様々なジャンルで活躍する方をゲストに迎えて、“すまい”にまつわるお話を伺うこのシリーズ。
それぞれのライフスタイルの中で、「家に求めるもの」や「大切にしているもの」を深掘りしていきます。
第5回目は、今年結成20周年を迎えたクレイジーケンバンドの横山剣さんが登場。
■いわゆる外国人向け住宅をリノベーション。その住み心地は?
実はケンさん、2013年に買った戸建てを、タツミプランニングに依頼して大々的にリノベーションしたばかり。
購入したのは築20年の中古で、横浜・本牧エリアに多い、いわゆる外国人向け住宅。
「ずっと前から狙っていた賃貸物件が売りに出されたという情報が入って。
ただ買ったはいいけど、生活動線の面で使いにくかったり老朽化している部分もあったから、なんとかならないかなって……」
大改装が始まった。
元ダイニングスペースを2分割して設置したバスルーム。コンパクトな洗面台はアメリカ・コーラー社製。一方、その横に置いた収納棚はIKEA。「そのへん、フレキシブルにね!」
まず、1階の広いダイニングを半分に区切って、片方はそのままダイニングとして残し、もう片方をバスルームに変えた。
また、キッチンのすぐ横にランドリーがあるのは自分たちには動線的にどうもよろしくない、ということで、ランドリースペースごと新設のバスルームの隣に移動。
2階にはいかにも外国人向け住宅らしく、バスルームが2つあったため、その1つをつぶして納戸に…等々、間取りを大変更。
インテリア好きというケンさん。シンガポールや香港、ハワイなど海外の友人宅を訪れたときに気になった間取りや色みなども参考にした。
ただし記憶が曖昧だから、見たとおりにはならない。「結果的に違ったものができ上がっても、それはそれでオッケー!」
■自称「引っ越し貧乏の典型」!? 完璧よりも少し崩しているくらいがちょうどいい
横浜生まれの横浜育ち。幼少の頃から引っ越しが多く、あちこち転々としてきた、本人いわく「引っ越し貧乏の典型」。
中でも思い出に残っているのは、20代後半に住んでいた磯子区の古いマンションだ。
「ボロボロなんだけど、それだけに雰囲気があって。大家さんがうるさくなかったから壁も好きな色に塗って。
窓の外には道路、その向こうには運河が流れていて…。僕の頭の中では勝手に“脳内エフェクト”がかかって、
ハワイのアラ・ワイ運河のイメージだったんだけど、友達にそれを言ったら“ただの国道16号じゃねえか!”って大笑い」
マスターベッドルームのバスルームの床を、カーペットからタイルに変更。ついでに壁の色をツートーンにしてもらった。「ちょっとグレーがかった水色が好きで。この色の壁紙をずいぶん探してもらったよ」
というわけで、他人にどう思われるかより自己満足が大事…と思ってきたけれど、今やケンさんも3児の父。
「子どもたちには僕の理想なんて関係ないからね……。家にしたって“そこにそんなの置いちゃダメ〜”なんて思うこともしばしば」
でも、そのうち優先順位ができてきて、「ま、いっか」と許せるようになってきた。
「あんまりキメキメな家も疲れちゃうしね。完璧よりも少し崩しているくらいがちょうどいい。
それがむしろ完璧というか、ね。カンフォタボー……つまり“快適”なのがいちばん!」
■自宅に音楽関係の設備がまったくない理由とは?
掃き出し窓をつくるつもりが、工事の途中でサンルームが欲しくなって方向転換。「工事の人には申し訳なかったけど、結果、雨の日の洗濯干しや読書に大活躍で、非常に重宝しているんですよ」
少し驚いたのが、音楽関係の設備は家にはまったくないということ。
「曲が浮かぶのはだいたい車の中。家では一曲もつくらないし、家にいるときは音楽すら聴かない、だからステレオもないんです」
以前、中華街にあった事務所には機材一式を揃えたのに、まったく曲がつくれなかった。
「そういうことじゃないんだなって。僕の場合、においとか街並みとか、音楽以外のものを見たり感じたりしたことが音楽に変換されるから、
音楽的な環境がないほうが曲づくりには都合いいんです」
玄関両脇のくぼんだスペースに、ルーバーの扉を付けて収納棚にした。ちょっとマニアックなくらいルーバーが大好き。家のあちこちがルーバーだらけで「まるでロンハーマンの六本木店みたいになってる」のだそう
大改装を終え、新しい間取りにもだいぶ慣れてきたこの頃。
「でも、改装って一度始めたら病みつきになっちゃうよね。引っ越し貧乏は終わったけど、リフォーム貧乏が始まるかも」
という不穏な(?)発言とともに、アイデアがドンドン湧き出る。
「次は床を全部替えようかな。あと、駐車場をビルトインにするのも夢。
壁をガラス張りにして、部屋から大好きな車を眺めて過ごせたらサイコー! ……でも、家族は嫌がるだろうなぁ、ハハ」
1960年、神奈川生まれ。’81年にクールスRC のヴォーカル兼コンポーザーとしてデビュー。
’97年春、クレイジーケンバンド(CKB)を発足。作曲家として数多くのアーティストに楽曲提供もしている。
CKBが結成20周年を迎える今年、CKB が主演の映画『イイネ!イイネ!イイネ!』が6月に公開されたほか、
8月2日にアルバム『ALL TIME BEST ALBUM 愛の世界』をリリース。現在全国ツアーの真っ最中。
林 紘輝(扶桑社)=撮影 zabari=取材・文