ブラジルやアフリカで生活した経験から、海外の家のつくりを自宅に再現した坂本さんご家族の家。リビングから丸見えにならないキッチンは生活感を感じさせず、さらに家事スペースを一か所に集約することで炊事から洗濯の同時進行を可能にしています。その見えないけどつながりを感じるキッチンのある空間をご紹介いたします。

目次:

キッチンを奥に配置したことが最大のオススメポイント!洗濯もキッチンでできる!?玄関だけ共有の「独立型二世帯住宅」

キッチンを奥に配置したことが最大のオススメポイント!

坂本さんの家
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「お客さまからごちゃごちゃしたと生活感のある場所が目に入らないようにしたい」そんな奥様の要望に建築家の仲亀清進さんは、キッチンを完全に”独立”させるのではなく、キッチンを”奥に配置”することを提案しました。

キッチンをいちばん奥に配置しながらその存在を目立たせない。しかし、リビング・ダイニングとの空間の連続性はキープする。ゾーンの区切りを「く」の字にすることで、これを実現したのです。
この設計により、玄関からリビングに入ったときにはキッチンがまったく目に入らないけど、ダイニングとは適度につながっているためキッチンに立つ人との会話がスムーズになるんだそう。

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「僕がやるよ!」「何作ってるの?」思わずそう声をかけたくなるダイニングとつながるキッチンの配置で、家族の時間はギュッと密になっているようですね。

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洗濯もキッチンでできる!?

妻がセレクトしたオールステンレス製のシステムキッチン、サンワカンパニー「コントルノ」(廃番)は、コンクリート、モルタルの飾りすぎない印象との相性もいい。

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シャープなデザインで、下部はオープンタイプにしています。

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オープンタイプは、ワンアクションで出したりしまったりしやすいという”炊事の作業効率重視”に見えますが、「見えているときれいにしなくてはという意識が働き、本当に必要なもだけを入れるようになる」(妻)と”自然と整うキッチン”になるんだとか。

食器や食材の収納は、奥行きたっぷりの取っ手や枠がない扉付きの収納にイン。

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扉を閉めると壁のようになるから、もちろん生活感も出ず、存在感すら消してしまうというところはさすがです。キッチン奥にある広いパントリーには、大容量の収納スペース、さらに洗濯機も置くことで家事動線を集約しています。

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もちろん一番端にあるので、間仕切りなしでも生活空間からは見る心配もありません。

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海外の家のように家事スペースを一か所に集約することで勝手口からすぐに外の物干し場へと出ることもでき、キッチンで洗濯も完了!無駄な動きがまったく必要ないのがいいですね。

玄関だけ共有の「独立型二世帯住宅」

坂本さん邸は、ご主人の両親と暮らす二世帯住宅。1階を子世帯、2階を親世帯に振り分け、”玄関だけ”を共有しています。

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各世帯が自立しつつ、お互いの気配を感じられるような構成で、キッチンをはじめ、水回り設備はそれぞれに備えています。それでは、子世帯と親世帯のリビングとダイニングを見ていきましょう。
子世帯1階のLDKは床をモルタル塗りに。床暖房を入れ、冬も快適、夏は素足でひんやりした感触を味わえるそう。

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壁はラワン合板をブラウンに染色、床の凛とした雰囲気と壁の大らかな素材感で、部屋全体からキリッとした個性があふれ出ています。廊下はなく、それぞれの個室へはなんとLDKから直に出入り!

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間に収納を設けることで音などが干渉しないようにするとともに、個室の入り口を一歩奥まった場所にすることで距離感が演出されています。廊下がない家というのも驚きのポイントですが、坂本さん宅はトイレスペースまでも特徴的。

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洗面脱衣室と軽く壁で隔てただけの一室空間となっており、通常は個である空間が独立ではなく”つながり”を魅せています。
上下階間取りはほとんど同じという2階の親世帯のLDKは、床を温かみのあるフローリングにしています。

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2階であることのメリットを生かすため、傾斜天井にしてのびやかさを演出。

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照明はダウンライトに統一することで、すっきりした天井の広がりをみせ、より解放感を感じられる空間を実現しています。外壁は落ち着いた色のガルバリウム鋼板張り。

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あえて塀を設けずオープンな形にしているのは、車通りの少ない交差点に向かって開くことで、遠くまで視線が抜ける効果をねらうため。庭に様々な樹木を植え込むことでプライバシーが守られ「窓の外が森のようになるといいなと思っているので、これからもっと植栽を増やす予定です」と妻。

海外生活で気に入った家の作りをそのまま生かし、さらにそれを二世帯住宅に応用している坂本さん宅。キッチンとダイニングの”つながり”、上下階の”つながり”という、独立と共有の絶妙なバランスであたたい家づくりを実現されています。

設計/仲亀清進建築事務所
撮影/桑田瑞穂
※情報は「住まいの設計2018年5-6月号」取材時のものです