人生100年時代、現役で元気に働く方も多いです。108歳の現在も理容師として働くのは箱石シツイさん。なんと理容師歴94年、世界最高齢の現役理容師に認定されたました。12歳で奉公に出て14歳で上京し理容師の修業、長女は0歳で重度の脳性麻痺に、空襲で自宅焼失、夫は終戦4日後に戦死と、壮絶な人生を乗り越えてきた生き方のモットーは「いつも機嫌よく、考えすぎない、悩まない」。箱石さんの元気に生きるヒントを紹介します。

美容師の箱石シツイさん
美容師の箱石シツイさん(撮影:栗栖誠紀)
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長生きしたいと思ったことがないのに108歳

「もういくつ寝るとお正月」って歌がありますよね。尋常小学校で習いまして、友だちや姉たちとよく歌ったものでした。わたしの子どもたちと歌ったこともありましたかね。でもね、わたし、そんなふうに日を数えたことがないような気がしますねぇ。

一日一日が精一杯でしたから、先のことまで考えて楽しみにする余裕がなかったのかもしれません。だから、自分の年齢もあまり気にしたことがないんですよね。

子どもの頃は学校に上がる前から親の手伝いをして働いていましたし、奉公に出て、それから理容師の見習いになって理容師になって。結婚して、戦時下をなんとか生き延びて、でも夫を戦争で失い、あとは子どもたちを育てるために一生懸命、ただただ働いてきました。60歳くらいまでは毎日、ただ働いて働いて、その暮らしのこと、目の前のことをやるだけの暮らしでした。それなので、大変だとかつらいとか、そんなふうに感じるよりも「生活とは、そういうものだ」と思っていました。

考えすぎない、余計なことで悩まない

リビングでくつろぐ箱石さん
撮影:栗栖誠紀

夜になるとね、「今も無事に終わりました、ありがとうございます」と、仏壇の夫に手を合わせてから眠ります。そして目が覚めて、朝になってたら新しい一日が始まっているから、またその日にやることを、きちんとやる。その繰り返しでした。そうして気がついたら108歳に、というのが実感です。

こんな話をしますとね、みなさん笑うんですよ。「108年も生きて、そんなはずないでしょう?」って思われるんでしょうか。でも本当にそうなんです。年齢を意識せず、余計なことを考えすぎなかったからこそ、ここまで生きてこられたのかもしれません。困難も多かったので無我夢中、結果的にそのように生きてきてしまった、という感じなんですけれど。だから「考えすぎない、余計なことで悩まない」って、とても大事だと思うんですよ。

箱石シツイさんの新刊『108歳の現役理容師おばあちゃん ごきげん暮らしの知恵袋』(宝島社刊)は発売中。

108歳の現役理容師おばあちゃん ごきげん暮らしの知恵袋

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