以前は郊外に住んでいたOさん夫妻。「飲みに行くのが好きなので、タクシー代がかさんでしまって…」と住み替えを考えたそう。2000万円で購入した横浜市中区の物件は、駅からわずか徒歩3分という距離。昭和59年築でちょっぴりレトロな、約66㎡の物件です。確かに駅近ですが、建物はマンションではなく雑居ビルで、しかも形状は三角形。素人目には個性が強すぎるように感じます。ところがOさんは建築関係の仕事をしていて、以前の住まいも古民家をリノベーションしたものだったとか。Oさんにとっては「面白そう!」と遊び心がくすぐられる物件だったのです。
白以外の色と素材でスタイリッシュな空間に!
リノベの設計と施工はエム・デザインに依頼。工事費は800万円(税・設計料込み)でした。
テーマにしたのは、なんと「白を使わないこと」。住宅の壁に当たり前のように使われている白をあえて使わないことに決めました。
メインとなるLDKのテーマカラーはグレー。壁はグレーがかったブラウン、天井はブラックに塗装しました。そのモノトーンの空間に、アームチェアに施されたピンクのパイピングや真鍮製ペンダントライトが映えます。アームチェアとペンダントライトはともに、イタリアのインテリアブランド、ジェルバゾーニのものです。
窓の外に見えるのは、なんと高速道路!
リノベ前のキッチン
料理好きで、もてなし好きでもあるというOさん夫妻。リノベ前は独立空間だったキッチンをオープン化しました。
そしてキッチンの前には、三角形の斜めの壁に沿うように長いダイニングテーブルを設置。「妻が目の前で揚げた天ぷらをゲストに振る舞ったりすると、とても喜ばれます」(Oさん)。色使いとともに、素材使いも絶妙なO邸。存在感のあるテーブルは、コンクリートの脚にアイアン(黒皮鉄)の天板を組み合わせました。
キッチンはステンレスの天板を用いて造作しました。面材には、Oさん自身が京都で見つけたという和紙を使用。和紙ならではの風合いと色合いが相まって、独特の個性を放っています。
DKの床材として選んだのは、グレーのサイザル麻。カーペットにはない質感が魅力です。
シンクと一体化したステンレスの天板には水切りカゴも組み込んで、すっきりと見せつつ機能的に。水栓はグローエです。
キッチンの背面にはパントリーを設けました。お気に入りのグラスなどは、アイアンのキャビネットにディスプレイ。
リノベ前のリビング
以前はフローリングだったリビングですが、リノベでは下地材などとして用いられるフレキシブルボードを床材として採用しました。フレキシブルボードはリビングだけでなく廊下、寝室の床にも使っています。「当たり前すぎるのはつまらない」という理由から、フローリングを避けた結果だとか。リビングの壁の一部には木を採用。Oさんならではのセンスが感じられますね。
マネしたい上級テク!「赤×黒」「グレー×ピンク」
LDKのグレーから一転して、寝室は赤×黒がベースになっています。天井は配線がむき出しになっていますが、黒なので目立たないという利点も。
寝室には大容量のW.I.Cを設置。このW.I.Cのおかげで、すっきりとした空間が維持できているともいえそうです。
玄関まわりもすっきりとしていますね。リビングドアはガラス入りを選び、開放感、採光面に配慮しています。
玄関まわりに置きたい物を一手に引き受けているのが、この収納です。内部には天井まで可動式の棚を設けて、物をたっぷりと収められるようにしています。
サニタリーの壁は、淡いピンク×グレーに。もちろん白ではありません!スペースをゆったりとさせるために、トイレは壁をなくし、洗面室と一体化しました。
洗面室には2人が同時に使えるように、ワイドな洗面ボウルを設置。ニッチのピンク色も効果的ですね。
バスルームの壁や床はモルタル仕上げです。洗濯機は扉で隠して、生活感を一掃しています。
LDKの一角には仕事机が置いてあります。アンティークショップでOさんが見つけたもので、天板の割れも“味”として楽しんでいるそう。空間づくりはもちろん、インテリア選びも参考にしたいO邸でした。
設計・施工/エム・デザイン
撮影/中村風詩人
※情報は「リライフプラスvol.29」取材時のものです