不動産購入時にかかる諸費用は高額になる場合が多く、その種類や支払うタイミングなどをきちんと把握していないと、あとで「資金が足りない!」という状況になることも……。そこで今回は宅地建物取引士で現役不動産営業マンの高幡和也さんに、不動産を購入する際にかかる諸費用の種類と、その諸費用を支払うタイミング等について聞いてみました。
1.契約書の印紙税
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不動産の売買契約書や、家を建てる場合の建設工事請負契約書は印紙税法で定める課税文書にあたり、課税文書を作成した人(売主や買主)はその記載金額に応じた印紙税を収めなければなりません。
印紙税は、税額分の収入印紙を契約書に貼付し、そこに消印をして納付することになります。例えば、購入する不動産が4,000万円である場合は、1万円(2020年3月31日までの優遇措置、通常は2万円)の収入印紙を売買契約書に貼付し消印しなければなりません。
印紙を貼付しないと、その3倍の過怠税を課される場合がありますのでご注意を!
2.手付金
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手付金は代金の一部と認識されがちですが、実は手付金は代金の一部ではなく、買主が売主へ支払う「契約の証拠金」です。
例えば、銀行が物件価格の100%を住宅ローンで融資してくれる場合でも、契約時に支払う手付金については別に用意しなくてはなりません。一般的には物件価格の5%前後~10%程度が手付金の目安となりますが、取引内容・条件等によっては10%以上を用意しなければならない場合もあります。
手付金は最終的に「代金の一部に充当」されるため諸費用という認識をもつ方は少ないかもしれませんが、「契約時に用意しなければならないお金」であることを覚えておきましょう。
3.仲介手数料
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不動産を購入する際に仲介業者を利用する場合には、仲介手数料(物件価格の3.24%+6.48万円)を支払わなくてはなりません。仲介手数料は契約時に半金を支払い、残金決済時(物件引渡し時)に半金を支払うのが一般的ですが、仲介業者との話し合いによっては、残金決済時に一括で支払うという約定にする場合もあります。
4.登記費用
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不動産を売買する場合は登記が必要となり、登記には税金(登録免許税)と、登記手続きを代行してもらう司法書士や土地家屋調査士への報酬が必要となります。登記には、建物を新築した場合の「建物表題登記(建物表示登記)」や「保存登記」、中古住宅や土地の所有名義を変更する「所有権移転登記」、銀行等から融資を受ける場合に必須となる「抵当権設定登記」等があります。
これらの登記のうち、保存登記・所有権移転登記・抵当権設定登記は、残金決済時(物件引渡し・所有権移転時)に同時に行われ、費用もその時に支払うことになります。しかし、建物表題登記については建物完成から1か月以内に行わなければならず、そのタイミングは残金決済時よりも前になります。
そのため、建物表題登記費用は残金決済時の前に請求される場合があるのでご注意ください。表示登記は土地家屋調査士に依頼し手続きを代行してもらうのが一般的で、その費用は約8万円~15万円程度です。
5.火災保険
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住宅ローンを利用する場合、火災保険への加入は必須です。万一の火災だけではなく、近年増加している自然災害への備えとして、住宅ローンを利用しない場合でも火災保険には必ず加入しましょう。
火災保険は建物引渡しと同時に加入することになりますが、保険料の支払方法については長期一括払いや月払い等がありますので、保険会社と打ち合わせのうえ自分のニーズに合わせた方法を選びましょう。
6.住宅ローンにかかる費用
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住宅ローンを利用する場合には、「印紙税」「融資手数料」「保証料」などの費用がかかります。
印紙税
銀行との間で締結する金銭消費貸借契約書も不動産売買契約書と同様に課税文書なので、収入印紙を貼付しなければなりません。例えば、借入額が1000万円を超え5000万円までなら、2万円の収入印紙が必要となります。
融資手数料
融資を受ける際に銀行に支払う融資手数料(融資事務手数料)は、3万円(税別)~借入額の2%(税別)など、ローンの種類や各銀行によって大きな差があります。
保証料
保証人の代わりとなる保証会社へ支払う保証料は、借入金額や借入期間によって異なり、一般的には借入期間35年なら、借入100万円につき「2万円強」程度となっています。
それぞれの費用を支払うタイミングは、印紙税は金銭消費貸借契約時、融資手数料と保証料は残金決済時となります。
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これ以外にも、修繕積立基金(新築マンション)、地盤調査費用(注文住宅)、地鎮祭費用(新築住宅・注文住宅)、不動産取得税、固定資産税精算金、団体信用生命保険料(フラット35)など、購入する物件の種類や金融機関ごとにさまざまな費用が必要になる場合があります。
諸費用の金額と支払うタイミングについては事前に仲介業者、建築業者、分譲業者等にしっかり確認し、実際の支払い時に慌てないよう準備しておきましょう。
【参考】
※ 国税庁ホームページ「印紙税」
※ 法務局ホームページ「不動産登記」