のどかな田園風景が広がる岐阜県の郊外、細長い敷地に念願のマイホームを建てたOさんファミリー。木々の葉が風に揺らぎ、子どもが芝生の上を走り抜ける...。とびきりオープンで、森のような庭を通って入ってくる家を実現しました。
季節の変化を肌で感じるトンネルのようなアプローチ
すべての画像を見る(全12枚)のどかな田園風景が広がる岐阜県の郊外に、親子3人で暮らすOさんファミリー。4年前、住まいづくりを始めるときに描いたイメージの一つが、「森のような庭を通って入ってくる家」でした。設計を依頼したのは、外部要素を取り込んだプランに定評のある建築家、玉木直人さん。
庭もプロフェッショナルに任せたいと、造園家である園三の田畑了さんに依頼を決めます。
敷地は前面道路に対して間口が狭く、細長い形状です。玉木さんは建物をできるだけ敷地奥に配置し、上の写真のように手前を広い庭とカーポートとするプランを提案。道路からグラウンドレベルを徐々に上げて住まいへと導く、ドラマチックな設計です。
細長い敷地を存分に生かした広い庭ながら、「植栽は、数よりもポイントを絞りました」と田畑さん。株立ちのシマトネリコやヤマボウシ、ナンキンハゼなどをバランスよく配置し、互いを引き立てています。
玄関に続く長いアプローチには、年月とともに丸みを帯びて味わいを増す大谷石を敷き、傍らには枝が緩やかな曲線を描くアオダモとナンキンハゼを植栽。
「この高木がさりげないアーチのようで気に入っています。これからの成長も楽しみ」(夫)。
朝夕、家族を優しく見送り迎えてくれる庭は、季節の移ろいを肌で感じさせてくれます。
広いLDKを中心に、暮らしやすい回遊動線を描く間取り
玄関を入ると迎えてくれるのは、吹き抜けの開放的なLDK。屋根勾配に沿って天井ギリギリまで生かしたダイナミックな開口の向こうには明るい庭が広がり、屋外と一体の感覚です。庭で遊ぶ子どもが室内から見えるのも安心。
「開口部はなるべく広く取って、空と木の眺めを住まいに採り入れるよう工夫しています。花や紅葉はもちろん、実のなる時季や、冬の風景も楽しんでほしいですね」(玉木さん)。
「一番長くいる場所を、眺めの特等席に」と、あえてダイニングを窓際に配置しているのもOさんファミリーのこだわり。
庭の芝生の向こうには水田が広がり、秋は一面が黄金色に染まる風景にほれぼれするのだそう。大開口は道路から十分に引き込んだ位置にあるため、意外に外から見えにくいのもポイントです。
「外も田畑で作業する方がいるくらいなので、視線はあまり気になりません」(妻)
もうひとつ、夫妻が重視したのが家事動線でした。「こだわったのは主寝室と水回り、DKが同じ1階という点。朝起きてから効率よく動けますから」(妻)。
敷地の奥行きを生かした間取りは、主寝室からキッチン、物干し場までひとつながり。水回りから廊下を介してキッチンにつながるので、料理の合間に洗濯機を回すなど家事がはかどるうえ、大空間もスッキリ見通せます。
キッチンは空間全体を見渡せる対面式で、目の前に家族が集うダイニングテーブルをレイアウト。キャビネットや壁面には妻の要望である「お気に入りのものを飾る収納」を設けて、自分らしく彩っています。
一方でコンパクトな2階は、二つの個室をWICがつなぐシンプルな構成に。吹き抜け上に張り出したワークスペースは、窓の外の豊かな自然を見下ろす隠れた特等席です。
庭と一体となり、自然の表情を取り込んだ住まい。手入れも暮らしの一部として楽しんでいることが伝わってきました。
設計/玉木直人(GA設計事務所)
造園/田畑 了(園三)
撮影/日紫喜政彦
※情報は「住まいの設計2017年1-2月号」取材時のものです