ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている
@inubot。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第17回は、犬の冬支度と、犬との関係性について。
日毎にふかふかと増す犬のモフ度は、冬の風物詩
すべての画像を見る(全17枚)落ちた枯れ葉を踏み込むときに小気味いい音を鳴らしながら、犬が前へ前へと歩いていく。
足音と共だってカサカサと割れていく葉音の耳触りは気持ちがいい。犬にとっても一興なのだろうか、わざわざ沿道からはずれて端っこによけられた落ち葉の上をのし、のしり、と歩きたがる。枯葉の上で行ったり来たりもしていて、感触なり発生音なりなにかが琴線に引っかかるのだろうか。
そう思うのは私も枯葉の上を歩くのが好きだから。
冬支度がはじまった毛並みは、日毎ふかふかとモフ度を増していって、衣替えを続ければボリュームのきいた首回りの毛によって首輪が覆われてしまうのもそう遠くないな。その姿を見たら冬の到来を感じる、風物詩である。
もうすでに今も赤茶の毛並みが真っ白の首輪を覆い隠しつつあるのだが、時折すきまから白色が覗いたりする。犬が育む色彩はなんて目映いのかとくらむ。
夏と冬とで季節が移れば、毛並みの色味や毛質、あとは体つきにも変化が生じる。うちに来れば常に犬を気にかけている親戚のおじさんが、季節の狭間にはきまって「おぉ? なんかやせたか?」「なんか毛ぇ色うすないか」「濃ぉなったな~!」なんて犬と対話している。
食べる量自体はそこまで増減していないと思うが、夏に比べて頬や肩のあたりがふくよかになっているように見える。冬を乗り越えるための貯蓄だとしたら、母や私にも通じるなぁ…と思ったが、我々はよく食べるようになるなぁ。
ふくふくとした犬の頬は斜め後ろから見たらまるで雪見だいふくみたいで、いつまでも眺めていたくなる。冬に会える頬のフォルムも、一年中変わらない、たとえば、なで下ろしてもすぐさまクルン! と輪をつくるしっぽや、素直なまま気持ちを表現する三角の耳も、行動もだが外見的にもおかしな魅力がたっぷりだから観察がやめられない。
先日とある機会に「今は柴犬と暮らしていますが、もしこれから迎えるとしたらどんな犬種あるいは動物がいいですか」と尋ねられたことがあった。どんな願いでも叶えられるという前提であったため、ペンギン、チンアナゴ、白熊、ホワイトタイガー、三毛猫が脳裏をにぎやかに駆け回った。だが数多の動物がお祭騒ぎのように交差している最奥には犬だ、犬が鎮座していた。
ちなみに、愛犬の名前を公表せずに犬と記しているのでややこしいが、「鎮座していた犬」とはイヌ科イヌ属に分類される哺乳類の一種(wikipediaより)の総称ではなく、現在ともに生活を営んでいる愛犬、本記事inubot回覧板の犬氏を指しています。
想像のなかでも仮定すらできない、困った。鮮明なイメージと結論があっても口ぶりはたどたどしく鈍行のようで、「つまらない回答になりますが、すべての動物が尊く、好きなのですが、家族になりたいのは犬だけなのです。先のことはわかりませんが、現時点でまた巡り会えるなら犬がいいと考え抜いています」そう返答したつもりだが、きちんと伝達できただろうか。
メディアによってさまざまではあるが、人間を主体として考えられていることが多いため、どうしても「動物を迎え入れた」という表現を見かけることが多い。そりゃあ犬の方から門戸を叩いてやってきては居着きはじめるなんてそうそうにあることではないし、形式上として「迎え入れる」と表記しているだけだとも思うのだが、それでも毎度引っかかってしまう。
形式の上でも、精神面でも、迎えて迎えられて、生かして生かされて、お互いさまの関係性だと信じている。
2019年もお世話になりました。来年もどうぞよしなに。
この連載が本
『inubot回覧板』(扶桑社刊)になりました。第1回~12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。