ラブラドールレトリバーのミスター(オス/10歳)と暮らすHさん夫妻。「以前の家は、冬は寒いし、夏はとても暑かったんです。特に夏場は暑がりのミスターのため冷房を入れっぱなしにしていたので、電気代が月3万円ほどになることもありました」(夫)。愛犬と暮らす中で多くの課題を感じていたご夫妻は、お互いにストレスなく過ごせる場を求めて新築を決意しました。さて、どんな家ができたのでしょう。
夏涼しく冬暖かな家にミスターもご満悦!?
すべての画像を見る(全17枚)設計を依頼された建築家の堀部直子さんは、高気密仕様に加えて、夏の日射を遮る深い庇や、風と光を制御する吹き抜けを採用しました。快適な温熱環境をかなえ、太陽光発電+エネファームのダブル発電で光熱費の削減にも成功。
また以前の家はリビングが2階にあり、階段が苦手なミスターの大きな体を抱えての上り下りが大変だったといいます。そこでLDKを1階にし、デッキで庭とつなげました。リビング上部を吹き抜けにしているから、視覚的な広がりも得られ開放感いっぱい。
冬場はリビングに床暖房を設置することで床座も心地よく、輻射熱で2階の寝室まで穏やかに暖められるそうです。写真は2階寝室から、吹き抜け越しにリビングを見下ろしたところ。ケージにいるミスターを寝室から確認できます。キッチンは行き止まりをつくらないアイランド型。
床は硬めで傷つきにくいアカシア材を、壁には消臭・調湿効果がある西洋漆喰を採用しています。キッチンの奥にはパントリーがあるため、背面のカウンター収納と棚は控えめ。
モノは極力表に出しておかない方が、ミスターのためにも安心ですねキッチンそばの飾り棚も同様、ミスターがイタズラをしないように高めの位置に造作しています。
自然素材の家で、ミスターも居心地よさそう。
愛犬のための工夫も万全!
愛犬と暮らすための、便利で楽しい仕掛けはまだまだあります。散歩から帰って直接ドッグシャワーへ行けるよう、玄関から庭へ抜ける通り土間を設けました。
勝手口にはミスターが出入りできるペットドアを併設し、人感センサー付き防犯カメラでセキュリティを確保。
壁は消臭機能を持つ焼き杉板と内装モイス、個室の建具は強化障子紙ワーロンシートを採用。土間に面してペットグッズなどを入れる引き出し収納も完備しています。また土間の天井に空気清浄機を搭載して、臭い問題も解消しました。そして、勝手口の前にはドッグシャワーを設置。
ミスターは、散歩から帰ると自分から進んで行くほど水浴びが大好きなんです。横には排水口を備えたトイレスペースも併設しました。軒下なので雨に濡れず世話ができ、ドッグランを兼ねた庭でそのままミスターが走り回ることもできます。
キッチンに併設したパントリーは土間側からも出入りでき、まとめ買いした食材をそのまま持ち込む保管庫として重宝。
ミスターの歯磨きガムも多種類を余裕でストックできます。
夫妻の好みのスタイルも細部に反映
愛犬だけでなく、もちろん “人の暮らしやすさ”も大切!夫はアウトドア派で、妻は読書が大好き。そんなふたりの希望から導き出されたプランが、敷地を広く大屋根で覆うというものでした。大きく張り出した軒下は、雨に濡れず夫が車やバイクの手入れができ、天気がよければデッキテラスでバーベキューが楽しめます。
吹き抜けを設けたリビングは、ハイサイドライトから自然光を取り込みます。
んん? 天井から吊るされたシンプルな照明、なにかに似ている? こちら、釣り好きの夫が選んだイカ釣り照明。LEDに付け替えてアレンジしたそうです。
曲線を描く吹き抜けが、なんとも癒やされる1階和室。窓辺は掘りごたつ式の読書スペースとして活用しています。
ミスターの寝場所や客間にもなるため、普段は床を閉じてカウンターを折り上げ、広く使えるように設計。床は傷つくことを想定して、畳ではなくラワン合板を採用しました。
大きな窓を設けたハーフユニットバスは、夫の希望でミストサウナやタブレット置き場を設置しました。
洗面室は、間接照明を兼ねた物干しバーやラジエントヒーターを備え、室内干し場としても機能します。
2階寝室は、正面の室内窓を開けると階下のリビングとつながります。屋根の形状をそのまま生かした天井も、デザインのポイントですね。
今日はチーフでおめかしをして出迎えてくれたミスター。
完成した家は家族みんなが満足するものになりました。ここに住み始めてからミスターの肌荒れは改善し、以前よりも毛並みがよくなったそうですよ。
設計/堀部直子(Horibe Associates)
撮影/桑田瑞穂
※情報は「住まいの設計2018年3-4月号」取材時のものです