単純に分割できない財産を、特定の遺族が一人で相続する代償に、他の遺族に相応の代償金を支払って遺族の不公平を解消するやり方です。

A:土地1,500万円
B:金融資産500万円

と相続をしますが、不公平を解消するために、Aが自分の財産からBに別途「代償金500万円」を支払います。

代償金は一括払いでなくても構いません。代償金は何も手続きをしないと贈与とみなされてしまいます。

贈与税がかることがないようにするためには、遺産分割協議書に代償分割に関する記載が必要となります。

ただし、先に述べたようにAに500万円の支払いができない場合はこの方法はできません。

3.相続トラブル回避にも親は今からできることをやっておくこと

思考の整理

makaron* / PIXTA(ピクスタ)このように、実家の土地に子どもが家を建てる場合、将来親の家や土地を相続する際に、不公平だと兄弟同士でトラブルが発生する可能性があります。

子ども同士でトラブルになるのを良く思う親はいないでしょう。

親は自分が亡くなった後のことも考えて、今からできることをやっておくべきです。

ファイナンシャルプランナー(AFP)/宅地建物取引士一般社団法人/家族信託普及協会®会員  吉井 希宥美