横浜市内の社宅や海外での暮らしを経験後、長男も誕生して、自分たちの住まいを持つことにしたHさん夫妻。選んだエリアは下町の雰囲気が残り、交通の便もよい東京都江東区でした。購入したのは昭和60 年築のマンションですが、築年数の割にきれいで管理状態もよく、人気の物件です。Hさんはこの物件を1,000万円(税・設計料別)でリノベーションしました。設計は『リライフプラス』創刊号(2009年に発行)の巻頭特集に掲載されていた施工事例を見て決めたという設計事務所のAr.K+Reです。リノベでどうしても叶えたかったのが「パーケットフローリング」「アイランドキッチン」「広い浴室」の3つ。ところが、当初は予算オーバーだったといいます。
こだわりのアイランドキッチンは分離発注で製作!
すべての画像を見る(全16枚)リノベ前のキッチン専有面積78.28平米と狭いわけではありませんが、既存の間取りではリビングダイニング、キッチン、和室の3つに大きく分かれていました。
リノベ前のLD
Ar.K+Reの南部健太郎さんは、まずこれらをワンルーム化しました。
こうして、パーケットフローリングが映える広いリビングダイニングとアイランドキッチンを実現しました。パーケットフローリングに、夫こだわりのスタンダードトレードやパシフィックファニチャーサービスの家具がよく似合っていますね。
アイランドキッチンは側面に使ったメラミン化粧板の黒が、インテリアがウッディになりすぎるのを抑えています。一般的にアイランドキッチンには「高い」というイメージがある上に、Hさんはオリジナルで製作したそうです。
しかし、特別にお金をかけたわけではなく、機器類を別にすれば、かかったのは100万円ほどとか。「キッチン屋さんに丸ごと頼まず、家具屋さん、ステンレス屋さん、大工さんにバラバラに発注しました。手間はかかりますが、そのほうが安くできますから」と南部さん。
このような製作方法を「分離発注」というそうです。ただし、厨房機器には予算を惜しみませんでした。IHクッキングヒーター、食洗機、オーブンレンジはミーレで統一しました。
妻が「キッチンにはものすごくこだわりました」と話すのもうなずけます。
一方の夫が熱望したのは、脚を伸ばせる広いバスタブです。
ユニットバスではなく、在来工法で広い浴室を実現し、ホーロー製の大型バスタブを採用しました。タイルの床は洗面室とひと続きになっています。カウンター一体型の洗面ボウルはフィリップ・スタルクによるデザインです。
LDKとサニタリーは引き戸でつながり、キッチンからは浴室が見通せるようになっています。洗面室には洗濯機もあるので、家事がしやすい動線になりました。
サニタリーには、通風や除湿を図るための小窓がついています。この小窓と浴室乾燥機の相乗効果で、浴室、洗面室のモザイクタイルは「あまり掃除をしなくても大丈夫」と妻。
レッドシダーの枠に輸入型ガラスをはめた小窓は、廊下の壁のアクセントにもなっています。小窓の向かい側にあるのは子ども室です。
優先順位を考えた変更で約100万円ダウンに成功!
壁の仕上げは、漆喰か珪藻土にしたかったという夫妻。けれども、どこかで予算オーバーの分を削らなければいけませんでした。
他の3つに比べれば「壁を漆喰か珪藻土に」という選択肢は優先順位が低かったそう。そこで、壁は塗装に変更。すると約100万円ダウンし、ほぼ予算内に収まったのです。
壁は塗装にしたとはいえ、建具ひとつにも高級感が漂います。
玄関の大型収納は寝室まで連続していますが、扉は建具屋さんがつくったオリジナルで、ルーバー風にデザインされていて陰影があり、単調な印象は受けません。
トイレのドアと中の吊り戸棚には、キッチンの側面と同じ黒のメラミン化粧板を貼っています。廊下の突き当たりにあるLDKへの入り口には、型ガラスをはめ込んだ木のドアを採用しました。決して妥協せず、かといって無理もしなかったHさん。
Ar.K+Reの南部さんのアドバイスを受けながら、予算とやりたいことのバランスを上手にとって、自分たち好みの生活空間を手に入れました。
設計/Ar.K+Re
撮影/水谷綾子
※情報は「リライフプラスvol.27」取材時のものです