近くには緑豊かな公園もある、東京都中野区の閑静な住宅街に位置するM邸。Mさんが19年前に建て替えた実家を、夫の母と同居するためにさらに二世帯住宅として工事費2,300万円(外装工事費・設計料・消費税含まず)でリノベーションしました。二世帯住宅の難しい点のひとつが、同じ家族でも年代が違えば個性もニーズも違うため、ある程度の譲り合いが必要になることではないでしょうか。しかしM邸は、両世帯ともに満足度の高いリノベーションになりました。設計・施工は、雑誌で見た事例が希望する雰囲気に近かったというフィールドガレージに依頼。打ち合わせでは写真を見せてイメージを伝え、お任せにした部分も多かったそうです。

Mさん邸
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目次:

ゾーンを分けながらも、互いの様子が分かる程よい距離感こだわりの家具やアイテムに囲まれる空間を実現家族全員が安心して暮らせるようにハード面を整える

ゾーンを分けながらも、互いの様子が分かる程よい距離感

リノベーションにあたって、まず考えたのは世帯のゾーン分けです。
80歳を超える母のための居住スペースは、できるだけ負担が少なくなるよう1階東側にまとめることにしました。一方のMさん世帯は、夫婦と高校生の長男の3人家族。リビングと2つの個室があった2階を再構築することで住み分けをはかりました。

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玄関も世帯別に設けています。以前テラスだったスペースを利用した右側が母用の玄関で、手すりを設置。左側がMさん世帯用の玄関になります。

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玄関は別々ですが、両世帯は玄関ホールに設けた引き戸で簡単に行き来できる形になっています。

こだわりの家具やアイテムに囲まれる空間を実現

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バルコニーからの光が気持ちいい吹き抜け周辺は、既存のまま生かしました。

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2階のMさん世帯は、独立したリビングとゆったりとしたダイニングキッチンを実現するため、2階にあった夫妻の寝室をロフトへ移動しました。

既存床のカリンや梁を出した吹き抜けは生かしつつ、キッチンの天井などには新たに節の少ないオークを選んで使用し、「ミッドセンチュリー調の家具や北欧テイストが好き」という夫こだわりの家具がピタリとはまる空間に仕上げました。

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アイランドキッチンは海外のインテリア写真でイメージを伝え、壁面収納も含めオリジナルで造作したものです。

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キッチンの側面には、手持ちの棚を組み込んでいます。コンランショップで購入した大型のダイニングテーブルは、Mさんのお気に入りです。寝室をロフトに移動させたことで生まれたゆとりある空間に、見事にフィットしています。

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リビングは天井を黒く塗装し、アートやMさんが大切に使ってきたソファが引き立つ空間になっています。写真奥のブルーの壁に見える場所は、実は季節外の服の専用クロゼットです。

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ロフトへの階段はスケルトンとし、デザイン性と採光を重視しました。

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ロフトは季節によっては暑くて居住には向かず、以前は納戸にしていたそうです。寝室にするために窓やエアコンを設けるなどして居住性をアップしました。

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ロフトならではの天井の低さ、こもり感が、寝室らしいくつろぎを演出しています。

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トイレットペーパーのストック用に遊び心のある雲型ホルダーを選ぶなど、Mさんのセンスのよさは至るところに生かされています。以前は3か所に分けて収納していたという洋服は、2階西側にあった子ども室を丸ごとウォークインクロゼットとすることで解決しました。内部には可動式の棚を設え、部屋干し用のレールも設置するなど、使い勝手と収納量アップを実現しました。

家族全員が安心して暮らせるようにハード面を整える

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1階は既存のキッチンなどを生かしながら、母の生活に必要なものを効率よく配置し、将来の車椅子動線にも配慮しています。

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内部はすべてバリアフリーにし、手すりを設置。出入り口には、開閉時の負担が少ない引き戸を採用しています。1階西側には、以前は2階にあった子ども室もあります。

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長男が1階にいることで、気軽に母の様子をうかがうことができ、両世帯の安心にもつながっていると言います。本をたくさん持っている長男のために、子ども室には本棚を造り付けています。

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1階にはほかにも、Mさん世帯用の洗面・浴室もあります。洗面カウンターはオリジナルで造作したものです。家族が一斉に使う朝の渋滞解消のため、シンクは大型のものを採用しました。
「リノベーションでやりたかったことが、全部できました」と話すMさんの表情からは、満足感があふれ出ていました。

設計・施工/フィールドガレージ
撮影/遠藤 宏
※情報は「住まいの設計2017年7-8月号」取材時のものです