千葉県茂原市の市街から少し離れた県道沿いにある「コーヒーくろねこ舎」。東京から移住した今野さん夫妻が営業しているブックカフェです。古民家専門の不動産サイトで物件を見つけ、夫がDIYでリノベして、夢だったカフェをオープンさせました。素朴であたたか、そんな空気に包まれるやさしい空間です。
田舎暮らしに求める生活目的を持つ
夫の博之さんは山形出身で、実家に帰るたびに自然に囲まれた環境のよさを再確認していました。
そして妻の素子さんの夢はカフェ経営。
介護士として働く博之さんは「自分の仕事をベースに妻の夢をかなえるには、東京でなくてもいいのでは」と移住を決意します。
すべての画像を見る(全17枚)夫妻は、東京近郊で古民家を探す中、千葉県にある古民家専門の不動産サイトを発見。
そのサイトの主宰者も移住者であり、田舎暮らし希望者を対象にした古民家交流会を開催していました。
そこで、さっそく交流会に参加し、先輩移住者さんたちの生の声を聞きます。
「目的がしっかりしていた方がより田舎暮らしが楽しめる、コミュニティやご近所さんとの付き合い方とかとても勉強になりました」と素子さん。
こうして自分たちが田舎暮らしに求める生活目的をしっかりと固めました。
「古民家で暮らしながらカフェを経営したい」「敷地内で菜園をしたい」という想いです。
……手に入れたのは、瓦屋根の日本家屋。築年数は経っていましたが、ご近所の宮大工が建てた建物であり、躯体はしっかりとしていて雨漏りなどもありません。庭+古民家+カフェという条件にぴったりな理想の物件でした。
夫がDIYで古民家カフェにリノベ
今野さん夫妻がこだわったのは、自分たちの力で店づくりをすること。
博之さんは仕事をしながら床の張り替え、壁塗りなどDIY リノベを実践しました。
どのように改装をしたのか、少しご紹介しましょう。
和室があった場所は畳をはがし、杉のフローリングに張り替えました。
ここは大きな窓からのんびりとした眺めを楽しめる場所ですね。
ハーブなどが自生している菜園が見えます。
カフェカウンターは元々あった引き戸を活用しました。
既存の床の間は、本やグリーンを飾るスペースに。
浴室はレトロなタイルをそのまま生かしながら、浴槽を取り除いて小物をディスプレイ。
カフェでイベントを開催する際には、スタッフのバックヤードとして活用しているそうです。
カフェの玄関は、既存のケヤキの床をそのまま生かしました。
テーブルや椅子などのインテリアはどうしたのでしょう?
小学校で使われていた勉強机、秋田の温泉街で偶然拾ったテーブルなどをリメイクして活用しているそうです。
テーブルと椅子はすべて異なるデザインなのが楽しいですね。どこに座るか選びたくなります。
照明はシンプルな裸電球を使い、昭和の雰囲気を生かしているとのこと。
知り合いや友人からもらった花やグリーンは、ドライにして店内に飾っています。銀座の老舗コーヒー店で働きながら焙煎技術を習得した素子さん。
こちらに来てからはコーヒー屋台を出店し、カフェオープンの準備を着々と進め、3年かけて「コーヒーくろねこ舎」をオープンしました。
地元を活性化させるコミュニティの一員に
「町のコーヒー屋として一生ここで暮らしたい」と話す素子さん。
この地を移住先に選んだきっかけは?
「ラジオ番組で、東京から千葉県いすみ市に移住した人の話を聞いたことがきっかけです。夫は、カフェ&宿泊施設『ブラウンズフィールド』で2週間の泊まり込み体験を経て、千葉県の住みやすさを実感しました」と素子さん。
なるほど。実際に暮らしてみないと分からないこともありますものね。
そして、移住生活で大切にしているのが、ご近所やコミュニティとの関係だそうです。
博之さんは地元の消防団に入ったり、お祭りに参加したりしているそうです。
素子さんは、様々なイベントでのコーヒー屋台は現在でも積極的に出店して、地元を活性化させるコミュニティの一員として活動。
田舎暮らしには困ることもありそうですが……?
「豪雨による倒木で道が寸断されて町に出られない」などの予期せぬことが起こったりするそうです。
“田舎あるあるトラブル”に要注意です。
でも、よいことの方がたくさん!
「料理を通して素材のこと、農園の方々のことを紹介する機会もあり、カフェが“つながりの場” にもなるといううれしさがあります」
野菜や果物のおいしさを改めて感じたり、自分と似た感覚を持つ人たちとのつながりが広がったりして、東京では得られなかったものが日々増えています。
ところでカフェのオススメですが、やはり、時間をかけて丁寧にドリップするこだわりのコーヒーと新鮮な地元の有機野菜をふんだんに用いた数々の料理!
夢を実現し、地元のコミュニティに参加し、自然に包まれてスローライフを楽しむ今野さん夫妻。やってみたいこともまだまだあります。
「自生しているスペアミントやタイムなどのハーブ類はあるのですが、もっとちゃんとした菜園をやりたいと思っています」と、さらなる想いを語ってくれました。
もっと詳しく見たい方は、ぜひ「住まいの設計2019年2月号」を参考にしてみてくださいね。
コーヒーくろねこ舎 〒297-0044 千葉県茂原市台田327-1 080・4403・0319 自家焙煎のコーヒー、手づくり料理とスイーツを提供。不定期営業のため開店日時は要問撮影/山田耕司(扶桑社)
※情報は「住まいの設計2019年2月号」取材時のものです