リノベーションしたいけど予算がない、新生活のためになるべく予算を抑えたい。でも、実際にリノベをしてみると、「あれもしたい、これもしたい」と工費が膨らんで……。リノベーションと予算の関係はいつも悩ましいものです。2015年のリノベーション・オブ・ザ・イヤーで「カジュアルリノベーション賞」を受賞したMさんのお宅(30代・女性)は、あらかじめ予算の上限を決め、既存を上手く活用しながら280万円で理想の空間を手に入れました。低予算で思い通りのリノベーションを実現するための、ポイントが満載です。
すべての画像を見る(全10枚)中古マンション購入の段階から計画的に。総予算を組んでから物件探し
ある日、Mさんは父親から「資金を援助するから家を買わないか」と打診され、マンション購入の検討を始めました。予算は「住宅ローンの支払いが現在の家賃と同じかそれ以下」になるように、設定エリアと条件を絞って中古マンションを探し、見つけたのは、川崎市内の50㎡のリフォーム済み物件でした。
50平米以上の物件としたのは、住宅ローン控除を受けるため(※専有面積が50平米以下のマンションでは住宅ローン控除が受けられません)。
年末のローン残高に応じて、10年間一定額が所得税から控除されるという住宅ローン控除。専有面積のちょっとした違いで控除を受けられなくなるのはもったいないので、選ぶ際に気をつけてください。
予算の上限は300万円。やりたいことを明確にして優先順位を
駅からやや遠いぶん、物件価格が低く抑えられたので、余った予算でリノベーションを施すことにしたMさん。予算を「300万円」に設定しました。
Mさんはもともと家具や小物、食器など質のいいものを少しずつ集めるのが大好き。「せっかくなら集めたインテリアが似合う空間にしたい!」と、無垢材の床や珪藻土の壁は最優先に。またキッチンにカウンターを設けたい、などと、やりたいことをギュッと絞ったのです。
その姿勢に賛同したのが設計を担当した空間社のデザイナー、宮本泰則さん。
「要望が明確だったので、予算の中でできることと削る部分を分けるだけでした」と話します。
リノベーション前
丁寧に選んだ家具が映える空間にするために、素材感を整えることを優先し、建具とキッチン扉の変更を提案。例えば木の扉に替えたキッチンは、木目が主張しすぎないシナの板を2人でじっくり選びました。
コストをかけるところはしっかりと。こだわりの「キッチンカウンター」
中でも最もこだわったのは「キッチンカウンター」です。入れたいものすべての寸法を測って棚の幅や高さを決めたので、炊飯器や電子レンジもピッタリ。一部をガラス扉付きの棚にして食器のコレクションを収納しています。
その一方でコストのために諦めたのは、現在納戸に使用している洋室の内装と、寝室の床をフローリングではなくカーペットにしたことですが、今はそれも気に入っています。寝室のクローゼットは既存を生かし、扉と枠を交換してスッキリとした印象に。
壁の一面を、クロスの上からネイビーに塗装した寝室。マティスの絵がよく映えます。
結果、リノベーションにかかった費用は全部で280万円。予定していた金額より少なく済みました。「先々のこともよく考えて予算を組んだ」というしっかり者のMさん。
毎月の支払いは賃貸のときと比べて2万円ダウンし、その分をきちんと貯蓄に回しているそうです。
賃貸料から総予算を決めて物件探しを始めたこと、リノベーションの予算にも上限を設けたこと、やりたいことを明確にして絞り込んだことなど、リノベ予算を抑えたい人にとって参考になるるポイントが盛りだくさんです。
設計・施工 空間社
撮影 飯貝拓司
※情報は「リライフプラスvol.23」取材時のものです