古いものや質感のあるものが好きだったことから、リノベーションを計画した渡邉さん夫妻。友人の建築家、野﨑亮一さんに設計を依頼し、DIYでコストを抑えながら880万円でリノベーションしました(設計料、消費税、施主支給品別)。完成したのは雑貨やレコードなど、夫妻の好きなものがいつも近くにある住まいです。
ライフスタイルに合わせて3フロアをゾーン分け
物件探しは野崎さんサポートのもと、当初からリノベーション前提で検討。そして出会ったのが、名古屋市内に立つ築21年、鉄骨造3階建ての物件でした。
すべての画像を見る(全18枚)立地や広さ、価格などが希望どおりで構造的にもしっかりとしていたこと、そして空間がシンプルでリノベーションがしやすそうだったことから購入を決意。購入時はリフォームが行われていなかった分、購入費を抑えられたのだそう。箱のようにシンプルな形が気に入ったこともあり、外観はほぼ既存のままいかしています。
各フロアはそれぞれ約10坪。1階と2階は間取りを大きく変更し、1階にショップのディスプレイなどを手掛ける妻のアトリエ、2階に広いLDKをレイアウトしました。
3階はコストバランスを考えて間取りをそのまま生かし、寝室や書斎を配置しましたが、「床をクルミの無垢材、壁を新たなクロスに貼り替えただけで雰囲気がずいぶん良くなりました」と夫。
夫妻とは10年来の付き合いである建築家の野﨑さん。好きなものを熟知してくれているという信頼があったのに加え、野﨑さんの提案で好みの空間を雑誌からスクラップしたり、好きなカフェや雑貨ショップの雰囲気を写真で伝えたりしてイメージを共有しました。
そして出てきたキーワードは、「素材感」や「経年変化による味わい」。
床に杉足場板、1・2階の壁に漆喰を使うことを決め、さらにアトリエの漆喰塗りや床、建具などの塗装はコストダウンも兼ねて夫妻がDIYで行うことに。
間仕切り壁を取り払ってかなえた、広いアトリエとLDK
細かく区切られていた1階は間仕切り壁を取り払って明るいアトリエに一新。妻のアイデアで鉄骨の間にガラス戸を設置し、緩やかに区切りました。将来、ドライフラワーなどのワークショップを開くことも考えているそう。
アトリエ手前には、引越し後にDIYで製作した下駄箱を置いています。
2階も廊下にあった壁を撤去し、広々としたLDKを実現しました。中央にアイランドキッチンを設けることで、ダイニング、キッチン、リビングを緩やかに区切っています。
杉足場板で造作したアイランドキッチンは、簡単な食事やPC作業に便利なカウンターや収納も一体に。
以前の2階の様子はこちら。
以前のキッチンはシンプルなI型で、現在と反対側の壁に設置されていました。
キッチンだけでなく、趣味のレコードや雑誌の収納棚や雑貨を飾る窓の木枠など、さまざまな造作家具を杉足場板で造作してイメージを統一。夫妻の希望だった「好きなモノに囲まれながらも、統一感のある空間」をかなえました。
イメージを統一し、好きなもので埋めつくした住まいに
くつろぎのリビングはキッチン奥の窓辺にレイアウト。「以前、旅先のホテルで座面が広く背もたれの低いソファを見かけてから、ずっと探していたんです。これは名古屋の家具ショップで見つけました」と夫妻。
朝食はカウンターでとる一方、夕食はキッチン手前に置いたダイニングテーブルでゆっくりと過ごしています。
2階の洗面台も造作し、実験用のボウルを採用しました。
窓の前面は木枠で統一。小物などを飾るスペースとしても活躍します。
ベイ杉の大きな玄関扉は、野﨑さんが設計したオーダーメイド。
エントランスには夫妻共通の趣味である自転車をディスプレイ。壁を取り払って鉄骨の構造のみにすることで、奥のアトリエまで伸びやかに見渡せます。アトリエの手前までコンクリートの土間とし、内と外をつなぐ空間に。
エントランス横には大容量のウォークインクロゼット。棚はDIYで設置し、下段にアウトドアの道具類を収納しています。
1階にもトイレを配置。「DIYで塗った漆喰のコテ跡が味わい深く、気に入っています」と妻。好きなものを生かしながらDIYで手を加えることで、いっそう思い入れが深い住まいとなりました。
設計/のざき設計
撮影/飯貝拓司
※情報は「住まいの設計2018年5-6月号」のものです