Nさん夫妻は、子ども2人と暮らす4人家族です。「子どもたちにいつでも帰れる場所をつくってあげたかった」「持ち家であれば、資産として残せる」との思いから、賃貸からの住み替えを決意。神奈川県川崎市内に建つ昭和58年築、専有面積71.79平米の中古マンションを購入しました。そして、「どうせなら面白いことをしたい」とリノベーションをすることに。リノベ工事費は1,200万円(税・設計料別)。設計はデザインライフ設計室に依頼しました。夫妻はネットでたくさんの施工事例を見るなかで「いいな」と思った事例のほとんどが、デザインライフ設計室の青木律典さんによるものだったそう。リノベの打ち合わせで大きな要望として挙げたのが、家事効率のアップでした。そして、空間には可変性も持たせたかったといいます。
将来を見据えた可変性のある空間
すべての画像を見る(全15枚)個室は小さくてもいいと割り切り、その分、リビングダイニングにはゆったりとした広さを確保しました。
リノベ前のLDから和室を見たところ
リノベ前のLD
リノベ前にあった和室をなくし、LDと空間を一体化することで実現した広さです。
広くしたリビングの一角は、仕切って客間としても使えるようになっています。普段は扉を開け放して使っているそうですが、片側の扉3枚を全部閉めると壁になり、客間と廊下ができるというわけです。
奥は寝室になっていて、寝室も同様の扉を閉めれば個室にできるつくりです。
3枚の扉は、梁下にうまく収まる仕組みです。客間を完全に個室にするための壁は、ランドリースペースに収納しています。寝室は子どもたちが大きくなったら2つに分けて、それぞれの個室にできるよう天井にレールを設けています。
寝室を子ども室にする時期になれば、客間に壁を立てて夫婦の寝室にする予定です。ライフスタイルの変化に合わせて空間を変えられるこのようなつくりは、妻の提案が発端でした。それを「扉で空間を仕切る」という青木さんのアイディアで形にしたものです。
リビングには無印良品のモジュールに合わせて設計した造作棚があります。これも「無印なら別の商品に入れ替えたくなってもモジュールが揃っているから使いやすいはず」という青木さんのアイデアでした。
造作棚の後ろが数センチあいているのは、棚裏の上部に間接照明が仕込まれているためです。照明デザインの会社に勤める妻が、青木さんと相談しながら綿密に照明計画を練りました。
夜、照明をつけると室内の雰囲気がガラリと変わり、昼間とは違った表情が楽しめます。
スグレモノのW.I.C兼ランドリースペース
キッチンは「一歩も動かなくていいように」という妻の希望から、コックピットのようなつくりに。食器やゴミ箱、家電まですべてが背面のパントリーに収まっています。
パントリーの奥行きは一部を浅くして、背面にあたる玄関側に大型の靴収納を設けています。玄関にあった既存の下駄箱は撤去して、ベビーカーが置ける広い土間を実現しました。
「これまでの住まいの悩みを全部解消できる家にしたかった」と妻。
特にストレスの大きかったのが、洗濯と衣類の収納だったそうです。そこで、洗面脱衣室に隣接する洋室をW.I.Cを兼ねたランドリースペースに。
洋服をたたんだりアイロンをかけたりする家事室を兼ねた便利な空間で、洗濯と収納の悩みを一気に解決しました。
廊下の突き当たりがランドリースペースで、左手の引き戸は洗濯機のある洗面脱衣室の入り口です。
洗面ボウルだけのシンプルなタイプにすることで、洗面脱衣室にはゆとりが生まれました。トイレもシンプルな雰囲気ですが、正面に飾った長男の作品がアクセントになっています。「やっぱりお気に入りはランドリースペース」と口を揃える夫妻。
格段に家事効率がよくなり、ストレスフリーの暮らしを楽しんでいるようでした。
設計/デザインライフ設計室
撮影/山田耕司
※情報は「リライフプラスvol.28」取材時のものです